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東大広報誌、創刊以来初の在庫切れの「猫と東大。」 ~猫を愛し、猫に学ぶ~

暮らし

2022/02/01 19:35

【猫が好き。】今、時代はまぎれもなく猫ブーム。巷には猫に関する本や映画、猫グッズがあふれ、ネットニュースや新聞で「猫」の文字を見ない日は無いほどだ。しかし、初めてこの本の広告を目にした時は、「猫」と「東大」のミスマッチ感に妙に心惹かれるものがあり、その日のうちに本を手にしていたのだから、猫好きの知識欲を刺激するには十分なタイトルだったことは間違いない。

冷蔵庫の上で何やら自己主張する猫。猫は全力で語りかけてくる。その声で、目で、行動

お堅いイメージの東大の広報誌が何故わざわざ猫をテーマに?

 猫をテーマにすることについては、本の冒頭で「このゆる~いテーマに不安が募った」との広報室長のコメントが紹介されている。そのきっかけは意外にも「猫ブームだから」という安易なものだったとか。幾つもある候補から猫がテーマに選ばれたのは、ただ単にブームだったからではなく、着目したのは「何故ブームになったのか」だった。もちろん、新任の広報室長が猫好きであることも大いに影響したと思われる。

東大広報誌史上初の書籍化

 東京大学について学内外に紹介する広報誌「淡青」。その特集号として人気を博し、前号より大幅に発行部数を増やし4万8000千部が用意されたにもかかわらず、1999年の創刊以来、初の在庫切れとなった「猫と東大。」その人気は学外にも広く知られるところとなり、増刷の要望が殺到し、創刊以来初の書籍化の運びとなった。

読み応え満点の猫づくし本

 冒頭で繰り広げられる猫好きな東大の先生たちによる座談会に始まり、完成してみたらどう見てもカエル型だったというネコ型ロボットの開発秘話、1996年に東大新聞に掲載された猫散策マップの紹介なども興味をそそられるが、文学や歴史、社会学、美術史、経済史、考古学、様々な視点から紐解かれる猫の魅力は読み応えがある。中でも、「夏目漱石の『吾輩は猫である』の『吾輩』に名前が無い理由は何故か?」「江戸時代には繋ぎ飼いされていた猫が放し飼いに移行した背景は?」「昨今の猫ブームの理由は?」など、独自の切り口で紹介されている猫に関するよもやま話も興味深いものがあり、一読の価値ある一冊となっている。

猫好き目線で外せない注目ポイント

 2021年、猫に関するあるニュースが話題になったことをご存じの方も多いのではないだろうか。猫は生まれた瞬間から腎臓の機能の悪化が始まるとも言われており、死亡原因でガンと並んで多いのが腎臓病。その腎臓病治療薬の開発が東京大学大学院医学系研究科の宮﨑徹教授によって進められており、猫に対する治験を行うめども立っていたが、新型コロナウイルス流行の影響で研究資金が不足し、計画が頓挫。猫の宿命とも言われ、多くの飼い主が長年切望して止まない腎臓病の治療薬。その開発中断を伝えるニュースがネット上に配信されるや否や個人からの寄付が殺到。東京大学基金に寄せられた寄付金は、わずか2週間余りで総額1億4600万円。これぞ日本全国の猫好きたちの猫愛の結集であろう。

 また、東大の動物病院には、内科や外科のほかにも行動診療科という科が開設されていて、問題行動を起こすペットに対してコンサルテーションを重視した診療を行っていることについても紹介されている。

 専門的で少々難解な内容も一部含まれてはいるが、東大教授たちの愛猫やキャンパス内で暮らす猫たちの写真も盛りだくさんで、読んで面白い、目にも楽しい、猫好きにはたまらない一冊となっている。
 
『猫と東大。』東京大学広報室(編集) ミネルヴァ書房

【ネコエッセイ】

 猫とコタツ。冬の風物詩としては不動の組み合わせとも思えるこの両者。我が家でも代々の先住猫たちがコタツの中に潜り込んで暖をとるのが常で、暖をとり過ぎてのぼせてしまった猫もいた。が、現在一緒に暮らしている猫はと言うと、コタツ板の上で床暖房風に寛ぐことはあれども、何故か中に入るのは怖いようで、決して中に足を踏み入れようとはしない。

 それでも、怖いもの見たさで、たまに布団の隙間からへっぴり腰で恐る恐る中を覗き込んでいることはある。「そんなに気になるなら入ってみたら?」と促してみると、目をひん剥いて飛んで逃げていってしまう。猫は狭いところが好きな生き物だから閉所恐怖症ってわけでもあるまいし、こんなポカポカ暖かくて狭い空間なんて打ってつけだと思うんだけど、怖がるとは一体どういうことなのか? もしや、我々が足を動かす反動でコタツ布団が時々ウネウネ動くのを見て、中に何か得体の知れない生き物が居ると勘違いしているのだろうか? だとしたら、中には赤鬼みたいな炬燵妖怪が棲んでいると思っていて「入ったら食べられちゃうニャ」と怯えているのかも知れニャイ。(ライター・tarojiroko)

■執筆者プロフィール
広島修道大学英文科卒業。商社勤務を経て現在、大手ネットショッピングのペット用品部門で買い物の利便性向上を支えるデータメンテナンスを担当。子ども時代の夢は動物園の飼育係。