【木村ヒデノリのTech Magic #138】 久しぶりに欲しいと思えるBluetoothスピーカーが登場してきた。キヤノンがリリースした新製品「albos Light & Speaker(アルボス ライトアンドスピーカー、以下、albos)」は他のメーカーとはちょっと切り口の異なるスピーカーだ。アルミ削り出しボディという贅沢な筐体も目を引くが、そのサウンドは低音がかなりスッキリしておりアコースティックの音源を絶妙に良い音にしてくれる。聴く人を選ぶが、アコースティック音源がメインなら絶妙なバランスのBluetoothスピーカーと言えるだろう。
これまで筆者はソニーのグラススピーカーやアップルのHomePod、BOSE SoundLink、B&O Beoplay A2などのスピーカーを使ってきた(BOSE以外は使い続けている)が、どれも低音がかなりよく出ている。それはそれで音源によっては良いのだが、その低音がよく出る音作りに少々飽きてしまっていた。
今回も同じような音作りかなと思って試聴した瞬間に「これはかなり物議を呼びそうだ!」とワクワクさせられた。特にピアノやジャズを長年やってきた筆者は、ピアノの音のリアルさが段違いだと感じた。
通常360度スピーカーは作り込まれているとはいえどうしてもステレオで聴きたくなってしまう。だから基本的にどの会社もステレオモードを搭載しているのだ。しかし、albosはぜひ単体で使ってほしいと太鼓判を押せる。そもそもピアノやアコースティック楽器は1か所からしか音が鳴っていないので、1台で聴く方が臨場感を持って聴こえるのだ。
もちろん編成が大きくなるとステレオの方が良くなってしまうが、トリオやボーカルメインのジャズの楽曲であれば1台で聴く方が良い。クラシックもバロックや古典ならオルガンやチェンバロの楽曲、ピアノの楽曲であればどの時代のものも非常に澄んだ臨場感ある音で聴くことができる。
高解像度の音源を本当に聴き分けられるのかということには議論の余地があるが、Bluetooth経由で再生される音楽に「ワクワク」させられなくなっていたのは事実だ。それがalbosを使った瞬間に「これはいいぞ」となった。
音の作り込みだけでなく、筐体の素材など様々な要素が絡み合った結果だとは思うが、他のスピーカーにはない音を聴かせてくれる時点で「買う価値」を感じた。
特に最近、量産や世代が進むごとに効率化されてしまう日本の家電製品だが、albosはそれに逆行するかのような設計だ。「ここまでやらなくてもいいんじゃない?」というくらい重厚、丁寧に作られた本体からは昔の日本製品のような懐かしさが感じられた。
台座から上は360度回転するのだが、これにはボタンもついてきてくれる。細かい点だがこういう部分もよく考えられているなと感じた。ベッドサイドに置いてライトの角度を変えても操作が容易で使いやすい。USB-Cで給電しておけば電池切れは起こさないし、充電しておけばケーブルなしでも使える。
ただ、光の質については少々注文をつけたくなった。白めの昼白色と電球色を選べ、明るさも三段階で切り替えられるのだが、光質の心地よさはやや物足りない。特に白色はもう少し満遍なくどの色も含んだ白にすることで冷たい印象にならなくなるのでここは次モデルで改善して欲しいところだ。音楽は感情とリンクするので光質にこだわることはより良い音楽を聴かせる意味でも有意義だろう。
光に関しては照射角も調整できれば尚良い。壁に当てて間接照明として使う場合でも狭い範囲で当てられれば演出光として使いやすい。音と連動して揺らぐのもアリだ。
Bluetoothを介して良い音が鳴らせるとなれば、Amazon Echoなどスマートデバイスを活用して音楽を生活シーンに溶け込ませることができる。時間帯や季節に合わせて気分が上がる音楽を自動で流してくれる上に音も良いとなれば、これまでにないQOLが実現されるだろう。
音楽カテゴリを選ぶスピーカーだが、その分フィットすると抜群の音を鳴らしてくれるalbos。どれもさほど変わらない音作りの中、ここまで攻めたことは高く評価したい。小編成かソロのアコースティック楽曲を持ってお店で試聴してみてほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。(動画配信時期は記事掲載と前後する可能性があります)
360度スピーカーにしては珍しいバランスの取れた設計
各社からさまざまな360度のBluetoothスピーカーが出ているが、albosの音は良い意味で異質だ。低音がかなりスッキリとし、代わりにボーカルの息遣いや弦の擦過音などが非常にクリアに聴こえる。小編成のアコースティック音源やピアノなどに最適と言えるだろう。これまで筆者はソニーのグラススピーカーやアップルのHomePod、BOSE SoundLink、B&O Beoplay A2などのスピーカーを使ってきた(BOSE以外は使い続けている)が、どれも低音がかなりよく出ている。それはそれで音源によっては良いのだが、その低音がよく出る音作りに少々飽きてしまっていた。
