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車椅子はもう万人が積極的に活用する時代、WHILLの近距離モビリティが作り出す自分で好きな”どこでも”に行ける未来

レビュー

2023/03/03 18:10

 【木村ヒデノリのTech Magic #158】 「WHILL」という電動車椅子をご存じだろうか。最近、街でもよく見かけるようになったデザイン性の高い製品だ。妻が妊娠中に出かける必要が出てきたので初めて使う機会を得たが、使ってみるとそれは「車椅子」ではなく「モビリティ」の可能性を秘めた移動手段だった。今回はこのWHILLのレポートをお届けする。なお、本記事は妊婦への利用を推奨しているわけではなく、使う方それぞれの体調に合わせて適切に利用してほしい。

車椅子という概念にとらわれずに利用できるWHILL

車椅子を誰でも積極的に活用する時代が来るかも?

 まず大前提として電動車椅子と考えた時、その完成度は非常に高い。硬さと柔らかさの絶妙なバランスを実現した座面や後輪を軸に回転できる構造、狭い場所でも通り抜けられて窮屈さを感じさせない横幅など、全てが考え抜かれている。

 妻だけでなく筆者も試乗したがその乗り心地は抜群で、速度も同伴者が駆け足でないとついてこられない程度に出る。操作も簡単でコントローラーを倒すとその方向へ動き、戻し始めるとブレーキがかかって、完全に戻すとサイドブレーキがかかる。坂道でも片手で安全に止まることができる仕様だ。
柔らかすぎないので沈み込まず立ち上がりやすいし、
硬くはないのでお尻が痛くならない

小回りの効く実用度MAXの設計

 前輪は5cmの段差まで乗り越えられるほか、舗装されていない道もぐんぐん進んでいく。妊娠期も終盤に差し掛かりゆっくりとしか動けなかった妻も「これなら自分で好きな場所に行けてストレスがない」と話していた。
赤いランプで存在と幅を知らせてくれるので夜間も安心

 かなり長めにさまざまなシチュエーションで使わせてもらったが、製品の仕様として危ないと感じたことは一つもなかった。今回、意地悪にも自宅から2時間の道程で東京ディズニーランドまで行き、充電しないまま夜までパークを回って帰ってくるという実験もしたが何とバッテリー1本で充電が余った。実用度も申し分ない非常に素晴らしい電動車椅子といえるだろう。
 

誰でも使えるモビリティとしての側面

 正直、1度乗って筆者はずっと使い続けたくなってしまった。そのくらい移動が楽だ。もちろん車椅子移動しかできない人のために専用スペースを使わないなど配慮は必要だが、同社の話では誰でもモビリティとして使ってもらって問題ないということだ。
手を離せば止まれるので安全、スピードもあらかじめ設定できる(左)、
もっと直角な段差もパワフルに登ってくれた

 例えば、地方や広い商業施設ならば、スペースの制約もなく、とても便利に使えるだろう。筆者の地元の豊橋には上野動物園とも張り合えるほど大きな「のんほいパーク(豊橋総合動植物公園)」という施設があるが、これが田舎だけあって広大な敷地になっている。娘がよく行きたがるのだが、正直私や私の両親も1日歩き回ると疲れてしまう。
小回りは利くし、狭い場所も問題なく利用でき、かなり優秀

 そんなシチュエーションでWHILLが1台あれば荷物は載せられるし、疲れた大人も交互に座って移動できる。こうした活用はショッピングモールなどでも可能で、持ち運びを重視するのであれば軽量、折りたたみのできるModel Fというタイプもある。このように車椅子としてだけでなく「モビリティ」として活用できる製品だということをぜひ知っていただきたい。
ゲートまで自動運転で移動してくれるWHILLが導入された空港もある
(参考写真)
 

男性1人でも撮影旅行に使おう!

 さらに筆者の購買意欲を掻き立てたのがアクセサリの豊富さだ。ドリンクホルダーはもとより、フレキシブルなスマホホルダーから果てはケンコー・トキナー社製のミラーレス一眼アタッチメントまで至れり尽くせりのラインアップ。話を聞くと、ドラマの撮影などでも機材を載せて運ぶのに使われているそうだが、筆者はこれと一緒に撮影旅行に出かけたくなった。大きなバスケットに、いろんなシチュエーションを想定した機材をやや多めに入れる。カメラアタッチメントやスマホ、ドリンクホルダーなど完全装備にして出かけ、疲れた帰りは座って帰ってくるという寸法だ。

 カメラアタッチメントがあれば三脚を持ち歩かなくて良いのも大きなメリット。さらにミラーレス一眼でPOV(自分視点)の動画が撮れるというメリットもある。WHILLはアプリで遠隔コントロールできるので、荷物だけ載せて一緒に移動したり、Vlogを撮りながら移動し、良いスポットを見つけたらカメラのシャッターを切ったり、などが可能。男性の単独旅行でもこうした活用をすると楽しみが増えるのではないだろうか。
操縦や残りの走行可能距離確認がアプリからできるので、
荷物を運んでくれるお供としても使える

ユーザーが増えれば社会課題が見えてくる

 モビリティとして一般のユーザーが使うようになることには、もちろん懸念事項もある。マナーの悪いユーザーのせいで車椅子ユーザーが不利益を被るのではないかといったものだ。しかしこれは、車椅子関係の設備が少ないということにも起因している。ユーザーが増えれば設備も増えるし、もっと多くの人が車椅子ユーザーの目線に立てるのは有意義なことだ。

 実際、筆者もWHILLで電車移動してみて点字ブロックの引っ掛かりが最初は意外と怖かったり、それがほとんどの場合車椅子と同じルートになっていたり、ということを初めて知った。エレベーターが使われてしまう、エレベーターがない、ということがどのくらい困るか、という肌感もそうだ。

 こうした課題はユーザーが増え、声が大きくなって解決される可能性がある。物事が変化するときにはデメリットも出てくるが、まずは使ってみて、出てきたデメリットを解決していくという姿勢で解決するのが良いと思う。
豊富なカラーパーツで自分好みにカスタマイズもできる

完璧だからこそリクエストしたい改善点

 正直製品に何の文句もないのだが、私と妻の2人で使って2点だけ、ここはぜひ!という点があった。妻が挙げたのは「夜間、前方の地面が見えづらい」という点。アクセサリでLEDライトはあるのだが地面は照らせない仕様。タイヤ前方が光るようになっているとさらに良いだろう。

 私が感じたのは「横に並行移動したい」という欲求。Model C2の場合は前輪が縦横両方に回転する特殊構造になっているのだが、せっかくこのタイヤがあるのなら前後に搭載すればその場で横に並行移動できるのではないかと思った。というのもエレベーターの中で「しまった、もう少し右に陣取れば良かった……」ということがあったからだ。また歩いている時も横に並行移動できれば後ろの人に抜いてもらいやすいし、より「歩いている」という感覚に近づく。
このタイヤ……ぜひ前後につけてほしい!

 初めてWHILLを試した感覚は衝撃だった。現在ストアや、WHILLを採用しているアウトレットモールに行けば体験できる。また、Model Fは日額3840円でレンタルでき、なんと旅行先まで届けてくれるそう。ぜひ「近距離モビリティ」としてのポテンシャルを試してみてほしい。

■Profile

木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。(動画配信時期は記事掲載と前後する可能性があります)
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