アップルが独自に設計したMac向けのシステムオンチップ(SoC)「Apple M2」を搭載する、新しい13インチの「MacBook Pro」を6月24日に発売した。本機を1週間ほど使った筆者がおすすめしたいポイントを報告する。
新しいApple M2チップはApple M1をベースに、最新の5nmプロセスルールにより製造されるアップグレード版のSoCだ。アップルはM2チップをMacBookシリーズをはじめとするモバイルPC向けのチップとして位置付けている。今後はデスクトップスタイルのiMacやMac miniもM2チップを積んで順次アップグレードしていくのだろうか。またはその頃には、チップの性能がM2よりもすぐれているM1 Pro、M1 Maxがそれぞれ“M2世代”に進化を遂げて、iMacやMac miniに載るのかもしれない。
結果、M2搭載MacBook Proはシングルコアが「1918」、マルチコアは「8427」だったのに対して、M1搭載MacBook Airはシングルコアが「1733」、マルチコアは「7571」。念のため複数回計測してみたが、スコアはおおよそこの近辺の数値に落ち着いた。
新旧チップの処理性能の差は、Webブラウジングや動画・音楽の再生、デジタルカメラで撮影した写真の加工など比較的シンプルなタスクを行う分には体感に色濃く表れない。
ところが、iPhoneで撮影した4K/HDR動画をiMovieで10分間ほどのムービーに編集して、画質を優先した設定で書き出してみたところ、M1搭載MacBook AirはM2搭載MacBook Proに比べて、処理完了までにおよそ2倍の時間がかかった。
負荷の大きなタスクをこなそうとするほど、新しいM2チップの強みが発揮されるようだ。また、M2搭載MacBook Proには動画ファイルの処理に特化する「メディアエンジン」という回路が追加されていることも、動画処理の高速化に大きく貢献しているのだろう。
実際にはタスクの内容により消費される電力の規模は変わる。また1日の間にMacを使わず、休ませている時間帯もある。両方を鑑みたうえで、筆者が1週間と少しの間に新しいMacBook Proを使い込んでみた手応えを伝えると、前夜の寝る前にバッテリをフル充電にして、翌朝から夜までの間に残量40%前後になる感覚だ。
筆者はM1搭載MacBook Airをふだん使いのメインマシンにしている。MacBook Proは排熱システムに空冷ファンを採用しているので、使用時にファンノイズが発生しないのかも気になっていた。
M2搭載MacBook Proは、先述した容量が大きめな動画ファイルを書き出すテスト中もファンノイズが聞こえる瞬間がほとんどなかった。唯一、高精細な3D CGの再現性能の評価を含むベンチマークソフトを走らせた時にファンが回った。だが、そのノイズは静かな室内でなければ気が付かないほど小さな音量だった。
Touch Barには現在、macOS上でユーザーが作業を行うアクティブなアプリケーションと連動するメニューの一部が表示される。ミュージックアプリの再生コントロール、Excelのツールバーなどが、Touch Barの表示に直接タップやスワイプをして操作できる。この手軽さに一度慣れてしまうと、物理ファンクションキーによる操作が煩わしく感じられるかもしれない。
14インチ/16インチのMacBook ProがTouch Barを省略したが、新しい13インチのMacBook Proに引き継がれることを知って安堵した方も少なくないのでは。筆者はアップルが新しいMacBook ProにもTouch Barを残した理由は、きっと今後もMacBookシリーズに、あるいは他の新しいデバイスにこのユニークなユーザーインターフェースを残す意志があるからだと考えている。
13インチのMacBook ProはM2、M1モデルともに720p画質のFaceTime HDカメラを搭載している。スペック上は変化がないものの、M2チップには新しいISP(画像信号プロセッサ)が統合されていることから、カメラの映像をじっくりと比較してみると違いがある。今回の比較対象はM1搭載MacBook Airだが、新しいMacBook Proの方が色彩の再現力が高く、立体感のメリハリが効いている。新しいMacBook Proならば、外付け機器を足さなくてもオンラインミーティングの際、相手に好印象を与える映像が届けられる。
いま、MacBookやモバイルPCの買い換えを検討するのであれば、7月に発売を予定するM2搭載のMacBook Airも比較の対象になるだろう。MacBook Airが16万4800円から、MacBook Proは17万8800円からと、税込価格も近接している。
本体のデザインを一新したM2搭載MacBook Airは4色のカラバリや表示領域の広い13.6インチのLiquid Retinaディスプレイを特徴としている。細かなところでも電源ケーブルがマグネットにより安全に着脱できるMagSafe 3になっていたり、物欲をそそられるマシンだ。
このタイミングでTouch Barを搭載する新しいマシンを確保しておきたい方は、迷わず13インチのMacBook Proを選ぶべきだが、ほかの要素も検討しながら焦らずに、期待にマッチするMacBookを選びたい。(フリーライター・山本敦)
M1チップをアップグレードした新しいApple M2
アップルは2020年秋に独自設計による「Apple M1」チップを発表し、当時の新製品であるMacBook ProとMacBook Airに初めて搭載した。現在はM1チップの強化版である「M1 Pro」「M1 Max」「M1 Ultra」も開発され、それぞれのチップを載せた最新のMacがラインアップに勢揃いしている。新しいApple M2チップはApple M1をベースに、最新の5nmプロセスルールにより製造されるアップグレード版のSoCだ。アップルはM2チップをMacBookシリーズをはじめとするモバイルPC向けのチップとして位置付けている。今後はデスクトップスタイルのiMacやMac miniもM2チップを積んで順次アップグレードしていくのだろうか。またはその頃には、チップの性能がM2よりもすぐれているM1 Pro、M1 Maxがそれぞれ“M2世代”に進化を遂げて、iMacやMac miniに載るのかもしれない。
