4K対応テレビの市場拡大が続くも、所有者は4Kチューナーを購入するのか?

アナリストPOSデータ分析

2018/08/27 18:00

 2018年12月から、新4K・8K衛星放送(以下4K放送)がスタートする。家電量販店の店頭では4K対応テレビが売り場の大半を占め、視聴方法や対応チャンネルなどが記載されたリーフレットも目につくようになった。放送開始に向けてアピールが進む一方で、懸念されているのが、視聴者は4K放送を観るために使う4Kチューナーの必要性を、どの程度理解しているのか、という点だ。今回はBCNが今年8月に実施した「テレビに関するアンケート調査」から、4K対応テレビ所有者の4Kチューナーの購入意識について取り上げる。


 まず、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」から、4K対応テレビおよび8K対応テレビの販売動向をみていこう。15年7月の販売台数を「100.0」とした指数をみると、波形は断続的に上昇している(図1上)。昨年12月の指数は「506.3」、直近の7月は「453.6」となり、3年前に比べて4~5倍の販売規模となっていることがわかる。また、薄型テレビ市場に占める4K・8K対応テレビの台数構成比率は15年7月時点では11.6%にとどまっていたが、18年7月では44.1%まで拡大した(図1下)。この構成比率は年末にかけて増加する見通しで、今年末には半数を超えることが考えられる。
 

 4K・8K対応テレビの所有者は増えているが、その一方で4K放送を視聴するために4Kチューナーが必要であることを知っているのか。4K・8K対応テレビを所有している988名に対し、その理解度をアンケート調査で聞いたところ、「詳細に理解している」が31.7%、「事実だけ知っている」が42.1%と、現状の4K対応テレビだけでは4K放送が視聴ができないことを約7割が認知していたことになる(図2)。さらに、4Kチューナーが必要であることを知ったうえでの購入意向は、「価格に関わらず購入する」が17.8%、「価格次第で購入する」が52.8%(図3)となった。買う意思がある人は7割以上で、現在4K・8K対応テレビを所有している人は、4Kチューナーの認知度と購入意向が比較的高いといえる。
 

 すでに4Kチューナーの販売を開始しているメーカーもあるが、4K放送が始まる12月にかけて、新製品の発表が増えてくるだろう。4Kチューナー購入意向者に購入想定時期を聞いた結果、4K放送が始まる18年11月以前に購入する人は約35%で、それ以外は12月以降に購入すると回答している(図4)。とくに19年1月を過ぎてからという人は50.4%と半数を超えており、4K・8K対応テレビ所有者でも、しばらくは様子見が続くのではないかとみられる。

 今回取り上げた4K・8K対応テレビ所有者の4Kチューナーに対する認知や購入意向は高かったが、逆に4K・8K対応テレビ非所有者の認知度はまだ低いものがある。ただ、今まで4K映像のコンテンツは動画配信や一部のCS放送やケーブルテレビでは視聴することができたが、新たにBS・110度CSで4K放送がスタートすることで、多くの人にとって、「4K」が身近な存在になるよい機会となるだろう。4K放送の開始まで3か月余り。4Kコンテンツを提供する各放送局や、その映像を映し出すテレビメーカーは、4Kチューナーの必要性を伝え、視聴者のニーズに応えていくことはもちろんだが、この「4K」の裾野を広げる大きなチャンスをしっかりと生かしてもらいたい。(BCNアナリスト 山口渉)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。