第3世代iPhone SEの実力は? 1週間使って分かった良い所・もの足りない所

レビュー

2022/03/22 18:30

 アップルが第3世代のiPhone SEを発売した。5G通信にも対応するiPhoneシリーズの入門機だ。本機を1週間ほど使って見えてきた良いところと、少し物足りなく感じるところをレポートしよう。

第3世代の「iPhone SE」は4.7インチのRetinaディスプレイ、
Touch IDを内蔵するホームボタンを継承した

片手持ち操作に最適なサイズ感。ホームボタンもやっぱり心地よい


 新しいiPhone SEは第2世代機から4.7インチのRetinaディスプレイを継承した。本体は片手で手軽に操作できるほどスリムでコンパクトだ。重さは第2世代のiPhone SEよりも4gほど軽い144g。筆者はふだん203gのiPhone 13 Proを使っているので、久しぶりにiPhone SEに触れると、ジャケットやバッグのポケットからスムーズに出し入れできる感覚がとても心地よく感じた。電車やバスに立って乗りながらでも、iPhoneを片手で持ってニュースの動画をチェックしたり、音楽を聴くことが苦にならないこのサイズ感が“ちょうどいい”のだ。
 
片手で軽快にハンドリングできるサイズ感が魅力的

 フロント面ボトム側にはTouch IDによる指紋認証センサー内蔵のホームボタンもある。Touch IDを搭載するiPhone SEは指紋認証により、画面のロック解除やApple Payによる支払いがすばやくできる。

 新しいiPhone SEの発売に頃合いを合わせて提供を開始したiOS 15.4以降から、Face IDを搭載するiPhoneの一部もマスクを着けたまま画面ロックの解除などができるようになった。でもやはり物理的なクリック感が得られるホームボタンとTouch IDの相性はすごく良い。操作がより直感的にできる。これから初めてのスマホとしてiPhoneを選ぶシニアの方に、今ならば新しいiPhone SEを筆者はすすめるだろう。
 
Face IDを搭載するiPhone 12シリーズ以降の機種も、
iOS 15.4以降からマスクを着けたまま画面ロックの解除ができるようになった

最新A15 Bionicチップ搭載でより賢く&バッテリが長持ち

 iPhone SEはハイエンドモデルのiPhone 13シリーズと同じ最新世代のA15 Bionicチップを搭載した。その恩恵はスマホとしてさまざまな使い勝手の良さに表れる。特に第2世代のiPhone SEに比べて操作感が速くスムーズになった。アプリの立ち上がりから動作までレスポンスが機敏に感じられる。グラフィックスの緻密なゲームアプリの動作も引っかかりがなく滑らか。とても安定している。
 
iPhone SEもまたiPhone 13シリーズと同じA15 Bionicチップを搭載している

 もうひとつ、新しいiPhone SEは5G対応になったのにバッテリの持ちが第2世代のiPhone SEよりも改善されている。この点はA15 Bionicが駆動効率の良いチップであることにも起因する。

 5G対応のiPhoneには、モバイルデータ通信時にバッテリの消費を抑えるスマートデータモードという機能がある。5G通信時には4Gに比べてより多くの情報を処理するため、一般にスマートフォンのバッテリーに高い負荷がかかるとされている。

 iPhoneは設定から「モバイル通信」に入り、モバイル通信プランの「音声通話とデータ」から「5Gオート」を選ぶとスマートデータモードがオンになる。5Gエリア内で高速・大容量通信のメリットが得られていない場合に、自動的に4G LTE通信に切り替えてバッテリーの消費を抑えるのだが、この機能をA15 Bionicが賢く制御する。
 
モバイル通信設定からデフォルトの「5Gオート」を選択すると、5Gの接続が
ベストパフォーマンスを発揮できない場所で自動的に4G LTEに切り換えて消費電力を抑える

 筆者もiPhone SEを1週間ほど使ってみて、バッテリの持ちの良さを実感した。試用を開始してから最初の数日間はあえて動画を見たり、時間をかけてゲームをプレイしてみた。就寝前に100%まで充電したバッテリが、起床頃には95%になり、そのまま使い続けて夜の22時ごろに残量20%前後を迎える。その後はいつも通りの使い方をしてみたところ、同じ夜の時間帯までもう少し多くバッテリが持ち堪えた。新しいiPhone SEは「1日じゅう持続するバッテリ性能を実現した」と言って良いだろう。

