19.1%が「昨年より収入が減った」、旅行に関するJTBの意識調査
JTBは、「年末年始(20年12月23日-21年1月3日)に1泊以上の旅行に出かける人」の意識調査をまとめ、12月8日に発表した。
JTBでは、例年、年末年始の国内/海外旅行者数や消費額を各種データや定点の意識調査をもとに推計し、「年末年始の旅行動向」として発表してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の世界的な拡大により海外渡航は依然制限され、日本国内でも11月に入り新規感染者数が増加している。現在実施中の観光需要喚起策の見直しが一部地域で講じられるなか、旅行を取り巻く環境は流動的であることから、今年は旅行者数などの推計は行わず、定点で実施している意識調査や各種データから見えてくる年末年始の旅行トレンドについてまとめた。
JTBが実施したアンケートで、回答者自身の生活と年末年始について当てはまる状況を聞いたところ、収入については「昨年より収入が減った(19.1%)」「昨年よりボーナスが減りそうだ(20.1%)」が、「増えた」(3.3%)「増えそうだ」(1.3%)と回答した人より大幅に多い結果となった。また、「将来が不安なので、貯蓄や資産運用を増やしている(11.7%)」が「将来に不安はないので貯蓄や資産運用は増やしていない(4.5%)」を上回る結果となっている。「先行きがわからないので大きな支出は控えておきたい」が26.6%である一方で、「先行きがわからないので、今のうちに大きな支出を考えたい」は1.8%と、大型出費にも消極的な傾向にある。
「今後1年間の旅行支出に対する意向」を聞いたところ「支出を増やしたい(8.4%)」は昨年から5.2ポイント減少し、逆に「支出を減らしたい(44.4%)」は11.0ポイント増加した。「同程度(合計47.2%)」も5.8ポイントの減少となっており、旅行支出を減らそうと考えている人が増えていることがわかる。
今年の年末年始の休暇は、カレンダーどおりの日並びでは、12月28日を仕事納めとすると、1月3日まで6連休になる。12月28日を休みにすると、12月26日から1月3日まで最大9連休とすることが可能。政府は帰省や旅行、初詣などで人出が集中するのを防ぐため、年末年始の休暇の分散や延長を促している。
JTBが実施したアンケートで、年末年始期間中(20年12月23日-21年1月3日)の帰省を含めた旅行意向を聞いたところ、「行く(7.9%)」「たぶん行く(6.9%)」と回答した人の合計は14.8%と、昨年より5.2ポイント減少した。「たぶん行かない(18.4%)」と「行かない(66.7%)」の合計は85.1%で、5.0ポイント増加している。性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高く、「行く」と「たぶん行く」の合計が男性20代は25.7%となった。一方、男性60才以上は8.7%、女性60才以上は7.1%となり、年代による差がみられる結果となった。
旅行の目的や動機については、「毎年恒例なので(43.5%)」「家族一緒に過ごすため(37.6%)」に加えて、「温泉やリゾートでゆっくり過ごしたいので(23.0%)」が昨年より2.3ポイント増加、「家に居てもつまらないので(8.7%)」が3.9ポイント増加するなど、新型コロナによる自宅での自粛疲れの影響も垣間見られた。
事前調査で「今年の年末年始に国内旅行に行く/たぶん行く」と回答した1697人を抽出。旅行の内容について詳細を聞くと、全体的に、旅行を予定している人は新型コロナに無頓着だから旅行をするのではなく、感染防止を何よりも優先して旅行をするという姿が見えてきたという。
旅行の出発日は、「12月30日(水)(15.1%)」「12月31日(木)(13.3%)」「12月29日(火)(11.8%)」の順だったが、「12月26日(土)(11.2%)」が続き、28日(月)を休んで長い連続休暇とする人も多いようだ。
旅行日数は、「1泊2日」が30.8%と最も多くなった。「2泊3日(25.2%)」が次に続いたが、2.5ポイント昨年から減少し、短くなる傾向が見られた。
