【木村ヒデノリのTech Magic #111】 不調になって普通のありがたみを知る年齢になってきた。20代の頃は風邪をひいても、体に痛みがあっても少し我慢すれば良い程度だったが、30代も後半に入ってくると如実にパフォーマンスが落ちる。さらに残念なことに、不調になる回数まで増えてくるのだ。これは由々しき事態である。しかし逆に考えれば不調にならないように予防できればパフォーマンスがかなり上がるということ。こうした30代からの不調をマネジメントできるデバイスがあるとしたらどうだろう。Therabodyが開発した「Theragun(セラガン)」なら不調を改善するとともに予防することもできるのだ。
ここで注意してほしいのが、セラガン自体が「マッサージガン」という名称のツールではあるものの、これまで我々が捉えていた筋肉を緩めるだけのマッサージではないという点だ。これまでのマッサージは長時間振動を加えることで筋肉の緊張を解き、痛みなどを和らげるのみだが、セラガンはパワフルな縦運動で血流を増加させ、筋肉の奥の緊張まで減少させる。さらに毎分2400回(毎秒40回)という打撃速度もポイント。これが脳へ伝わる痛みの信号を上書きしてくれるので、手技よりも快適にケアができる仕組みだ。
「Massage reinvented」と呼ばれるこの手法は、文字通りこれまでのマッサージを再定義する画期的なもの。これが多くのアスリートにも支持される所以である。ただ振動を当てて気持ちが良いものとは一線を画しているので、ここは強調しておく。ではこうした体験はセラガンでしか実現できないのか? 答えはイエスだ。
セラガンのパーカッシブセラピーは振幅(深さ)・周波数(秒間回数)・トルク(強さ)の組み合わせで実現されている。16mmという大きな可動域で筋肉の深部まで力を伝え、毎分2400回、最大60ポンド(約27kg)という強さで失速することなく加圧が続けられることが条件。多くのマッサージガンはこれと比較し強さや深さが足りず、同様のケアが行えない。
筆者は安価なマッサージガンも試してみたが、その差は歴然。弱い刺激だと横振動のマッサージャーと同じような感覚しか得られないが、セラガンはしっかりと「押して」くれる印象だ。痛みを和らげるだけでなく、血流を増進して再生を促したり、筋肉を運動前に適した状態にしたりできるので、怪我の「予防」にもなるというのが他製品にない利点だろう。
上記が注目して見たい項目を抜粋したスペック表。Proはアームが可動式でバッテリーも取り外せる。アタッチメントも最初から多く付属するので、購入すれば基本的にどのようなシチュエーションにも対応できる。しかし重量が27kgと日本人にはやや重いのがデメリット。バッテリも別売の充電クレードルを利用すれば家庭では困らないので、この時点でProは選択肢から外れた。
ただこれは筆者が家庭ユースを前提にしたからで、スポーツをやっていて、頻繁なケアや長期の持ち出しをする場合には追加のバッテリがある方が充電切れを防げる。プロのアスリートはトレーナーがメンテしてくれることも多いと思うので、そうしたシチュエーションでは多彩なケアが可能なProが適しているだろう。
Eliteはヘッドが稼働せず、アタッチメントも一つ少ないが、アプリと連携しており、今回使わなかったPrimeにはない三つの内蔵プリセットも利用できる。アプリ連携すると、どういうシチュエーションでどうケアすれば最適か、当てる強さは合っているかなどをガイドしてくれるので初めての人でも適切な運用が可能だが、慣れてくるとアプリなしで使うことが増える。そうした際に内蔵プリセットがあれば本体だけでもよく使うケアができるので便利だ。
重量は変わらないのに、加圧はEliteの方が10ポンド(約5kg)も強く、音も全モデル中一番静かなので、EliteかPrimeで迷ったら確実にEliteを選びたい。妻も重さを気にせずに使えていたので、重量も問題ないと言えるだろう。
安いからといって侮らないでほしいのがmini。スペック表上は20ポンド(約9kg)とEliteの半分のパワーだが、これでも安価なマッサージガンとは比較できないほどパワフル。重さは見た目からすると案外重いと感じるかもしれないが、携帯製と機能性を考えればかなり優秀。ゴルフなどに携行して使うことで筋肉が緊張してくる後半でも怪我をしにくくできるし、持ち出す用途にはEliteより向いている。長距離運転で眠気が出たときは、SAなどでふくらはぎに当てると血流が上半身に戻って短時間で改善することができるなど、パワフルでコンパクトだからこそできることがある。
マッサージではない! 筋肉をアクティベートする構造
