海外通販、その返品・交換チョット待った! 関税や消費税がダブル課税されるかも

レビュー

2023/04/30 18:30

 海外通販は楽しい。日本で買うと、なぜかべらぼうに高いものでも、海外から取り寄せると、かなり安く買えることがある。1ドル80円台だった円高の2010年ごろには頻繁に利用していた。しかし1ドル130円を超える円安の現在でも、割安な商品はたくさん見つかる。日本製品の逆輸入でも同じ。海外発送時の結構高い送料を考慮しても、なお割安なら試す価値はある。いつでもだれでも全世界のネット通販を渡り歩くことができる、現代人の特権だ。ただし、トラブルがなければ。不良品に「当たって」しまうと、後処理で結構な出費を強いられる。例えば、アメリカのサイトで買った商品は、基本的に日本の販売店や代理店などではサポートを受けられない。初期不良だった場合にはアメリカに送り返すことになる。送料だけでも結構な出費。修理でも同様だ。

 先日、動画撮影に利用する5インチの小型液晶モニターをアメリカの通販サイトで購入した。国内で買うと安いところで税込み6万円弱。これが、日本までの送料込みで330米ドルほど。少し悩んだ末買うことにした。購入先はよく利用しているB&H。ニューヨークに店舗もある量販店だ。カメラや関連機器の取り扱いが豊富で価格もまあまあ安い。対応も、かなりしっかりしている。注文して1週間ほどで届いた。配送会社はDHL。製品の種類や価格によって、関税や消費税がかかる。今回は3400円だった。内訳は消費税が2300円、DHLの立替納税手数料が1100円。1ドル135円として、総額およそ4万8000円。日本で買うより1万円ほど安く買えた計算だ。
 
B&Hから発行された返品用送り状。
RMA番号やオーダー番号などが記されている

 箱から取り出し、早速動作テストを行った。1点だけネットワーク接続で問題が見つかった。本国のサポートに問い合わせると、製品不良と思われるので、販売店で返品・交換してほしいとのこと。当該の機能はほとんど使わないので、そのままにしておいても良かった。しかし、思い切って返品・交換を試してみることにした。B&Hでは初体験だ。サイトの購入履歴から、返品の項目を選び、理由を添えて良品と交換したい旨入力。すると、すぐにRMA(Return Merchandise Authorization)番号が発番された。これで返品の受付が完了。同時に交換品に同梱する専用の送り状もPDFで発行された。紙に印刷し、1ページ目は商品に同梱、2ページ目は箱の表に張り付けて発送する。また「Return Goods」と箱に書いておけば、アメリカに着いた際の関税は免除されるというので、2か所に大書しておいた。

 B&Hでは不良品の返品・交換の際、アメリカからの送料は無料だが、返送料は負担する必要がある。返送にはヤマト運輸の国際宅急便を使った。色々調べて最も安かったからだ。とはいえ、一番小さな荷物で3700円。せっかく割安で買ったはずなのに、国内価格との差がなくなっていく。1週間弱で先方着。すぐに代替品が送り返されてきた。往復で正味2週間程度だった。しかし、再びDHLから消費税を支払えとのメールが届く。今回は購入したわけではなく、無料で交換してもらった商品だ。また消費税を取られるとは納得いかない。しかし、DHLやJETOROに問い合わせてみると、どうもそういうものらしい。書類上では単に「製品の輸出」と「製品の輸入」を行っただけであり、その都度関税や消費税がかかるとのこと。考えてみれば、不良品の代替品というのは確かめようがない。結局「もう一度同じ商品を購入した」扱いになり、再度消費税を支払う羽目になった。今度は送料が無料だったためほんの少し安くなり、消費税が2100円、手数料が1100円で計3200円。ここまでの支出総額は、約5万5000円。この段階で、もう日本で買うのと大差ない価格になってきた。
 
返品・交換品が届く際にも、
輸入関税/消費税の支払いを促す連絡が来た。
DHLに罪はないが、結局、消費税と手数料をもう一度支払う羽目に

 よくよく聞いてみると、不良品などを海外に返品する際は、発送する前なら、その商品にかけられた関税や消費税を還付してもらう手段があるという。財務省関税局によると「個人的に使用するために通信販売やネットオークションで購入し、輸入した品物が、予期していた品物と異なっていた場合」には「輸入が許可されてから6月以内であること」「輸入時の性質及び形状に変更が加えられていないものであること」を条件に、輸入時に課された関税や消費税の還付を受けられるという。詳細は省くが、結構面倒な手続きが必要だ。返送する前に、税関に5通の書類を添えて現物を提示し、検査を受ける必要がある。条件を満たすことが認められれば関税や消費税が還付されるわけだ。

 今回のケースでは、すでに返送してしまっているので、もう還付申請はできない。しかし、返送前に制度を知っていたとしても、申請したかどうかは微妙だ。満額還付されたとしても2100円。書類の手間もさることながら税関まで出向くことを考えれば割に合わない。いずれにせよ、海外通販で返品・交換する際には、交換品が届く時点でも課税対象になる、という点には留意しておきたい。こうしたリスクと価格を天秤にかけた上で買うかどうか判断だ。まあ、海外通販はトラブルも楽しむぐらいの気持ちで利用するのがちょうどいいだろう。ちなみに今回は、交換した商品でも問題は解決しなかった。やれやれ。(BCN・道越一郎)