M2はどれだけ高性能? M1と処理性能を比較
M2チップの処理性能はどの程度高いのか。CPU性能をベンチマークソフトの「Geekbench 5」で比べた。M1チップを搭載するマシンの比較対象として、2020年モデルのMacBook Airを使っている。結果、M2搭載MacBook Proはシングルコアが「1918」、マルチコアは「8427」だったのに対して、M1搭載MacBook Airはシングルコアが「1733」、マルチコアは「7571」。念のため複数回計測してみたが、スコアはおおよそこの近辺の数値に落ち着いた。
新旧チップの処理性能の差は、Webブラウジングや動画・音楽の再生、デジタルカメラで撮影した写真の加工など比較的シンプルなタスクを行う分には体感に色濃く表れない。
ところが、iPhoneで撮影した4K/HDR動画をiMovieで10分間ほどのムービーに編集して、画質を優先した設定で書き出してみたところ、M1搭載MacBook AirはM2搭載MacBook Proに比べて、処理完了までにおよそ2倍の時間がかかった。
負荷の大きなタスクをこなそうとするほど、新しいM2チップの強みが発揮されるようだ。また、M2搭載MacBook Proには動画ファイルの処理に特化する「メディアエンジン」という回路が追加されていることも、動画処理の高速化に大きく貢献しているのだろう。
内蔵バッテリはスタミナ十分、静音設計も徹底
Apple M2は省電効率の高さも特徴とするチップだ。アップルが公開するMacBook Proのスペックシートには、内蔵バッテリによる連続駆動が最大20時間として記載されている。実際にはタスクの内容により消費される電力の規模は変わる。また1日の間にMacを使わず、休ませている時間帯もある。両方を鑑みたうえで、筆者が1週間と少しの間に新しいMacBook Proを使い込んでみた手応えを伝えると、前夜の寝る前にバッテリをフル充電にして、翌朝から夜までの間に残量40%前後になる感覚だ。
筆者はM1搭載MacBook Airをふだん使いのメインマシンにしている。MacBook Proは排熱システムに空冷ファンを採用しているので、使用時にファンノイズが発生しないのかも気になっていた。
M2搭載MacBook Proは、先述した容量が大きめな動画ファイルを書き出すテスト中もファンノイズが聞こえる瞬間がほとんどなかった。唯一、高精細な3D CGの再現性能の評価を含むベンチマークソフトを走らせた時にファンが回った。だが、そのノイズは静かな室内でなければ気が付かないほど小さな音量だった。
MacBook ProならではのTouch Barを継承した
新しい13インチのMacBook Proにも物理ファンクションキーに代わるユーザーインターフェースであるMagic Keyboardが搭載されている。高精細なカラー表示の有機ELタッチディスプレイ「Touch Bar」も引き続き採用された。Touch Barには現在、macOS上でユーザーが作業を行うアクティブなアプリケーションと連動するメニューの一部が表示される。ミュージックアプリの再生コントロール、Excelのツールバーなどが、Touch Barの表示に直接タップやスワイプをして操作できる。この手軽さに一度慣れてしまうと、物理ファンクションキーによる操作が煩わしく感じられるかもしれない。
14インチ/16インチのMacBook ProがTouch Barを省略したが、新しい13インチのMacBook Proに引き継がれることを知って安堵した方も少なくないのでは。筆者はアップルが新しいMacBook ProにもTouch Barを残した理由は、きっと今後もMacBookシリーズに、あるいは他の新しいデバイスにこのユニークなユーザーインターフェースを残す意志があるからだと考えている。
オンラインミーティングも快適になるカメラ性能
最近はモバイルPCをオンラインミーティングに使う機会が増えたので、パソコンを選ぶ際に「カメラの画質」にも注目してしまう。13インチのMacBook ProはM2、M1モデルともに720p画質のFaceTime HDカメラを搭載している。スペック上は変化がないものの、M2チップには新しいISP(画像信号プロセッサ)が統合されていることから、カメラの映像をじっくりと比較してみると違いがある。今回の比較対象はM1搭載MacBook Airだが、新しいMacBook Proの方が色彩の再現力が高く、立体感のメリハリが効いている。新しいMacBook Proならば、外付け機器を足さなくてもオンラインミーティングの際、相手に好印象を与える映像が届けられる。
いま、MacBookやモバイルPCの買い換えを検討するのであれば、7月に発売を予定するM2搭載のMacBook Airも比較の対象になるだろう。MacBook Airが16万4800円から、MacBook Proは17万8800円からと、税込価格も近接している。
本体のデザインを一新したM2搭載MacBook Airは4色のカラバリや表示領域の広い13.6インチのLiquid Retinaディスプレイを特徴としている。細かなところでも電源ケーブルがマグネットにより安全に着脱できるMagSafe 3になっていたり、物欲をそそられるマシンだ。
このタイミングでTouch Barを搭載する新しいマシンを確保しておきたい方は、迷わず13インチのMacBook Proを選ぶべきだが、ほかの要素も検討しながら焦らずに、期待にマッチするMacBookを選びたい。(フリーライター・山本敦)