今回も同じような音作りかなと思って試聴した瞬間に「これはかなり物議を呼びそうだ!」とワクワクさせられた。特にピアノやジャズを長年やってきた筆者は、ピアノの音のリアルさが段違いだと感じた。
通常360度スピーカーは作り込まれているとはいえどうしてもステレオで聴きたくなってしまう。だから基本的にどの会社もステレオモードを搭載しているのだ。しかし、albosはぜひ単体で使ってほしいと太鼓判を押せる。そもそもピアノやアコースティック楽器は1か所からしか音が鳴っていないので、1台で聴く方が臨場感を持って聴こえるのだ。
もちろん編成が大きくなるとステレオの方が良くなってしまうが、トリオやボーカルメインのジャズの楽曲であれば1台で聴く方が良い。クラシックもバロックや古典ならオルガンやチェンバロの楽曲、ピアノの楽曲であればどの時代のものも非常に澄んだ臨場感ある音で聴くことができる。
Bluetoothという制限を超えて聴きたくさせてくれる
筆者が最近あまりBluetoothスピーカーを使っていなかった理由にコーデックの問題がある。Bluetoothという通信方式を使う時点で高品質な音源データは使えなくなってしまうのだ。高解像度の音源を本当に聴き分けられるのかということには議論の余地があるが、Bluetooth経由で再生される音楽に「ワクワク」させられなくなっていたのは事実だ。それがalbosを使った瞬間に「これはいいぞ」となった。
音の作り込みだけでなく、筐体の素材など様々な要素が絡み合った結果だとは思うが、他のスピーカーにはない音を聴かせてくれる時点で「買う価値」を感じた。
ものづくりの原点を想起させる筐体の良さ
音だけでなく製品のデザインや素材選びも良い。アルミ削り出しは見た目以上に持ったときに満足感がある。往年のアンプのような重量感と剛性のある作りは耳だけでなく目からも所有欲を満たしてくれるだろう。特に最近、量産や世代が進むごとに効率化されてしまう日本の家電製品だが、albosはそれに逆行するかのような設計だ。「ここまでやらなくてもいいんじゃない?」というくらい重厚、丁寧に作られた本体からは昔の日本製品のような懐かしさが感じられた。
使いやすいシンプルな機能性、ライトはもう一工夫必要か
ユーザビリティもシンプルで申し分ない。スイッチをつけてBluetoothスピーカーとして選択すれば鳴る、以上だ。アプリとの連携もないし、EQも変えられない。ただそれが潔くて好きだった。台座から上は360度回転するのだが、これにはボタンもついてきてくれる。細かい点だがこういう部分もよく考えられているなと感じた。ベッドサイドに置いてライトの角度を変えても操作が容易で使いやすい。USB-Cで給電しておけば電池切れは起こさないし、充電しておけばケーブルなしでも使える。
ただ、光の質については少々注文をつけたくなった。白めの昼白色と電球色を選べ、明るさも三段階で切り替えられるのだが、光質の心地よさはやや物足りない。特に白色はもう少し満遍なくどの色も含んだ白にすることで冷たい印象にならなくなるのでここは次モデルで改善して欲しいところだ。音楽は感情とリンクするので光質にこだわることはより良い音楽を聴かせる意味でも有意義だろう。
光に関しては照射角も調整できれば尚良い。壁に当てて間接照明として使う場合でも狭い範囲で当てられれば演出光として使いやすい。音と連動して揺らぐのもアリだ。
1点突破の異端児スピーカー
はっきり言ってalbosは最近流行りの音楽には向いていない。ヒップホップや最近の打ち込み系音楽を再生するとごちゃっと聴こえて良くない。一方でアコースティック音源のレベルは何段階も上げてくれる。Bluetoothなのに、だ。筆者は朝のルーティーンとしてAmazon Echoに季節のジャズを流させているが、albosとの組み合わせで品質が段違いになった。Bluetoothを介して良い音が鳴らせるとなれば、Amazon Echoなどスマートデバイスを活用して音楽を生活シーンに溶け込ませることができる。時間帯や季節に合わせて気分が上がる音楽を自動で流してくれる上に音も良いとなれば、これまでにないQOLが実現されるだろう。
音楽カテゴリを選ぶスピーカーだが、その分フィットすると抜群の音を鳴らしてくれるalbos。どれもさほど変わらない音作りの中、ここまで攻めたことは高く評価したい。小編成かソロのアコースティック楽曲を持ってお店で試聴してみてほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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