何度でも訪れたい素朴な村! フランスのブレル村

暮らし

2022/02/17 19:30

【フランスの小さな村への招待状・3】 フランス中央部、険しい山々が連なるオーベルニュ地方に佇むブレル村。緑豊かな谷の盆地に位置し、紀元前1世紀にはすでに集落が形成されていたと言われています。筆者は2回訪れましたが、二度目には前回の訪問を覚えていてくださった方たちと出会い、とても心温まる思い出の滞在となりました。カフェには地元住民が集い、店主と一緒にビリヤードに興じているといった田舎ならではのおおらかさがあります。村全体がフレンドリーな雰囲気に包まれていて、何度でも行きたくなる、そんな素敵な村ですよ!
 

フランス中央部のオーベルニュ地方にあるブレル村
 

【オーヴェルニュ・ロマネスク建築】

 オーヴェルニュ侯爵夫人が設立したベネディクト会修道院が、この村の教会に寄付を行ったのが9世紀後半のこと。12世紀に建設されたサン・ピエール大修道院付属教会は、現在でも住民の誇りとなっています。中世には修道女達が生活し、毎日祈りがささげられていました。

 教会内に足を踏み入れると目を奪われるのが、横幅11mにも及ぶ青い円天井が見下ろす内陣です。こうした広々とした設計の空間はこの地域に特徴的なもので、この教会はオーベルニュ・ロマネスク様式の代表的な建築物として知られています。支柱の上部を彩る彫刻の数々は、オーヴェルニュ地方の伝統的なモチーフが用いられているのだそう。まるで美術品を眺めているようで、見とれているうちにあっという間に時間が過ぎ去ってしまいますよ。
 
サン・ピエール教会内:鮮やかなブルーに彩られた天井に魅了されます

【フランス名門貴族の城】

 教会から道路を挟んで正面の場所に建っているのが、ブレル城です。フランスの名門貴族オーヴェルニュ家の末裔、メルクール男爵によって建てられました。四角形の重厚な城は、中世の城なだけあって防衛面に優れています。また市街地の外周部には塔が点在しており、かつては見張り台として用いられていました。
 
ブレル城の主塔:外から眺めただけでも、マシクーリと呼ばれる石や矢を落とすための防衛設備を備えているのが良くわかります

 教会と貴族という二つの強大な力によって発展してきたこの村は、多くの商人・職人が集まる都市として中世には賑わいをみせたそうです。人口600人程の小さな村ですが、現在でも多くの店が軒を連ねているのは、そうした歴史を受け継いでいるからなのかもしれませんね。
 
ブレル村の街並み:2010年にNPO組織と住民ボランティアの協力によって、民家の扉や雨戸の塗替えが行われました。天然顔料を用いているのが特徴で、自然な風合いが魅力となっています

 この村を訪れるには、オーヴェルニュ地方の中心都市クレルモン・フェランからレンタカーを利用するのがお勧めです(車で約1時間10分)。高速道路の出口からすぐなので、美しい村の中では比較的交通の便が良い場所に位置しています。お洒落なシャンブル・ドット(民宿)なども多いので、宿泊してゆったりと過ごすのもおすすめですよ。

 今回はオーヴェルニュ地方の魅力が詰まったブレル村の魅力をお伝えしましたが、いかがでしたか? 素朴で飾らないフランスの小さな村の魅力を引き続きご紹介させて頂きます。次回もお楽しみに。(文/写真・高津竜之介)


■Profile
高津竜之介
レンヌ第二大学非常勤講師(日本語)、NPO法人「日本で最も美しい村」連合 在フランス研究員、レンヌ第二大学博士課程/研究テーマ:社会的イノベーションと最も美しい村