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素人でも“至高の一杯”を極められる! 学習支援型スマートコーヒーメーカー「GINA」

レビュー

2020/06/02 18:00

【木村ヒデノリのTech Magic #007】 「GINA(ジーナ)」はGOAT STORYが手がけるスマートコーヒーメーカーだ。同社は2014年にヤギの角の形をしたマグカップ「GOAT MUG」で支援を募り、Kickstarter上で50万ドルもの資金調達に成功した。その後、16年に「GINA」を発表。こちらも50万ドル以上の支援を獲得し、製品がリリースされた。

GOAT STORYのスマートコーヒーメーカー「GINA」。
シンプルなデザインだが底面部分に各種センサーを内蔵し、アプリと連携できる

 同製品の特徴は1台でプアオーバー(通常のドリップ)・イマージョン(一定時間浸す抽出法)・コールドブリュー(低温の水で抽出する方法)の三つの抽出方法ができる点で、どの方法もアプリが最適な淹れ方をサポートしてくれる。

 また、そのときのレシピを自動保存するので、それを指標にドリップのたびに改善していくことができる。ハンドドリップでのコーヒーの味は、豆の量や蒸らし時間、お湯を注ぐスピードなどさまざまな要素で変わってしまうため、素人が上達するのは難易度が高いが、GINAを使えば難しかったコーヒードリップの独学が可能になるかもしれない。
 
色はホワイト、ブラック、ホワイト×シルバーの3色展開、
価格は税込で3万5200円

ハンドドリップを可視化してくれるスマートデバイス

  GINAは「ハンドドリップをテクノロジーでサポートする」というユニークな製品だ。全てを自動化してボタン一つで美味しいコーヒーを、というコンセプトではなく、あくまでハンドドリップにこだわっている。特筆すべきは、豆やお湯の分量・蒸らしや注ぐ時間などをアプリで教えてくれる点だ。これまで見えなかった部分を数値で可視化することで、今までどこをどうしたら上達するのかわかりづらかったハンドドリップが簡単に上達できるというわけだ。
 
抽出にかけるべき時間も豆の分量から自動的に算出して教えてくれる

同じ豆でも違う味わいを楽しめる3種類の抽出法

 淹れ方がいくつか選択できる点も面白い。よく知られているのは“プアオーバー”と呼ばれる通常のハンドドリップで、フィルターに入れられた豆に上からお湯を回しかける。この技術次第で豆の粒子から香りや旨味が引き出されるため、動画などでもさまざまな手法が紹介されている定番の方法だ。

 二つ目のイマージョンは挽いた豆をお湯の中に浸し、最後に一気にフィルターで濾す抽出法で、フレンチプレスで紅茶を淹れるのに似ている。プアオーバーがお湯をかけた直後からフィルターで濾されていく透過法なのに対して、一定時間お湯に浸すことから浸漬法(しんしほう)と呼ばれる。

 お湯に浸した後に粉とコーヒーを分離するため、スッキリした味わいになるのが特徴。長めにお湯に触れさせるので濃くなりそうと思われるかもしれないが、液体と豆の中の成分が同じになるとそれ以上抽出されないので濃くなりすぎることはない。

 最後はコールドブリューで、冷水で長時間ゆっくりと抽出・濾過する抽出法だ。最近日本でも流行しているので聞いたことがある方も多いだろう。GINAでは多めの豆に秒間数滴の冷水が落ちるようにセットして抽出する。ゆっくりじっくり抽出するので、カフェインやタンニンが溶け出しにくく、苦味や渋味が抑えられるのが特徴だ。

 従来はそれぞれの抽出法に対応した器具を用意しなければならなかったが、GINAは1台で全てに対応している。さらにBluetoothでアプリと連携することで計量も可能にしてくれるため、抽出ごとの味のばらつきを無くし、常に自分の好みの味を再現できる点も良い。コーヒー器具は揃えていくと収納スペースを取るので、1台で3種もの抽出ができるのは、それだけでも大きなメリットだろう。
 
