少し不便くらいがちょうど良い! 超コンパクト中判デジカメ「Hasselblad 907X」の満足度が120%だった
【木村ヒデノリのTech Magic #094】 ここ数年、ミラーレス一眼はすっかり一般のものになった。筆者が動画も撮れる一眼の走りであるキヤノンの「EOS 5D MarkII」を買ったのはもう10年以上前。当時レンズを変えられるタイプのカメラを持っているのはプロと一部のハイアマチュアだけだったが、今は少し写真に興味がある人でもミラーレス一眼と複数レンズを持っている時代だ。
筆者も「EOS R5」に乗り換え、業務はもとより日常のスナップを楽しんでいたが、高機能になればなるほど1枚の価値が下がるような感覚に襲われた。最近ハイアマチュアの間でLeicaのような少し不便だが高品質なカメラが注目されているのもこうした理由からかもしれない。常に最新のものを求めてきた自分にもこういう時期が来るのかと不思議だったが、少し不便なカメラに変わった後の方が断然良かったので皆さんにも共有したい。
ボタン類が少なく、ほとんどの操作を画面タッチで行わなければならないほか、EVFも非搭載のためもちろん操作性は劣る。しかしそこを超える利便性がこのコンパクトさにはある。画面を起こしてウエストレベルファインダーのように上から覗き込んで撮れる体験も良いし、何より軽いから普段より持ち出すようになったのだ。
EOS R5もレンズさえ選べばコンパクトなのだが、こちらは高性能過ぎてどうしても撮る枚数が増えてしまう。ピント合わせの精度や速さが段違いに良いのも考えものだ。一方、907Xのオートフォーカスは遅いし精度も良くない。結果的に画面で拡大してマニュアルで合わせてから撮るのだが、完全にフォーカスが合っている状態で撮れた1枚は極上になる。マニュアル合わせなので必然的にシャッターを1回切るまでのリズムが遅めになり、多くは取れない。慎重に撮るがために1枚1枚の価値が上がるというわけだ。こうなると俄然、持ち出して撮りたくなる。EOS R5ほど高性能ではないが、抜群の体験を生み出してくれるカメラ、それが907Xだった。
特にバッテリーの持ちは特筆すべきもので、体感ではX1DIIの2.5倍ほど長く感じられる。X1DIIを旅行先で持ち歩くときは、3本はバッテリが必要でそれでも1日持たない時があったが、907Xは1本あれば1日の撮影には十分事足りる。EOS R5でも2本は持ち歩かないと心配なときがあるのでこの点は非常に優秀だろう。
フォーカシングポイントはEOS R5のように自在に動くわけではなく、何点かの中から選ぶようになるが、これもマニュアルフォーカス中心に使っていれば気にならない。アシストを使うとフォーカスリングを回すだけで100%に拡大してくれるため、画面をタップする必要もなくなりすこぶる快適だ。撮影した画像も快適にスライドや拡大ができるようになったので撮影後の確認もEOS R5などと同様の操作感で行える。こうした最新ミラーレスでは当たり前の操作感が、スタジオ用途で開発されていた中判デジタルでは意外と実現できていなかったのでうれしい。
これによって同じ中判センサーでオールドレンズを楽しむことも可能。特に複雑な設定は必要なく、装着するだけで撮れる点も魅力だ(※機種や個体によっては機種名選択やフォーカス調整に出す必要がある)。
ただ、高感度には弱い点は注意が必要。カラーノイズが顕著になるため基本的にISO400までしか使えないと思っておいた方が良い。ストロボ撮影などは問題ないが、日が落ちてきたら一脚や三脚は必須なのが唯一の弱点かもしれない。
良い点をお伝えするだけでここまで長くなるほど魅力満載の907X。今回は最後に作例を1枚だけ載せておくが、少し間をあけて今度は作例や現像、ダイナミックレンジの広さ、チルトシフトを使わずに被写界深度の深い商品撮影ができる機能などをお伝えできればと思う。EOS R5を持ち出すことがなくなるほど実用性に富んだ中判デジタル907X。高額だがLeicaよりやや安めなのと拡張性を考えると一考の余地ありだ。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。(動画配信時期は記事掲載と前後する可能性があります)
筆者も「EOS R5」に乗り換え、業務はもとより日常のスナップを楽しんでいたが、高機能になればなるほど1枚の価値が下がるような感覚に襲われた。最近ハイアマチュアの間でLeicaのような少し不便だが高品質なカメラが注目されているのもこうした理由からかもしれない。常に最新のものを求めてきた自分にもこういう時期が来るのかと不思議だったが、少し不便なカメラに変わった後の方が断然良かったので皆さんにも共有したい。
