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伝統を融合した“着られるガジェットポーチ”を作ってみた! IoTマスターの筆者が広島の老舗とコラボ

レビュー

2022/02/19 17:00

【木村ヒデノリのTech Magic #093】 今回はいつもと一風違うレビューをお届けしたい。普段はさまざなガジェットを“使う側”である筆者だが、実は昨年末から“作る側”として広島の老舗染物店とコラボ製品を開発していた。ミッションは「ものづくりの街、福山市の技術を世界へ売り出す」こと。福山市は糸や生地、染色、縫製など様々な工房が集まる街。アメリカのシリコンバレーさながら、この地域でしか実現できない製品や開発プロセスがある。

 これらを活かし、今回のプロジェクトも1か月でプロトタイプ完成、2か月で製品化してクラウドファンディングにローンチと驚異的なスピード感で進んでいった。筆者の役割は製品のプロデュースから、プロモーションまでと幅広く、プレッシャーも大きかったが、コンセプトの設定から細部に渡るまで自信を持っておすすめできるものに仕上がった。

 自分の製品の紹介となれば甘くなるのではないかという読者もおられるかと思うが、そこはしっかりとメリット・デメリット双方紹介していくので安心していただきたい。日本伝統の所作がどのようにリメイクされ、ガジェットポーチになっているかを見てみてほしい。
 
着られるガジェットポーチ「ORIGAMI」、
現在Kickstarterで販売中

(https://www.kickstarter.com/projects/iwaseshoten/origami-wearable-gadget-pouch-born-from-tradition)
普段からガジェットともに持ち歩き、
肌寒くなったら着ることができる
オーガナイザーは単体で取り出して
立てられるので、作業の時も便利

袖から出し入れできる「着られるガジェットポーチ」

 今回コラボした岩瀬商店は大正から続く老舗染物店だ。岩瀬商店は以前からbon.というアパレルブランドを展開しており、これを海外のユーザーにも知ってもらうというのが今回のミッション。元々和風なプロダクトが多いbon.だが、海外で受け入れてもらうにはもう一工夫必要だというのが第一印象だった。
 
作務衣やポンチョなど和風の
アイテムを揃えるこれまでのbon.
現在は和モダンな社屋の岩瀬商店、
染物体験ができる「ソメラボ」も併設している

 海外で売られる多くの和物製品は「見た目」を売っている。確かに外国人から見れば和服のシルエットだけでも魅力だったのかもしれないが、海外でもそれらが珍しくなくなりつつある昨今、「和風=Cool!」で売るのはナンセンスだ。そこで“ORIGAMI”では「和物でなければ出せない価値」を念頭に、和服だからこそこうした機能性を実現できた、といえる製品を目指した。
 
袖から出し入れする所作は日本独自のもの

 和服を着た時の動きで注目したのは「袖からものを出し入れする」という所作。これは和服にしかない動作で、物を持ち運びやすい利点もある。この特徴を利用し、ガジェットポーチに仕立てたのが“ORIGAMI”だ。従来のガジェットポーチは収納としての機能しかなかったが、ORIGAMIはガジェットを入れたまま寒くなったら羽織ることができる。さらに収納されているガジェットは着た状態では左袖の奥にくるため袖から出し入れすることも可能。また、内部の構造を工夫することで、重みが過度に左側に偏ることも防いでいる。
着るときは左サイドにポーチ部分がくる。
ポーチへは左袖からアクセス可能

 ポケットに入れるのが難しい大きめのモバイルバッテリーなども入れられるので、ケーブルを左袖から出して充電しながら使うことができるなど、かなり便利だ。

折り紙の発想で折り畳みのしやすさも追求、生地も高性能

 服を持ち運ぶとなると懸念点となるのが畳む時の煩雑さだが、ORIGAMIはこの点も日本的な発想で解決している。ORIGAMIは形状が正方形に縫製されており、袖にある赤い印を持って左右に引くと一瞬で長方形になるのだ。あとはこれを横に畳んでいくだけで綺麗に収納ができる。この正方形をモチーフとしている点がORIGAMIというネーミングの由来となった。
 
正方形を元にした構造で畳みやすさも抜群
日本人は少し大きめに感じるかもしれないが、
ガジェットと服を持ち運ぶと考えるとコンパクトだ

 生地自体もその薄さから想像できないほど高性能だ。縦糸にのみ割繊糸という糸を使うことでスエードのような高級感と軽量性、透湿防水性、保温性を実現している。下の図は気温12度の屋外で実験した物だが、ORIGAMIを羽織るだけでかなり保温されているのがわかる。
 
開始時よりもかなり温まっているのが
サーモグラフィからわかる

 雨の中でも前述した透湿防水性により、蒸れずに快適に過ごすことが可能。日本国内でも梅雨時やキャンプ、登山など天候が変わりやすいシチュエーションにおいても活躍すること間違いなしだ。
 
布自体に撥水性があるので、携行している
ガジェットも安心。天候が不安定なキャンプや
登山でも重宝するだろう

現時点で最高の一品、第2弾があるなら突き詰めたい点も

 ORIGAMIは間違いなく現状できる最高の和服と実用の融合プロダクトと自信を持って言える。しかし、もし第2弾があるのであればこだわりたいのが、シルエットだ。現状のシルエットも気に入っているが、初代を元にすれば二代目はよりスタイリッシュにできるかもしれない。また、布の機能性をさらに追求したい欲求もある。例えば、防火性能もあれば焚き火周りでも使えるし、さらに高い保温性があれば真冬の防寒着としても使ってもらえる。また、たたみ方についてもさらなる工夫ができるかもしれない。これらの点は今後もし継続的に製品を開発していけるのであればブラッシュアップしていきたいと思っている。

 12月にスタートしたプロジェクトの試作品を1か月で仕上げ、2月頭にKickstarterにローンチできたのはひとえに広島県福山市という街がもつポテンシャルだと思う。ものづくりのプロが集まったこの街だからこそ、小回りの効く対応で短期間にも関わらずこの完成度に仕上げることができた。
 
ORIGAMIのパーツである木環は手作業で仕上げられ、
縫製も国内でおこなっている。こうした工房が福山市内に
集中していることでクオリティが担保されている
アメリカをはじめ、ニュージーランド、ポーランド、
ポルトガルなど世界各国のバッカーが購入してくれている

 Kickstarterでは1日で目標金額をクリアし、さらに多くの方に購入いただけているのはうれしい限りだ。第1弾のORIGAMIを皮切りに、同様のプロジェクトとして読者がよく知るであろうインフルエンサーとのコラボによる第2弾、第3弾も進んでいるので今後に期待してほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)

■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。(動画配信時期は記事掲載と前後する可能性があります)