スマホでVRの常識を変える! 8Kも体験できる「Xperia View」の魅力を検証

【木村ヒデノリのTech Magic #087】 2022年はVRヘッドセットがより身近になりそうだ。昨年末に発表されたソニーのXperia用ビジュアルヘッドセット「Xperia View」はかなりの完成度で、こうした未来を予感させてくれる。これまでのビジュアルヘッドセット(映像ディスプレイ機能のないヘッドセット)と言えば、簡易的なものが多く使いづらいという印象だった。対してXperia Viewはアプリとの統合性も高く、視野角も広い。現状コンテンツこそ少ないが、使用感はOculusなどと同等といっても良いレベルのものだった。ビジュアルヘッドセットとはいえ侮れないXperia Viewの性能を紹介したい。
 

「Xperia View」は「Xperia1 II」「Xperia1 III」をセットすることでHMDとして使える

視野角が広く酔いにくい、Xperiaの解像度を活かした構造

 まず最初に目を引くのは新しい構造のレンズだ。通常HMDといえば覗く窓の部分にだけレンズが入っており、視野角が狭い。したがって視野と平衡感覚によって成り立つ空間識が崩れやすく、VR酔いしてしまう人が多かった。最近のHMDは遅延もほとんどないため酔いづらい機構になってはいるが、それでも苦手という人は多いだろう。
 
中央部は非球面、その周りはフレネルレンズになっており圧倒的に広い視野角を実現

 その点、Xperia Viewは従来の非球面レンズとフレネルレンズを一体化した構造を採用したことで対角120度という広い視野角を実現。覗いている部分の周りのフレネルレンズ部分も視野としてコンテンツが見えるため、酔いづらい構造になっている。ディスプレイが大きいXperia1 II・IIIが誇る21:9シネマワイドディスプレイの強みを活かした構造で、単にスマホを使えばVRを体験できるという枠を超え、実用性を追求している点には好感が持てた。
 
Xperia1 II・IIIはiPhone 12 Proと比べると横幅がかなり長く、その分表示できるコンテンツも大きい

コントローラー無しでも快適操作、作り込まれたアプリも好印象

 次に気になるのは操作感だ。スマホを利用するヘッドセットは技術的にVRが楽しめてもコンテンツを切り替えるなどの操作は煩雑になりがちだった。この点もXperia Viewではきっちりと作り込まれている。専用アプリを使うことで、顔を向けた方向で選択、シャッターボタンで決定などスマホを取り外すことなく操作ができて快適だ。

 また、スマホを持っている状態で同アプリを使うとゴーグル無しでも視聴ができる。スマホの近接センサーを利用してゴーグルに装着されたときだけ2眼視聴表示になるという仕組みだ。こうしたUIも単にお試しとしてVRを使う用途を超えており実用的。普段はスマホ、VRコンテンツを楽しみたいときはHMDと1台2役で使うことができるので、今までVRに興味がなかった人にも裾野が広がるだろう。
 
スマホを装着してもシャッターボタンなどは露出し操作できる構造になっている

 もっと操作性にこだわりたいという人はPlayStationのコントローラーをペアリングして使うという方法もある。手軽さはなくなってしまうが、長時間さまざまなコンテンツは切り替えて楽しみたい場合や、風景のVRを使って旅をしたい場合などには向いているかもしれない。
 
対応している360Channelでは刀剣VRコンテンツなど一風変わったものも配信されている

8K HDRを楽しめるのはスマホ利用ならではの良さ

 専用機との差別化にスマホの高解像度ディスプレイを活用しているのも良い。通常のビジュアルヘッドセットでは専用機の廉価版という印象が否めないが、Xperia Viewは解像度だけで見ても専用機を超える価値を打ち出している。最大解像度は8K(7680×4320ドット)、BT.2020の色域、HDR規格にも対応しているため、選択肢としてOculusなどの専用機の対抗馬としても十分考えられるスペックだ。
 
Xperia1を使う「意味」がある提案は素晴らしい

 専用アプリでは360度モードのほかに180度モードも選べるので、視差による奥行きも体験できるようになっている。残念ながら内蔵のコンテンツの提供はなかったが、新しく発売されたキヤノンの2眼VRレンズなどで撮影したコンテンツを読み込めば奥行きのある高解像度映像が楽しめるかもしれない。
 
キヤノンの新型レンズでは高品質な180度VR動画の撮影が可能。2022年は高品質なVRコンテンツも多くなるだろう

 また、Xperia Viewは今後の高解像度化に段階的に対応できるという点も良い。今後さらに高精細なディスプレイがXperia1シリーズに搭載されれば、その恩恵を受けることが可能。スマホを買い替えるだけでHMDの品質も上げられる点は1台2役の良さだと言えるだろう。

懸念点は価格の高さか、今後の解像度アップにも期待したい

 視野角の広いレンズは素晴らしいし、UI・UXも申し分ない。公式には専用アプリのみの対応でYouTubeなどに非対応としているが、操作が面倒なだけで、実際はYouTube上のVRコンテンツも視聴できる。専用アプリにフォーカスすることで前述した通り操作感がかなりよくなっているし、完成度も高い。気になるのは価格だ。ディスプレイを内蔵しないビジュアルヘッドセットという立ち位置にもかかわらず、Xperia Viewの価格は2万9800円とかなり高額。専用機のOculus Quest2が3万円弱ということを考えても購入を躊躇してしまう価格設定だ。Xperia1の付属品とまではいかないものの、同時購入で9800円程度であれば購入しやすいので、今後の展開に期待したい。

 またディスプレイが8Kに対応しているとはいえ、ドットが見えなくなるほどではない。VRにおいてこのドットが見えるか見えないかはUXに非常に大きく影響する要素である。この点はぜひディスプレイ性能をアップデートしていけるアドバンテージを活かして次期Xperia1でのさらなるアップデートを期待したい。

 取り急ぎ筆者はCanon RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEを手に入れたので、これで高品質な180度VRを撮影して試してみたいと思う。特に視野角の面で今後のHMDに影響を与えそうで、継続的なサポートを期待したい製品だった。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
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