日本で存在感を高める海外テレビブランド、国内テレビ市場の今

アナリストPOSデータ分析

2024/06/20 17:13

 内閣府の消費動向調査によると、2人以上の世帯におけるカラーテレビの普及率は、地デジ切り替え後の2012年は99.4%だったが、24年は96.0%まで減少した。また、100世帯あたりのカラーテレビの保有数量も12年の232.4台から24年には203.2台とダウンしている。このように長期でみるとテレビの需要は減少していることが明らかであり、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)のが発表したテレビの出荷台数をみると、23年は437.3万台で、前年比89.9%と2ケタ減を記録し、3年連続で前年を下回って推移している。このようなテレビ市場の動向を家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」で探っていく。また、マクロミルのアンケートを用い、購入重視点とブランド別のユーザー属性の違いを明らかにしてく。

コロナ禍を経て減少するテレビ需要


 19年1月の販売台数を「100.0」とした指数を算出し、24年5月までのテレビ市場を振り返る。テレビ市場は、3月の新生活・年度末商戦、7月のボーナス商戦、12月の年末商戦と、一年間に商戦期が3回存在する。しかし、商戦期ではない19年9月の指数は140.0に達した。この要因は、消費増税前の駆け込み需要が発生したため。

 また、20年4月以降、市場は例年と異なる動きを示した。これはコロナ禍での巣ごもり需要による増加で、20年12月は152.0まで達した。しかし翌21年の春頃から、巣ごもり需要の反動減により販売は低迷。23年に入っても前年を下回る水準で推移しており、巣ごもり需要の反動減が長期にわたって継続していることが分かる。

 加えて、経済状況の悪化により趣味嗜好品に対する支出の優先順位が下がったことを考慮すると、24年の市場はさらに減少する可能性もある。オリンピックイヤーである今年、24年の夏に需要を取り戻せるかが注目になる。

消費者はこれ以上テレビに高品質を求めない?


 消費者がAV家電を購入する際に重要視するポイントをマクロミルのアンケートデータで集計したところ、最も高い比率となったのは「手頃な価格・お得感」が49.6%で、「使いやすさ」が41.2%と続いた。一見すると、AV家電では手頃な価格・お得感が非常に重視されていると捉えがちだが、実はマクロミルのアンケート結果では生活家電や調理家電でも同様の傾向を示している。家電は割と高額製品が多いため、やはり価格は気になるという消費者の意識が反映されたものと言えそうだ。

 マクロミルのセルフ型定性調査「ミルトーク」で、テレビを購入する際に価格を重視すると回答した人にその理由を尋ねたところ、「画質はそこそこで問題ない」や「最近のテレビは価格が安くても十分画質がいい」という回答が多かった。近年、テレビの技術はハードとソフトの両面が進歩しており、ほとんどの製品が低価格でも以前より画質が良くなっている。回答は、このテレビ市場の今と合致しているといえるだろう。

徐々にシェアが高まっている「TCL」と「Hisense」


 BCNランキングで23年1月~24年4月までの主要ブランド別販売台数の変化を見ると、REGZAとAQUOSがカテゴリ全体の約半数を占める。3月の新生活需要では、2年連続でAQUOSのシェアが減少している。これはAQUOSの製品ラインアップが大型にシフトしており、新生活にニーズが高まる小型テレビの需要を取り込めていないことが考えられる。一方、TCLは3月にシェアが2ケタまで拡大していることから、新生活ニーズをうまく取り込めているといえるだろう。

 注目すべきは、23年において世界2位のシェアを誇るHisenseが、その安さと品質の高さを武器に16.3%と大きくシェアを伸ばしていることだ。Hisenseは18年に東芝映像ソリューションの株式を取得し、共同開発した高性能なテレビを低価格で供給している。前述した市場が求める「手頃な価格・お得感」に加えてクオリティの高さを兼ね備えており、今後さらにシェアを拡大する可能性がある。

若年層を中心に支持が広がっている海外ブランド


 最後に、ブランド別の購入者にどのような違いがあるのか、マクロミルのアンケートから見ていく。AQUOS、REGZA、VIERA、BRAVIAの購入者は40代以上が多く、30代以下の比率は最も高いREGZAでも購入者の21.9%である。一方、前述した海外ブランドのHisenseとTCLは他と比べ、15歳~19歳や20代の若年層の比率が高く、30代以下はHisenseが45.8%となっている。TCLは過半数の53.6%が30代以下で、特に30代男性の構成比は26.8%と突出している。

 先述の購入重視点で「製造・販売元の信頼性」は30.1%で、価格や使いやすさに次ぐ重視度となっている。AQUOS、REGZA、VIERA、BRAVIAは長年、国内で製品を展開しており、それが信頼性につながり40代以上の購入者の支持を得ているといえそうだ。

 HisenseとTCLはグローバルでテレビの販売を展開しており、両社とも全世界で年間2,000万台以上を販売している。電子回路をはじめとする基幹部品やパーツの共通化により生産コストの低減が可能で、他ブランドと比較して低価格を実現することができる。これが、コストパフォーマンスの良い製品づくりにつながっている。このブランド別購入者の結果から、若い層を中心に日本ブランド志向が薄まりつつある今、低価格で高品質な海外製品の需要がますます高まることが予想される。


*マクロミルが実施したアンケートの調査概要
調査名      :スマートフォンに関する調査
調査機関    :マクロミル
調査方法    :インターネットリサーチ
調査対象者  :全国15~79歳男女
回答者数    :3324人
割付方法    :エリア性年代均等割付後、人口推計に合わせて構成比を補正
調査実施期間:2023年7月~2023年9月


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
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