物足りなさを感じた3つのポイント

 新しいiPhone SEに若干の物足りなさを感じた点も伝えたい。ひとつは「画面の広さ」だ。iPhone 13シリーズをはじめ、昨今のスマホは6インチ前後の大画面サイズがトレンドだ。ディスプレイ周辺のベゼル(縁)を狭くして、フロント側全体にディスプレイを広く展開するオールスクリーンデザインも主流になった。

 ところがiPhone SEのようにディスプレイの上下に少し幅広なベゼルがあると、特に動画再生やゲーム、電子書籍を読む時などにディスプレイが手狭に感じられて、コンテンツへの没入感が損なわれる気がしてしまう。5.4インチのオールスクリーンデザインを採用する5G対応のiPhone 13 miniが、コンテンツ視聴の没入感では勝ると思う。
 
オールスクリーンデザインに慣れてしまうとiPhone SEのディスプレイが狭く感じられてしまう

 メインカメラは、新しいiPhone SEが強力なISP(画像信号プロセッサ)を統合するA15 Bionicチップを載せたことで、その写真・動画の撮影性能が飛躍を遂げた。特に写真撮影時には一度のシャッター操作で複数の画像を保存して、解像度や明るさ・色合いのバランスを最適化したショットを残せるコンピュテーショナルフォトグラフィの性能が向上している。

 iPhone SEにはスマートHDR 4やDeep Fusionなど、iPhone 13も搭載するコンピュテーショナルフォトグラフィのテクノロジーが惜しげもなく投入された。ユーザーは面倒なカメラの設定をしなくても、シャッター操作だけで高品位な写真・動画が撮れる。

 カメラについては一点、iPhone 13シリーズが搭載する「ナイトモード」がiPhone SEにも欲しかった。ナイトモードは暗い場所で明るくきれいな写真を簡単に撮るための機能だ。少し暗めな場所でiPhone 13と新しいiPhone SEによる写真の出来映えを比べてみた。iPhone SEの写真も遜色ないのだが、やはりiPhone 13の写真の方がより明るく高精細な印象を受ける。もし写真・動画のクオリティにこだわるのであれば、iPhone 13/iPhone 13 Proシリーズを選ぶことも視野に入れたい。
 
iPhone SEで撮影。
けっこう暗い場所で撮影した写真だが、なんとか色合いを残したまま撮れる。

 iPhone 12シリーズ以降に誕生したアップル独自のMagSafeアクセサリーが、新しいiPhone SEに対応しないことも残念だ。ただ一方でiPhone SEは2016年に発売されたiPhone 7と筐体のデザイン、サイズがほぼ変わっていないため、当時からのアクセサリーが流用できる場合がある。第2世代のiPhone SE向けに発売されているアクセサリーはそのまま使える。すでに数多くのアクセサリーが出揃っていることを考えれば不便はない。
 
アップル純正のMagSafe充電器。iPhone SEでもワイヤレス充電はできるが、
マグネットが吸着しないので取り回しは注意が必要

国内の5G普及にiPhone SEが弾みを付けそう

 新しいiPhone SEは「長く使えるスマホ」として、二つの魅力的なポイントを備えた。まずiPhone 13シリーズも本体背面にも共通する最新の強化ガラスが、iPhone SEは背面と前面のカバーガラスとして採用されたことだ。ガラスは擦りキズに強く、美しい外観が長く保てるだろう。次に最新のA15 Bionicチップを搭載していること。今後アップルが無料で提供するiOSのソフトウェアアップデートにこの先も長く対応する期待が持てる。

 コストパフォーマンスの高い5G対応スマホとして、第3世代のiPhone SEは多くの人にすすめられるし、発売後も長く関心を集めそうだ。社員のための携帯端末としてiPhone SEを支給する企業も少なくない。今後個人・法人に第3世代のiPhone SEが広く行き渡れば、同時に日本国内での5G普及拡大に弾みも付くと思う。(フリーライター・山本敦)