旅行先は、「関東(21.6%)」が最多だったが、昨年から3ポイント減少した。都市部が敬遠されたとも考えられる。これに「近畿(16.3%)」が続いた。
同行者は、「家族づれ(61.6%)」が最多だったが、昨年と比較して3.6ポイント減少。内訳は「子供連れ」は増加したものの、「夫婦のみ」「それ以外(母娘、三世代)」が減少した。「ひとり(20.7%)」が昨年から3.7ポイント増加した。
一人当たりの旅行費用は、「1万円-2万円未満(23.3%)」が最も多かったものの、「1万円未満(21.5%)」が昨年より4.8ポイント増加し、昨年から順位を上げ2番目となった。「4万円-5万円未満(11.2%)」が3.4ポイント減少、「5万円-7万円未満(4.8%)」が2.4ポイント減少した。
利用交通機関は、「乗用車(56.3%)」が最も多く、昨年から3.6ポイント増加。「JR新幹線(20.7%)」は5.2ポイント減少し、「高速/長距離バス(6.4%)」も2.1ポイント減少となった。公共交通よりも「乗用車」を利用する傾向がみられる。
利用宿泊施設は、「旅館・ホテル・民宿・ペンション(56.5%)」が昨年から2.5ポイント増加した一方で、「夫や妻の実家(24.0%)」が3.9ポイント減少している。新型コロナの影響もあり、高齢者や近所への配慮から実家を避ける人もいるようだ。
アンケートでは、例年にはない今年の特徴として「コロナ禍の旅行で特別に考慮すること」を聞いた。「家族・親族や親しい友人以外には会わない(34.2%)」が最も多く、続いて「公共交通機関を使わずに、自家用車やレンタカーを使う(30.6%)」「少人数の旅行にとどめる(24.1%)」「人が多数移動する時間を避ける(20.7%)」「感染者数が増加傾向の地域は避ける(18.7%)」となり、前述の結果からもわかるように、「同行者」「移動手段」「行先」の選択に新型コロナへの対策が影響している。居住地方別に今回の旅行先の地域を聞いたところ、旅行先と居住地が同じ地方になっている比率が高い結果となり、近い距離である「自分の住んでいる地方で旅行をする」意向が高いといえる。
また、Go Toトラベル事業が年末年始の旅行動機や行動に与えた影響について聞いたところ、「今回の旅行動機や行動に影響していない」が61.8%となった。一方で、「例年旅行しないが今年は旅行する」が19.2%、「宿泊先を実家から宿泊施設に変更」が8.8%、「帰省をやめて別の場所へ旅行」が8.6%となった。Go Toトラベル事業があることで、実家滞在を避け旅館やホテルなどに滞在するのが今年の特徴の一つともいえそうだ。
これらの調査結果から、コロナ禍での年末年始の旅行は、従来の「安近短(安い・近い・短い)」ではなく、旅行再開時から見られていた、感染防止に配慮する「新常態の安近短(安心安全・近場/近しい関係・短期間)」が大きな特徴で、しばらく続くと考えられる。
今年の年末年始に出かける場所として、どのような場所が気になっているかを聞いてみた。全体では「買い出しが楽しめる場所(13.8%)」が最も多く、次に「東京ディズニーリゾート(11.0%)」、そして「話題の商業施設やアウトレットモールなど(9.7%)」となった。昨年の上位3つは「温泉」「東京ディズニーリゾート」「動物園や水族館」であり、今年は昨年より買い出しや商業施設などへの訪問に興味をもっている人が多いといえる。
JTBの宿泊・国内企画商品の予約状況をみると、Go Toトラベル事業の後押しもあり、例年より早く申し込みが入り好調に推移していたが、新型コロナの感染拡大により11月下旬から取り消しが増え、前年を10%下回っている(12月7日時点)。一方、1月4日以降の予約は前年並みに推移している。旅行先としては、全国的に居住地域内や近隣エリアへの旅行を選ぶ傾向が顕著となっている。なかでも、車でアクセスできる温泉地や自然・景勝地への関心が高く、部屋食や貸切風呂など三密を回避したサービスを提供する高価格帯の小規模旅館や、自然に近い海や湖、山岳地域にあるリゾートホテルが好調。一方で、東京ディズニーリゾートの入場制限やクリスマス・年越しイベントの中止も影響し、例年人気の東京・千葉は前年から半減など、全国的に都市部の回復が遅れている。
