U-22プロコン2023最終審査会、経産大臣賞に2人の小学生を含む4名が輝く
U-22プログラミング・コンテスト実行委員会は11月19日、U-22プログラミング・コンテスト2023最終審査会を開催した。入選した16作品のプレゼンテーションと審査を経て、経済産業大臣賞4作品をはじめ、多くの優秀作品が表彰された。経済産業大臣賞・総合には、東京大学 真家彩人さんの作品「AIシンセサイザー『OneSynth』」、経済産業大臣賞・テクノロジーには、札幌市立札幌大通高等学校 小田悠真さんの作品「cl-waffe2」、経済産業大臣賞・アイデアには、つくば市立手代木南小学校 小林悠太さんの作品「関数型のコンパイラ言語Yet」、経済産業大臣賞・プロダクトには、小平市立小平第二小学校 小林幸ノ心さんの作品「数学好きのラクガキパズル」が、それぞれ輝いた。経済産業大臣賞を受けた4名は、2024年1月26日に東京国際フォーラムで開催される、BCN ITジュニア賞にノミネートされる。
経済産業大臣賞・総合を受けた東京大学 真家彩人さんの作品「AIシンセサイザー『OneSynth』」は、シンセサイザーの音作りを容易にするための、ハードウエアを含むシステム。真家さんは、バンドサークルでキーボードを演奏している。しかし、シンセサイザーのつまみが多すぎて音作りが難しいということから、この作品の開発を思い立った。自分自身が一番欲しいと思うプロダクトで、自分のために開発したという。求める音色を作り出すためのつまみはたった一つ。MIDIキーボードと接続し、9種類の音を選ぶところからスタート。つまみを動かして、求める音に近い音色の場合は緑、違うと思えば赤のボタン押すことを繰り返し、欲しい音色を簡単に作り出していく。
真家さんは「音楽生成AIは貧しい使われ方しかしていない。芸術家対音楽AIという対立構造になってしまっている。しかし私は、音楽家が作品を一緒に作れるような音楽AIをテーマに開発している。今回の作品もこうした世界観を基に作った」と語る。表彰式では「まさか自分がいただけるなんて夢にも思っていなかった。3回目の挑戦で最高賞の経済産業大臣賞を受けることができたのも、過去2回のコンテストでフィードバックやアドバイスをくださった方々のおかげ」と話した。
経済産業大臣賞・テクノロジーを受けた小田悠真さんの作品「cl-waffe2」は、プログラム可能なCommon Lisp製の深層学習フレームワーク。人工知能モデルの学習と推論に特化した。すべての機能はユーザーが拡張可能。作りたいプロダクトに応じてケースバイケースでカスタマイズできる。インストールも簡単にした。小田さんはCommon Lispは中学校2年に出会ってずっと書いている。プログラミングを始めた頃に使っていた言語は体系的ではなく使いにくかったが、Lispに出会ってすごいと思い、それ以降ずっと使っているという。表彰式では「高校3年生の17歳という大事な期間を受験勉強ではなくプログラミングに充てて、結果が出るか終始不安だった。今回、努力を認めていただけて光栄。ただ、プレゼンでは自分の作ったものをうまく伝えられなかったという心残りもある。これからも、人に伝えるという努力も頑張っていこうと思う」と話した。
経済産業大臣賞・アイデアを受けた、小林悠太さんの作品「関数型のコンパイラ言語Yet」は、数式をそのままに近い形で書ける特徴をもつプログラミング言語。小林さんはもともとコンピュータと数学が好きだった。しかし、既存のプログラミング言語で数式を表現しようとすると、どうしても冗長になってしまう。そのため新たな言語を開発した。作品は、数式をシンプルに書けるプログラミング言語とそれを動かすオリジナルの仮想環境、機械語の組み合わせ。数式に近い記法を採用しているため直感的に書ける。if文、for文のような文が不要で、条件分岐は三項演算子、if関数、繰り返しは再帰など、式を使って処理する。また、誰でも使えるようマニュアルも作成。仕様を網羅し分かりやすくした。サンプルコードに加え、Lisp言語への変換機能についても解説している。小林さんは「言語を設計し、仮想環境をつくってコンピュータの仕組みを深く知ることができ、動いているところを見て楽しいと感じた。今後はオープンソース化し、いろいろな人が改良できるようにしたい。と語った。また表彰式では「初めての参加で経済産業大臣賞をいただけてうれしい。これからもプログラミングを頑張っていきたい」と話した。
