知られざる「HomePod」の魅力、ディスコンになったから今こそ購入したい理由

レビュー

2021/04/19 19:30

【木村ヒデノリのTech Magic #052】 スマートスピーカーや完全ワイヤレスイヤホンなど、オーディオ機器の進化が止まらない。AIアシスタントのトレンドも相まって、自宅に1台はスピーカーがある時代になってきたが、Appleは「HomePod(ホームポッド)」の販売を在庫がなくなり次第終了すると発表した。スマートスピーカー競争に敗北してしまったかのような発表だが、筆者は敢えてこのタイミングで2台、ホームポッドを購入した。今だからこそHomePodを購入した方が良い理由を紹介しよう。

Appleがディスコンを発表した初代HomePod。小型の「HomePod mini」は販売を継続する
 
Siriを内蔵、大音量で音楽を再生中でも「Hey Siri」を聞き取ってくれるのは凄い
 
底面にはロゴ、電源ケーブルは基本取り外し不可となっている

技術が凝縮した中身を知ればコスパの良さがわかる

 まず理由として挙げられるのは、そのコスパの良さだ。写真で見れば一目瞭然だが、HomePodは外側から想像がつかないほど複雑な機構におり、それだけでも考えられたオーディオ機器だと分かる。

 下記にて比較しているAmazon Echo Studioでは、複数のスピーカーが搭載されているものの、構造としてはシンプルで平凡な印象。対してHomePodは、ウーファーが上部に上向きで配置されていたり、専用設計のツイーターが内向きに配置されていたりと斬新な構造を採用している。

 さらにツイーターにはフォールデッドホーン方式(トランペットのように音源から続く空間を徐々に広くなるように設計することで、低出力のアンプでも高能力が使えるようにする方式。フォールデッドホーンは、限られた空間に迷路のように折り畳まれた状態でこのラッパ構造が作られている。)が採用されており、中心に向かった音が下部から出るなど、聴こえ方を考え抜いた設計になっている。
 
Echo Studio(左)とHomePod(右)それぞれの内部構造

 また、iPhoneなどに採用されていたA8チップを採用することにより、複雑な構造から出る音をリアルタイム処理。直接音と周囲の音をアップミックスしたり、部屋が低音域に与える影響を分析・補正したりと、ハードウェアだけに頼らない「演算処理で音質を最大化」する構造も特筆すべき点だ。
 
周囲には六つのマイクロフォンが配置され、自ら鳴らしている音をリアルタイムで最適化するほか、大音量で再生中も「Hey Siri」が聞き取れるようにエコーやノイズキャンセリングといった信号処理も行われている

 こうした仕様によって、使い手の環境やスキルに依存することなく高音質を体験できるのがHomePodの特徴だ。ここまでのスペックで3万6080円ならむしろ安いと考えることができるのではないだろうか。

技術で進化する「かもしれない」リッチなユーザー体験

 もう一つの理由として挙げられるのが、HomePodで今後実現されるかも知れない未知のユーザー体験だ。というのも、AppleはAirPods Proにスペーシャルオーディオという驚くべき機能を「後付け」で提供しており、HomePodにもそうしたアップデートが今後ないとは言い切れない。Amazonでも同じような取り組みをしているものの、ハードウェアの技術力ではAppleが優勢なため、筆者はHomePodを選んだ。
 
AirPods Proではアップデートによってスペーシャルオーディオが実装されるなど、後付けで画期的な機能が実装された例から見てもハードウェアのポテンシャルの高さは今後の製品選択の重要な要素となりそうだ

  オーディオ機器は単体のスペックで評価されがちだったが、ここへきてパラダイムシフトが起こりつつある。AirPods Maxが他社の高級ヘッドフォンと比べて高すぎると評されているのを見かけるが、これも我々が見誤っている点かもしれない。

 「ハードウェアで実現できなかったユーザー体験を演算やソフトウェアで実現する」というのが今後の主流になることを考えると、演算やアップデートに耐えうるハードウェアを作っていない他社製品はライフサイクルが短いと考えることもできる。

 売価が高くなってもハードウェア部分を革新的にすることで後々のユーザー体験向上を担保していく、というのが今後他オーディオメーカーより優位に立つためのAppleの戦略なのではないだろうか。以上の2点だけ考えてもディスコンになったHomePodを購入する意味はあると筆者は考えている。

実際、導入した感じはどうなのか

 難解な持論を展開してしまったが、筆者はシンプルに「買ってよかった」と思っている。特にジャズなどアコースティックな音楽を聴いた時の音質は素晴らしい。主旋律はもとより、ウッドベースが弾かれる空気感やスネアの定位置、パーカッションのカラカラという高音までもが粒だって非常にリアルに聴こえる。逆に電子音が多い音源の場合、マスタリングによっては低音がかなりブーストしてしまう場合もあった。あまりの低音の出方に驚くこともあったが、概ね快適に使うことができた。
 
筆者宅では天井付近に設置しているから低音がブーストしている可能性がある。推奨はテレビの下、壁から少し離したところにおくというもので、テレビ台があるような環境に向いている

 Dolby Atomosに対応した映画も何本か観てみたが、自分の後ろから音が聴こえる、というレベルの立体感はなかった。そこまでの臨場感を求めるのであればAirPods Maxのようなヘッドフォンタイプを使った方が良さそうだ。
 
ステレオペアで設定するとApple TV 4Kからホームポッドを選択しデフォルトのスピーカーに設定できる
 
なお、Apple TV 4Kを使ったホームシアターにはHomePodのみが対応しているので注意

 とはいえ映画の音質もかなり良く、高額だったウーファー無しのヤマハのサウンドバー「YSP-5600」と比較しても個人的には断然良いと感じた。オーディオに疎い妻も「映画を頻繁に見たくなった」といっていたのでおそらく誰もが体感できる良さなのではないだろうか。

 後継機が出るかもしれないので「待つ」という選択肢もある。ただ、ホームシアターで使えるかどうかはわからないので、その用途に使いたいのであれば在庫が無くなる前に買うというのも良いだろう。1台で鳴らしても感動はあるが、ステレオペアで鳴らす方が断然良いので買うのであれば2台購入をおすすめしたい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
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