六つのパーツだけで3種類のドリップ方法を実現

計測・計量とアプリへの自動記録が示す“至高の一杯”への道

 実際にGINAでコーヒーを淹れてみると、アプリ連携の意味がわかってくる。まず、アプリで好みの濃さを指定すると何gでどのくらいのお湯を使うか教えてくれる。1杯分だけ淹れたいなら150~200mlになるように豆を入れていけばいい。40gの豆からどのくらいの量抽出できるかも教えてくれる。

 適切なお湯の量は豆の重さで変わってくるため、きちんと計るのが重要だそうだ。計量ができたら豆を挽き、フィルターと共にセットする。蒸らすかどうかを設定したら、あとはアプリにしたがって一定の速度でお湯を加えていけば美味しいコーヒーが淹れられる。

 プアオーバーの場合、抽出の速度も味に大きく影響するので、この機能はありがたい。最近はお湯を落とし切ってしまう淹れ方が主流のようだが、GINAには抽出を止めるノブが付いているため、最後まで落としきることなく止めたい場合にも重宝する。
 
ミディアムくらいの濃さなら豆40gに600ccが適正な湯量のようだ

 プアオーバーが難しいと感じる方にはイマージョンがおすすめだ。一定時間お湯に浸すだけなのでコーヒーを入れるのが初めての方でも簡単に淹れられるだろう。先ほどと同じように濃度を決めたらフィルターをセットし、アプリで計りながら飲みたい量の豆を入れる。

 ノブを閉めた状態にして指示された分量のお湯を入れ、スプーンでかき混ぜたらふたをして待つ。時間がきたらノブを開けてコーヒーを下へ落とすという手順だ。同じような淹れ方のフレンチプレスではコーヒープランジャーという専用ポットを使うが、掃除がとても面倒で手間がかかる。一方、こちらのイマージョンではフィルターで淹れられるため、抽出後は捨てるだけでいいという手軽さも魅力だ。
 
イマージョンではお湯を入れた後スプーンでよくかき混ぜる
 
アプリには蒸らし時間とバルブを開けるタイミングが表示され、非常にわかりやすい

 家庭ではなかなか敷居の高いコールドブリューも、本格的な手法を使って抽出できる。専門店では大型のコールドブリュワーを使い、一滴ずつ滴下する方法で作られているが、同様のことがGINAでも可能だ。アプリの指示通りにコールドブリュー用モジュールへ豆を入れ、上にフィルターをのせる。グラスにセットして豆全体が湿るくらい水を注いだら、ドリッパーに氷と水を入れる。最後に適度な間隔で1滴ずつ落ちていくようにバルブを調節したら数時間待つだけだ。時間はかかるが通常のドリップでは出せない味わいが楽しめる。
 
コールドブリューでは専用モジュールを使用する
 
コールドブリューに大切な水滴の落ちる感覚もノブで微調整できる。
アプリで水滴に合わせてヤギのボタンをタップすると適正な落ち方か教えてくれる

 GINAが面白いのは、抽出をサポートしてくれるだけでなく、全ての抽出をアプリに記録しておけるところだ。コーヒーをハンドドリップで入れると味が安定しないことが常だが、GINAはドリップ毎の豆の分量、水量、濃度比率、蒸らし時間、抽出時間、抽出量などの各データが自動で保存される。

 そのとき入れたカップや豆のパッケージも写真で保存できるため、あとから「あのときのコーヒーが一番美味しかったな」となれば即座に再現することができる。計量や計測は専用器具を使えばGINAでなくても可能だが、この記録との連携が核心部分で、ハンドドリップの楽しさを身近なものにしてくれていると感じた。
 
さまざまなデータとともに自分でどう感じたかも保存しておけるのはとても便利だ

 GINAはハンドドリップに特化したスマートデバイスだ。あえてハンドドリップというアナログな部分にフォーカスし、テクノロジーで補うことで常に最適な一杯を提供してくれる。コーヒーを美味しく淹れられる製品は数あるものの、記録までできて淹れ方を調整していける製品は珍しい。

 素人でもコーヒーを極めていけると考えると、ハンドドリップが俄然楽しくなる。まずは一定の抽出法を決めてどの豆が好きなのか調べてみたり、好みの豆を色々な抽出法で試してみたりと活用法はさまざまだ。自分なりの至高の一杯をGINAで探してみるのはいかがだろうか。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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