オウガ・ジャパンは12月12日、同社スマートフォン(スマホ)のフラグシップモデル「OPPO Find X8」を発売する。この新製品で特に注目すべきは、ハッセルブラッド(ハッセル)と共同開発のカメラを搭載したモデル、ということだ。日本市場に初めて投入する。オウガ・ジャパンの中国本社、欧加集団は2022年にハッセルとの協業をスタート。以降、日本未発売モデルながら、22年3月発売の「Find X5 Pro」を皮切りに、23年3月発売の「Find X6」、24年1月発売の「Find X7」などに、ハッセルの技術を投入したカメラを搭載してきた。3年半ぶりで日本市場にフラグシップのFind Xシリーズを投入することで、ハッセルのロゴが光るスマホを、ついに日本でも売り出すことになった、というわけだ。
ハッセルといえば、知る人ぞ知るプロ向け中判カメラの一大ブランド。スウェーデンのヨーテボリに本社を構える。フィルム写真の全盛時代、スタジオカメラマンにとって必携の機材が「ハッセル」のカメラだった。特徴はフィルムを装填するフィルムバックが、フィルムを入れた状態で交換できること。フィルムでの撮影は、現像するまでどう写っているかの確認ができない。そのため、フィルムを装填するフィルムバックにポラロイドのインスタントフィルムを詰め、テスト撮影を行うのが常だった。ライティングや構図、露出などを確認するためだ。これをよく「ポラを切る」と言っていた。テスト撮影を終えたら、フィルムを詰めたフィルムバックに付け替えて本番というのが、スタジオ撮影の流れだった。カメラがデジタル化するにつれ、ポラを切る必要がなくなり、ハッセルも生き残りの道を模索している。
OPPO Find X8の製品発表会で、半分以上の時間を費やしたのがカメラ機能の説明だった。例えば、三つのアウトカメラは、35mmフィルムカメラ換算(以下同)で焦点距離15mm相当の超広角レンズ、24mm相当の広角レンズ、70mm相当の望遠レンズを備え、いずれも5000万画素。特に望遠レンズは、W型プリズムを搭載。光を3回屈折させる構造で焦点距離を稼ぎ、7.9mmと薄いスマホのボディーに、3倍の光学ズームを搭載することに成功した。また、10倍以上のデジタル高倍率ズームでは生成AIで補正を行い、鮮明な画像を可能にするという。ハッセルとの協業で「HNCS(Hasselblad Natural Colour Solution)」をビルトインし、より自然な色味を実現する。ハッセルを協業先に選んだ理由について、オウガ・ジャパンの河野謙三 専務取締役は「写真や色味の考え方がOPPOと近しいものだったから」と説明する。
かつてスタジオカメラマンの象徴的アイテムだったハッセル。その哲学を受け継ぐカメラを、今やだれもが自由に使えるようになった。ハッセルは16年、ドローンのトップブランド、中国のDJIに買収され傘下に入った。欧加集団とハッセルの協業について河野 専務取締役は「現状ではDJIとの関連性はない」と話す。一方、DJIにとっては、カメラの老舗ハッセルに加え、スマホに長けた欧加集団とも連携体制が出来上がった状況だ。DJIはジンバル付きビデオカメラ「Osmo Pocket 3」の大ヒットで、ビデオカメラ市場の業界地図を塗り替えた。いざとなれば、3社でタッグを組み、強力なカメラの新製品を世に出すこともできそうだ。
スマホに押され市場を失ってきたデジカメ。次々に「陣地」を奪われている。最初にコンパクトカメラ。次にエントリー一眼レフ、そしてエントリーミラーレス一眼……。もはやデジカメの国土は何十万円もする、高額な「高級ミラーレス一眼」しか残っていないかのように見える。OPPOの新製品を例に出すまでもなく、もはやスマホはカメラそのもの。事ここに至っては、カメラ対スマホという対抗軸ではなく「カメラ同士の戦い」だと考えを改めるべきだろう。かたや撮影専用の「カメラ」、かたや撮影機能に加え写真の共有、保存、閲覧はもとより、電話にコンピュータとさまざまな付加価値がついた「カメラ」。勝負は明らかだ。
カメラメーカーも、座して死を待っているわけではなかった。Android搭載モデルでスマホの機能を取り入れようとしたり、レンズのみの形状でスマホと組み合わせて使うことで、スマホとの共存を狙ったりと、さまざまな試みがなされてきた。ところが残念ながらすべて失敗に終わった。それほど、スマホという名のカメラの存在は強大だ。カメラメーカーが生き残っていくためには、これまでにない新たなカメラの姿を見つけるしかないだろう。まず必須なのは通信機能と大きなモニターだ。次代のカメラは、かつてサムスンが試みたAndroid搭載モデルにヒントがあるように思う。カメラメーカーはまず、スマホをカメラと認め、カメラをゼロから構築しなおし、再発明する意気込みでかからなければ、残されたわずかな領土を守ることすら難しいだろう。(BCN・道越一郎)