経済産業大臣賞・プロダクトを受けた小林幸ノ心さんの作品「数学好きのラクガキパズル」は、数学系のパズルゲーム。画面に表示されたグラフの形を変え、その上にボールを転がしてゴールに導く。主人公が学校に入学し卒業するまでの3年間の学校生活を模している。関数の定数を変更することでグラフの形を変え、主人公の行く先をコントロールして遊ぶ。瞬間移動するワープやブロックが出たり消えたりするスイッチ、ドミノ、跳ねる床など様々なギミックを作り込んだ。もともとは、数学好きの人向けだったが、数学のチュートリアルも備え、数学が分からなくても操作を学んで遊べるような工夫も施した。全部で103ステージあり、飽きずに遊べる。ゲームを作るために数学も勉強し、高校2年生程度を対象とする数学検定2級にも合格したという。
審査員から将来の夢を聞かれた小林さんは「世界の常識を変えるようなものや仕組みを作りたい。人体すべての情報を何らかの方法でまとめロード、セーブできたり、老化の停止や巻き戻しなどをして人体の情報を改ざんする技術を開発して普及させたい」と答えると、会場から拍手が起きた。表彰式では「もともと趣味や軽い気持ちで作り始めた作品で経済産業大臣賞をいただけてよかった」と話した。
審査委員長を務めた、東京大学の近山隆 名誉教授は最後に「すぐれた作品がたくさん集まった。内容は多岐にわたり年齢層もいろいろ。みな素晴らしい作品で、順位付けするのはとても難しかった。今回、AIのシステムを活用した作品がいくつか見られた。AIをうまく使い、作りたいものを取り入れた作品も多かった。このような手法はこれからも生かせるだろうし、大きな流れになると思う。このコンテストはこれで終わりではない。ここで培った技術や努力にはその先がある。今後もプログラミング、さらにプログラミングを活かしたものづくりにも注力していただきたい」と総評した。
次回、U-22プログラミング・コンテスト2024の詳細は2024年4月頃の発表を予定している。(BCN・道越一郎)
経済産業大臣賞・総合を受けた東京大学 真家彩人さんの作品「AIシンセサイザー『OneSynth』」は、シンセサイザーの音作りを容易にするための、ハードウエアを含むシステム。真家さんは、バンドサークルでキーボードを演奏している。しかし、シンセサイザーのつまみが多すぎて音作りが難しいということから、この作品の開発を思い立った。自分自身が一番欲しいと思うプロダクトで、自分のために開発したという。求める音色を作り出すためのつまみはたった一つ。MIDIキーボードと接続し、9種類の音を選ぶところからスタート。つまみを動かして、求める音に近い音色の場合は緑、違うと思えば赤のボタン押すことを繰り返し、欲しい音色を簡単に作り出していく。
真家さんは「音楽生成AIは貧しい使われ方しかしていない。芸術家対音楽AIという対立構造になってしまっている。しかし私は、音楽家が作品を一緒に作れるような音楽AIをテーマに開発している。今回の作品もこうした世界観を基に作った」と語る。表彰式では「まさか自分がいただけるなんて夢にも思っていなかった。3回目の挑戦で最高賞の経済産業大臣賞を受けることができたのも、過去2回のコンテストでフィードバックやアドバイスをくださった方々のおかげ」と話した。
