「出荷」と「販売」データの乖離から浮かぶ、デジタルカメラ市場の懸念点

アナリストPOSデータ分析

2025/02/19 07:00

 先日、CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)から2024年12月のデジタルカメラの出荷台数が発表された。18~24年までの出荷台数の推移と種類別出荷台数構成比を算出した。また、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」でも、種類別販売台数構成比を算出した。出荷ベースのCIPAと販売ベースのBCNランキングでは、構成比が異なる傾向であることが分かった。

出荷ベースは「ミラーレス一眼」が半数以上

 CIPAが発表した出荷台数によると、18年は284万6000台だったが、翌19年は231万6000台と50万台超減少した。20年はコロナ禍ということもあり、129万6000台と前年の半分にも満たない水準となった。

 ロックダウンによるメーカーの生産減に加え、政府による行動制限が影響したと考えられる。その後も前年を上回ることなく、23年には91万2000台まで落ち込む。22年から入国緩和や行動制限の解除で需要が戻りつつあり、24年にようやく出荷台数が前年を上回り、101万2000台まで回復した。
 

 次に18~24年の種類別出荷台数構成比を算出した。21年までは、レンズ一体型が6割、一眼レフは1割、ミラーレス一眼が2割超という構成比で推移していた。しかし、22年に入るとミラーレス一眼が急増。23年にはレンズ一体型を上回り、24年は53.6%と過半を占めるまでに増加した。
 

実売ベースの「ミラーレス一眼」は3割どまり

 ここからは、BCNランキングによる実売データの動きをみていく。18~24年の種類別販売台数構成比をみると、レンズ一体型が6割超を占める。ミラーレス一眼は18年の18.4%から24年の32.3%と、年々構成比が増加しているものの、3割どまり。先に提示した種類別出荷台数構成比とは、明らかに異なる動きを示している。

 この二つの数値からわかるのは、メーカーと消費者の意向が乖離しているということだ。メーカー側は、レンズ一体型よりも高価なミラーレス一眼に主軸を移しつつあるということ。一方、消費者はレンズ一体型を欲しているということだ。

 こうした差は出荷統計に参加していないメーカーの存在もあるが、メーカー側と消費者側の需給の乖離を如実にあわらしている。

 このままの状態が続くようであれば、ミラーレス一眼の在庫はダブつき、値崩れする危険性を孕んでいる。また、消費者が望む製品の選択肢が少なくなり、スマートフォンで撮影せざるを得ない状況に陥ってしまう。

 こうした動きはデジタルカメラ離れを加速させる危険性をはらむ。今こそ需給の溝を埋める動きが必要だ。(BCN総研・森英二)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
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