JTBでは、例年、年末年始の国内/海外旅行者数や消費額を各種データや定点の意識調査をもとに推計し、「年末年始の旅行動向」として発表してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の世界的な拡大により海外渡航は依然制限され、日本国内でも11月に入り新規感染者数が増加している。現在実施中の観光需要喚起策の見直しが一部地域で講じられるなか、旅行を取り巻く環境は流動的であることから、今年は旅行者数などの推計は行わず、定点で実施している意識調査や各種データから見えてくる年末年始の旅行トレンドについてまとめた。
JTBが実施したアンケートで、回答者自身の生活と年末年始について当てはまる状況を聞いたところ、収入については「昨年より収入が減った(19.1%)」「昨年よりボーナスが減りそうだ(20.1%)」が、「増えた」(3.3%)「増えそうだ」(1.3%)と回答した人より大幅に多い結果となった。また、「将来が不安なので、貯蓄や資産運用を増やしている(11.7%)」が「将来に不安はないので貯蓄や資産運用は増やしていない(4.5%)」を上回る結果となっている。「先行きがわからないので大きな支出は控えておきたい」が26.6%である一方で、「先行きがわからないので、今のうちに大きな支出を考えたい」は1.8%と、大型出費にも消極的な傾向にある。
「今後1年間の旅行支出に対する意向」を聞いたところ「支出を増やしたい(8.4%)」は昨年から5.2ポイント減少し、逆に「支出を減らしたい(44.4%)」は11.0ポイント増加した。「同程度(合計47.2%)」も5.8ポイントの減少となっており、旅行支出を減らそうと考えている人が増えていることがわかる。
今年の年末年始の休暇は、カレンダーどおりの日並びでは、12月28日を仕事納めとすると、1月3日まで6連休になる。12月28日を休みにすると、12月26日から1月3日まで最大9連休とすることが可能。政府は帰省や旅行、初詣などで人出が集中するのを防ぐため、年末年始の休暇の分散や延長を促している。
JTBが実施したアンケートで、年末年始期間中(20年12月23日-21年1月3日)の帰省を含めた旅行意向を聞いたところ、「行く(7.9%)」「たぶん行く(6.9%)」と回答した人の合計は14.8%と、昨年より5.2ポイント減少した。「たぶん行かない(18.4%)」と「行かない(66.7%)」の合計は85.1%で、5.0ポイント増加している。性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高く、「行く」と「たぶん行く」の合計が男性20代は25.7%となった。一方、男性60才以上は8.7%、女性60才以上は7.1%となり、年代による差がみられる結果となった。
旅行の目的や動機については、「毎年恒例なので(43.5%)」「家族一緒に過ごすため(37.6%)」に加えて、「温泉やリゾートでゆっくり過ごしたいので(23.0%)」が昨年より2.3ポイント増加、「家に居てもつまらないので(8.7%)」が3.9ポイント増加するなど、新型コロナによる自宅での自粛疲れの影響も垣間見られた。
事前調査で「今年の年末年始に国内旅行に行く/たぶん行く」と回答した1697人を抽出。旅行の内容について詳細を聞くと、全体的に、旅行を予定している人は新型コロナに無頓着だから旅行をするのではなく、感染防止を何よりも優先して旅行をするという姿が見えてきたという。
旅行の出発日は、「12月30日(水)(15.1%)」「12月31日(木)(13.3%)」「12月29日(火)(11.8%)」の順だったが、「12月26日(土)(11.2%)」が続き、28日(月)を休んで長い連続休暇とする人も多いようだ。
旅行日数は、「1泊2日」が30.8%と最も多くなった。「2泊3日(25.2%)」が次に続いたが、2.5ポイント昨年から減少し、短くなる傾向が見られた。
