シリカゲルで蘇れ! ジャンクでノイズまみれの高級?コンデンサーマイク

レビュー

2021/11/28 18:30

 ジャンクのマイクを買った。行きつけのオーディオショップで2000円。金属製の立派なケースに入ったコンデンサーマイクだ。ケースはビニールのフィルムでぐるぐる巻き。ジャンクだからという理由で、購入前に中身の確認はできないという。箱についていたラベルによると、メーカーはiSK、型番はBM-5200。スマートフォンで調べてみたが、ネット上にはほとんど情報がない。どんな形状の製品でどんな状態なのか、そもそも動くのかどうかも不明。しかし、値段が値段ということもあり、福袋感覚で買ってみることにした。

2000円で購入したジャンクのコンデンサーマイク。
立派なケースを開けるとほぼ新品のようにきれいな本体と付属品が入っていた

 買って帰り、箱を開けると予想に反してとてもきれいな状態のマイク本体に、風防とショックマウント、データシートが入っていた。見た目は新品のようなコンディションだ。接続は標準的なXLR。本体には指向性切り替えスイッチ、低音をカットするローカットスイッチ、大きな音にも対応できるPADスイッチがついており、どうやらブランド内ではミドルクラス以上の製品のような感じだ。データシートによると、マイクユニットに1.1インチのいわゆるラージダイヤフラムを採用しており、だいたい2万円前後の製品ではないかと思う。製品の情報はほとんどなかったが、メーカーのWebサイトはすぐに見つかった。正しいメーカー名はiSK Pro Audio。サイトによると中国のOEM製造メーカーで、欧米の有名ブランドからマイクやヘッドホンなどの製造を請け負っているという。どうやら知る人ぞ知るメーカーのようだ。

 もしかすると格安でいいものが手に入ったかもしれない。とはいえ所詮ジャンク品。立派なのはガワだけで実際は動かない可能性も高い。恐る恐るオーディオインターフェイスに接続し、PCでテスト収録してみた。すると、あっけなく音が録れた。なんだ。ちゃんと動くじゃないか。各スイッチもしっかり動作する。しかもなかなかいい音だ。コンデンサーマイク風の味付けがややきつい感じだが、きらびやかな音色は嫌いじゃない。低音の深みもそこそこあっていい感じだ。用途といえば、普段はオンライン会議用のマイクとして使うぐらいだが、2000円なら安いもんだ。早速常用マイクとして使うことにした。

 ところが、2~3日使っていると、ひどいノイズが乗るようになった。何も話していなくても、レベルメーターがピコピコ動き、ボワボワと音がする。ジャンクとして売っていた理由がわかった気がした。結局、2000円で役に立たないマイクと立派なケース、風防、ショックマウントを手に入れたようなものだ。ケースもショックマウントも買えば結構な値段がするものだし、よしとするか。一旦は自分を納得させたが、なんだか悔しい。分解して修理できないか見てみることにした。ところどころ基板のハンダが欠けているような部分も見られたため、ハンダを付けなおしたりしてみたが、ノイズが出る状態は変わらなかった。

 素人修理は限界だ。もうあきらめるしかないのだが、最初はいい音で録れていただけに、やっぱり悔しい。なんとかならないものか。そこで、コンデンサーマイクのトラブルについて、改めてネットで情報をあさってみた。すると、湿気にさらされるとノイズが乗ることがあるという情報を発見。確かに、コンデンサーマイクは湿気やショックに弱いとは聞いていた。あるサイトでは、遠くからドライヤーの風で乾かすこともあるという話も見つけた。もしやと思いで真似してみたが、効果はなかった。もう一つ、乾燥材を入れて密閉するといいという情報もあった。確かにコンデンサーマイクを買うとシリカゲル入りの袋に密閉されていることが多い。
 
冷凍保に使うチャック付きの袋にマイクを入れ、1gのシリカゲル袋を5個投入して放置。
するとあら不思議、すっかりノイズはなくなってきれいなサウンドが蘇った

 ダメもとでシリカゲル作戦をやってみることにした。ホームセンターでシリカゲル1gの小袋が50個入ったセットと、冷凍保存用のジップロックもどきのチャック付き袋を買ってきた。袋にマイクとシリカゲルの小袋を入れ、密閉する。あまり乾燥させすぎるのもよくないようで、マイクを保存する際は小袋1個ぐらいがちょうどいいようだ。しかしこいつはノイズまみれのジャンクマイク。一気に5個投入し、箱に詰めてしばらく様子を見ることにした。放置すること3日。まあダメだろうとは思いつつ、ものは試しと使ってみた。するとびっくり。ボワボワという煩わしいノイズはきれいさっぱり消え、当初のきらびやかなサウンドが戻ってきた。ノイズの原因は湿気だったのだ。

 ネット会議はもとより、宅録に動画配信、ポッドキャスティングとマイクを使う機会は増えた。いい音を求めてせっかく手に入れたコンデンサーマイクに変なノイズが乗るようになったら、ぜひ数百円でできるシリカゲル作戦を試してみてほしい。(BCN・道越一郎)