ハッセルといえば、知る人ぞ知るプロ向け中判カメラの一大ブランド。スウェーデンのヨーテボリに本社を構える。フィルム写真の全盛時代、スタジオカメラマンにとって必携の機材が「ハッセル」のカメラだった。特徴はフィルムを装填するフィルムバックが、フィルムを入れた状態で交換できること。フィルムでの撮影は、現像するまでどう写っているかの確認ができない。そのため、フィルムを装填するフィルムバックにポラロイドのインスタントフィルムを詰め、テスト撮影を行うのが常だった。ライティングや構図、露出などを確認するためだ。これをよく「ポラを切る」と言っていた。テスト撮影を終えたら、フィルムを詰めたフィルムバックに付け替えて本番というのが、スタジオ撮影の流れだった。カメラがデジタル化するにつれ、ポラを切る必要がなくなり、ハッセルも生き残りの道を模索している。
OPPO Find X8の製品発表会で、半分以上の時間を費やしたのがカメラ機能の説明だった。例えば、三つのアウトカメラは、35mmフィルムカメラ換算(以下同)で焦点距離15mm相当の超広角レンズ、24mm相当の広角レンズ、70mm相当の望遠レンズを備え、いずれも5000万画素。特に望遠レンズは、W型プリズムを搭載。光を3回屈折させる構造で焦点距離を稼ぎ、7.9mmと薄いスマホのボディーに、3倍の光学ズームを搭載することに成功した。また、10倍以上のデジタル高倍率ズームでは生成AIで補正を行い、鮮明な画像を可能にするという。ハッセルとの協業で「HNCS(Hasselblad Natural Colour Solution)」をビルトインし、より自然な色味を実現する。ハッセルを協業先に選んだ理由について、オウガ・ジャパンの河野謙三 専務取締役は「写真や色味の考え方がOPPOと近しいものだったから」と説明する。
かつてスタジオカメラマンの象徴的アイテムだったハッセル。その哲学を受け継ぐカメラを、今やだれもが自由に使えるようになった。ハッセルは16年、ドローンのトップブランド、中国のDJIに買収され傘下に入った。欧加集団とハッセルの協業について河野 専務取締役は「現状ではDJIとの関連性はない」と話す。一方、DJIにとっては、カメラの老舗ハッセルに加え、スマホに長けた欧加集団とも連携体制が出来上がった状況だ。DJIはジンバル付きビデオカメラ「Osmo Pocket 3」の大ヒットで、ビデオカメラ市場の業界地図を塗り替えた。いざとなれば、3社でタッグを組み、強力なカメラの新製品を世に出すこともできそうだ。
スマホに押され市場を失ってきたデジカメ。次々に「陣地」を奪われている。最初にコンパクトカメラ。次にエントリー一眼レフ、そしてエントリーミラーレス一眼……。もはやデジカメの国土は何十万円もする、高額な「高級ミラーレス一眼」しか残っていないかのように見える。OPPOの新製品を例に出すまでもなく、もはやスマホはカメラそのもの。事ここに至っては、カメラ対スマホという対抗軸ではなく「カメラ同士の戦い」だと考えを改めるべきだろう。かたや撮影専用の「カメラ」、かたや撮影機能に加え写真の共有、保存、閲覧はもとより、電話にコンピュータとさまざまな付加価値がついた「カメラ」。勝負は明らかだ。
カメラメーカーも、座して死を待っているわけではなかった。Android搭載モデルでスマホの機能を取り入れようとしたり、レンズのみの形状でスマホと組み合わせて使うことで、スマホとの共存を狙ったりと、さまざまな試みがなされてきた。ところが残念ながらすべて失敗に終わった。それほど、スマホという名のカメラの存在は強大だ。カメラメーカーが生き残っていくためには、これまでにない新たなカメラの姿を見つけるしかないだろう。まず必須なのは通信機能と大きなモニターだ。次代のカメラは、かつてサムスンが試みたAndroid搭載モデルにヒントがあるように思う。カメラメーカーはまず、スマホをカメラと認め、カメラをゼロから構築しなおし、再発明する意気込みでかからなければ、残されたわずかな領土を守ることすら難しいだろう。(BCN・道越一郎)