昨今のマッサージガンブームで知った方も多いと思うが、意外にもセラガンが考案されたのは13年も前の2009年だ。創設者であるジェイソン・ワースランド博士が2007年にバイク事故を起こし、その後のケアと回復トレーニングのために着手したのが製品開発の始まり。事故後に筋肉の衰えや神経の痛みを感じるようになった博士は、さまざまなトレーニング、治療を試みるも改善なし。施設での治療は手軽に行えないという点も気になった。これらを解決するため、持ち運べてセルフケアできる機器を開発しようと自ら研究を始めたのが誕生のきっかけとなっている。ここで注意してほしいのが、セラガン自体が「マッサージガン」という名称のツールではあるものの、これまで我々が捉えていた筋肉を緩めるだけのマッサージではないという点だ。これまでのマッサージは長時間振動を加えることで筋肉の緊張を解き、痛みなどを和らげるのみだが、セラガンはパワフルな縦運動で血流を増加させ、筋肉の奥の緊張まで減少させる。さらに毎分2400回(毎秒40回)という打撃速度もポイント。これが脳へ伝わる痛みの信号を上書きしてくれるので、手技よりも快適にケアができる仕組みだ。
「Massage reinvented」と呼ばれるこの手法は、文字通りこれまでのマッサージを再定義する画期的なもの。これが多くのアスリートにも支持される所以である。ただ振動を当てて気持ちが良いものとは一線を画しているので、ここは強調しておく。ではこうした体験はセラガンでしか実現できないのか? 答えはイエスだ。
セラガンのパーカッシブセラピーは振幅(深さ)・周波数(秒間回数)・トルク(強さ)の組み合わせで実現されている。16mmという大きな可動域で筋肉の深部まで力を伝え、毎分2400回、最大60ポンド(約27kg)という強さで失速することなく加圧が続けられることが条件。多くのマッサージガンはこれと比較し強さや深さが足りず、同様のケアが行えない。
筆者は安価なマッサージガンも試してみたが、その差は歴然。弱い刺激だと横振動のマッサージャーと同じような感覚しか得られないが、セラガンはしっかりと「押して」くれる印象だ。痛みを和らげるだけでなく、血流を増進して再生を促したり、筋肉を運動前に適した状態にしたりできるので、怪我の「予防」にもなるというのが他製品にない利点だろう。
3モデル3様の利点、シーンに合わせて二つ購入しても損はない
セラガンが他よりも実用度が高いことは分かったが、悩ましいのはモデル選びだ。セラガンは四つのモデルがあり、スペック表を見ただけではどれが用途に合うのか判断しづらい。そこで筆者は最上位モデルである「Pro」と、その下の「Elite」、最安価モデルの「mini」の3モデルを3か月使用し、実際にどれが良いのかの選定を行った。結論から言うと「Eliteとminiの2台持ち」が筆者の出した答え。miniは正直あまり期待していなかったが、これが意外なダークホースだった。上記が注目して見たい項目を抜粋したスペック表。Proはアームが可動式でバッテリーも取り外せる。アタッチメントも最初から多く付属するので、購入すれば基本的にどのようなシチュエーションにも対応できる。しかし重量が27kgと日本人にはやや重いのがデメリット。バッテリも別売の充電クレードルを利用すれば家庭では困らないので、この時点でProは選択肢から外れた。
ただこれは筆者が家庭ユースを前提にしたからで、スポーツをやっていて、頻繁なケアや長期の持ち出しをする場合には追加のバッテリがある方が充電切れを防げる。プロのアスリートはトレーナーがメンテしてくれることも多いと思うので、そうしたシチュエーションでは多彩なケアが可能なProが適しているだろう。
Eliteはヘッドが稼働せず、アタッチメントも一つ少ないが、アプリと連携しており、今回使わなかったPrimeにはない三つの内蔵プリセットも利用できる。アプリ連携すると、どういうシチュエーションでどうケアすれば最適か、当てる強さは合っているかなどをガイドしてくれるので初めての人でも適切な運用が可能だが、慣れてくるとアプリなしで使うことが増える。そうした際に内蔵プリセットがあれば本体だけでもよく使うケアができるので便利だ。
重量は変わらないのに、加圧はEliteの方が10ポンド(約5kg)も強く、音も全モデル中一番静かなので、EliteかPrimeで迷ったら確実にEliteを選びたい。妻も重さを気にせずに使えていたので、重量も問題ないと言えるだろう。
安いからといって侮らないでほしいのがmini。スペック表上は20ポンド(約9kg)とEliteの半分のパワーだが、これでも安価なマッサージガンとは比較できないほどパワフル。重さは見た目からすると案外重いと感じるかもしれないが、携帯製と機能性を考えればかなり優秀。ゴルフなどに携行して使うことで筋肉が緊張してくる後半でも怪我をしにくくできるし、持ち出す用途にはEliteより向いている。長距離運転で眠気が出たときは、SAなどでふくらはぎに当てると血流が上半身に戻って短時間で改善することができるなど、パワフルでコンパクトだからこそできることがある。