経済産業大臣賞・テクノロジーを受けた小田悠真さんの作品「cl-waffe2」は、プログラム可能なCommon Lisp製の深層学習フレームワーク。人工知能モデルの学習と推論に特化した。すべての機能はユーザーが拡張可能。作りたいプロダクトに応じてケースバイケースでカスタマイズできる。インストールも簡単にした。小田さんはCommon Lispは中学校2年に出会ってずっと書いている。プログラミングを始めた頃に使っていた言語は体系的ではなく使いにくかったが、Lispに出会ってすごいと思い、それ以降ずっと使っているという。表彰式では「高校3年生の17歳という大事な期間を受験勉強ではなくプログラミングに充てて、結果が出るか終始不安だった。今回、努力を認めていただけて光栄。ただ、プレゼンでは自分の作ったものをうまく伝えられなかったという心残りもある。これからも、人に伝えるという努力も頑張っていこうと思う」と話した。
経済産業大臣賞・アイデアを受けた、小林悠太さんの作品「関数型のコンパイラ言語Yet」は、数式をそのままに近い形で書ける特徴をもつプログラミング言語。小林さんはもともとコンピュータと数学が好きだった。しかし、既存のプログラミング言語で数式を表現しようとすると、どうしても冗長になってしまう。そのため新たな言語を開発した。作品は、数式をシンプルに書けるプログラミング言語とそれを動かすオリジナルの仮想環境、機械語の組み合わせ。数式に近い記法を採用しているため直感的に書ける。if文、for文のような文が不要で、条件分岐は三項演算子、if関数、繰り返しは再帰など、式を使って処理する。また、誰でも使えるようマニュアルも作成。仕様を網羅し分かりやすくした。サンプルコードに加え、Lisp言語への変換機能についても解説している。小林さんは「言語を設計し、仮想環境をつくってコンピュータの仕組みを深く知ることができ、動いているところを見て楽しいと感じた。今後はオープンソース化し、いろいろな人が改良できるようにしたい。と語った。また表彰式では「初めての参加で経済産業大臣賞をいただけてうれしい。これからもプログラミングを頑張っていきたい」と話した。
経済産業大臣賞・プロダクトを受けた小林幸ノ心さんの作品「数学好きのラクガキパズル」は、数学系のパズルゲーム。画面に表示されたグラフの形を変え、その上にボールを転がしてゴールに導く。主人公が学校に入学し卒業するまでの3年間の学校生活を模している。関数の定数を変更することでグラフの形を変え、主人公の行く先をコントロールして遊ぶ。瞬間移動するワープやブロックが出たり消えたりするスイッチ、ドミノ、跳ねる床など様々なギミックを作り込んだ。もともとは、数学好きの人向けだったが、数学のチュートリアルも備え、数学が分からなくても操作を学んで遊べるような工夫も施した。全部で103ステージあり、飽きずに遊べる。ゲームを作るために数学も勉強し、高校2年生程度を対象とする数学検定2級にも合格したという。
審査員から将来の夢を聞かれた小林さんは「世界の常識を変えるようなものや仕組みを作りたい。人体すべての情報を何らかの方法でまとめロード、セーブできたり、老化の停止や巻き戻しなどをして人体の情報を改ざんする技術を開発して普及させたい」と答えると、会場から拍手が起きた。表彰式では「もともと趣味や軽い気持ちで作り始めた作品で経済産業大臣賞をいただけてよかった」と話した。
審査委員長を務めた、東京大学の近山隆 名誉教授は最後に「すぐれた作品がたくさん集まった。内容は多岐にわたり年齢層もいろいろ。みな素晴らしい作品で、順位付けするのはとても難しかった。今回、AIのシステムを活用した作品がいくつか見られた。AIをうまく使い、作りたいものを取り入れた作品も多かった。このような手法はこれからも生かせるだろうし、大きな流れになると思う。このコンテストはこれで終わりではない。ここで培った技術や努力にはその先がある。今後もプログラミング、さらにプログラミングを活かしたものづくりにも注力していただきたい」と総評した。
次回、U-22プログラミング・コンテスト2024の詳細は2024年4月頃の発表を予定している。(BCN・道越一郎)