旅行先は、「関東(21.6%)」が最多だったが、昨年から3ポイント減少した。都市部が敬遠されたとも考えられる。これに「近畿(16.3%)」が続いた。
同行者は、「家族づれ(61.6%)」が最多だったが、昨年と比較して3.6ポイント減少。内訳は「子供連れ」は増加したものの、「夫婦のみ」「それ以外(母娘、三世代)」が減少した。「ひとり(20.7%)」が昨年から3.7ポイント増加した。
一人当たりの旅行費用は、「1万円-2万円未満(23.3%)」が最も多かったものの、「1万円未満(21.5%)」が昨年より4.8ポイント増加し、昨年から順位を上げ2番目となった。「4万円-5万円未満(11.2%)」が3.4ポイント減少、「5万円-7万円未満(4.8%)」が2.4ポイント減少した。
利用交通機関は、「乗用車(56.3%)」が最も多く、昨年から3.6ポイント増加。「JR新幹線(20.7%)」は5.2ポイント減少し、「高速/長距離バス(6.4%)」も2.1ポイント減少となった。公共交通よりも「乗用車」を利用する傾向がみられる。
利用宿泊施設は、「旅館・ホテル・民宿・ペンション(56.5%)」が昨年から2.5ポイント増加した一方で、「夫や妻の実家(24.0%)」が3.9ポイント減少している。新型コロナの影響もあり、高齢者や近所への配慮から実家を避ける人もいるようだ。
アンケートでは、例年にはない今年の特徴として「コロナ禍の旅行で特別に考慮すること」を聞いた。「家族・親族や親しい友人以外には会わない(34.2%)」が最も多く、続いて「公共交通機関を使わずに、自家用車やレンタカーを使う(30.6%)」「少人数の旅行にとどめる(24.1%)」「人が多数移動する時間を避ける(20.7%)」「感染者数が増加傾向の地域は避ける(18.7%)」となり、前述の結果からもわかるように、「同行者」「移動手段」「行先」の選択に新型コロナへの対策が影響している。居住地方別に今回の旅行先の地域を聞いたところ、旅行先と居住地が同じ地方になっている比率が高い結果となり、近い距離である「自分の住んでいる地方で旅行をする」意向が高いといえる。
また、Go Toトラベル事業が年末年始の旅行動機や行動に与えた影響について聞いたところ、「今回の旅行動機や行動に影響していない」が61.8%となった。一方で、「例年旅行しないが今年は旅行する」が19.2%、「宿泊先を実家から宿泊施設に変更」が8.8%、「帰省をやめて別の場所へ旅行」が8.6%となった。Go Toトラベル事業があることで、実家滞在を避け旅館やホテルなどに滞在するのが今年の特徴の一つともいえそうだ。
これらの調査結果から、コロナ禍での年末年始の旅行は、従来の「安近短(安い・近い・短い)」ではなく、旅行再開時から見られていた、感染防止に配慮する「新常態の安近短(安心安全・近場/近しい関係・短期間)」が大きな特徴で、しばらく続くと考えられる。
今年の年末年始に出かける場所として、どのような場所が気になっているかを聞いてみた。全体では「買い出しが楽しめる場所(13.8%)」が最も多く、次に「東京ディズニーリゾート(11.0%)」、そして「話題の商業施設やアウトレットモールなど(9.7%)」となった。昨年の上位3つは「温泉」「東京ディズニーリゾート」「動物園や水族館」であり、今年は昨年より買い出しや商業施設などへの訪問に興味をもっている人が多いといえる。
JTBの宿泊・国内企画商品の予約状況をみると、Go Toトラベル事業の後押しもあり、例年より早く申し込みが入り好調に推移していたが、新型コロナの感染拡大により11月下旬から取り消しが増え、前年を10%下回っている(12月7日時点)。一方、1月4日以降の予約は前年並みに推移している。旅行先としては、全国的に居住地域内や近隣エリアへの旅行を選ぶ傾向が顕著となっている。なかでも、車でアクセスできる温泉地や自然・景勝地への関心が高く、部屋食や貸切風呂など三密を回避したサービスを提供する高価格帯の小規模旅館や、自然に近い海や湖、山岳地域にあるリゾートホテルが好調。一方で、東京ディズニーリゾートの入場制限やクリスマス・年越しイベントの中止も影響し、例年人気の東京・千葉は前年から半減など、全国的に都市部の回復が遅れている。