最小の中盤デジタルはX1Dとは違った良さがある
以前紹介したX1DIIは当時としては異例のコンパクトさを誇っていたが、今回の907Xはそれよりさらに小さい。写真はXCDレンズの中でも最軽量となる320gの4/45Pを装着しているが、X1DIIに同じレンズを装着した写真と比べるとその本体の小ささが際立つ。これでセンサーサイズは中判というのだから驚きだ。ボタン類が少なく、ほとんどの操作を画面タッチで行わなければならないほか、EVFも非搭載のためもちろん操作性は劣る。しかしそこを超える利便性がこのコンパクトさにはある。画面を起こしてウエストレベルファインダーのように上から覗き込んで撮れる体験も良いし、何より軽いから普段より持ち出すようになったのだ。
EOS R5もレンズさえ選べばコンパクトなのだが、こちらは高性能過ぎてどうしても撮る枚数が増えてしまう。ピント合わせの精度や速さが段違いに良いのも考えものだ。一方、907Xのオートフォーカスは遅いし精度も良くない。結果的に画面で拡大してマニュアルで合わせてから撮るのだが、完全にフォーカスが合っている状態で撮れた1枚は極上になる。マニュアル合わせなので必然的にシャッターを1回切るまでのリズムが遅めになり、多くは取れない。慎重に撮るがために1枚1枚の価値が上がるというわけだ。こうなると俄然、持ち出して撮りたくなる。EOS R5ほど高性能ではないが、抜群の体験を生み出してくれるカメラ、それが907Xだった。
X1DIIで気になっていた部分も改善され万全の仕様に
実用性という面でもさまざまな改善が見られる。X1DIIではEOS R5に比べて画質は良かったものの、前述した重量やバッテリーの消耗、タッチスクリーンのもたつきなどが気になっていた。907Xではこれらが全て解消されているのも好感が持てる。特にバッテリーの持ちは特筆すべきもので、体感ではX1DIIの2.5倍ほど長く感じられる。X1DIIを旅行先で持ち歩くときは、3本はバッテリが必要でそれでも1日持たない時があったが、907Xは1本あれば1日の撮影には十分事足りる。EOS R5でも2本は持ち歩かないと心配なときがあるのでこの点は非常に優秀だろう。
フォーカシングポイントはEOS R5のように自在に動くわけではなく、何点かの中から選ぶようになるが、これもマニュアルフォーカス中心に使っていれば気にならない。アシストを使うとフォーカスリングを回すだけで100%に拡大してくれるため、画面をタップする必要もなくなりすこぶる快適だ。撮影した画像も快適にスライドや拡大ができるようになったので撮影後の確認もEOS R5などと同様の操作感で行える。こうした最新ミラーレスでは当たり前の操作感が、スタジオ用途で開発されていた中判デジタルでは意外と実現できていなかったのでうれしい。
拡張性の高さもすばらしい、課題はISO感度か
ここまで非の打ちどころのない907Xなのだが、さらに良い点がある。それは拡張性の高さだ。まず907Xの状態でさらに操作性を上げるためにグリップを追加することが可能。さらにセンサー部は取り外してそのまま500Cなどに取り付けることでデジタルバックとして活用できるのだ。これによって同じ中判センサーでオールドレンズを楽しむことも可能。特に複雑な設定は必要なく、装着するだけで撮れる点も魅力だ(※機種や個体によっては機種名選択やフォーカス調整に出す必要がある)。
ただ、高感度には弱い点は注意が必要。カラーノイズが顕著になるため基本的にISO400までしか使えないと思っておいた方が良い。ストロボ撮影などは問題ないが、日が落ちてきたら一脚や三脚は必須なのが唯一の弱点かもしれない。
良い点をお伝えするだけでここまで長くなるほど魅力満載の907X。今回は最後に作例を1枚だけ載せておくが、少し間をあけて今度は作例や現像、ダイナミックレンジの広さ、チルトシフトを使わずに被写界深度の深い商品撮影ができる機能などをお伝えできればと思う。EOS R5を持ち出すことがなくなるほど実用性に富んだ中判デジタル907X。高額だがLeicaよりやや安めなのと拡張性を考えると一考の余地ありだ。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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