スマートフォンはずっとAndroid派だったが、小型のスマートフォンが欲しくてiPhone 12 miniを買ってみた。手の小さい筆者にはぴったりのサイズで快適に利用できているものの、今まで使っていたメディアストリーミング端末「Fire TV Stick 4K」との相性がどうにもよくなく、iPhoneで見ていた動画を大型画面に映すといった連携がうまくいかない。そこで思いきって5月に発売したアップルの「Apple TV 4K」に乗り換えることにした。
本記事では、過去に使ったことのあるFire TV Stick 4KやChromecastとの比較も交えながらApple TVに初めて触れた筆者が感じたことを率直に述べる。
Apple TV 4Kを試してみた
そもそもApple TV 4Kとは?
Apple TV 4Kはメディアストリーミング端末に属するデバイスだ。メディアストリーミング端末はテレビやディスプレイのHDMI端子に接続し、Wi-Fi経由で動画やゲームなどの各種コンテンツを出力できるのが特徴(Apple TVは有線LAN接続にも対応)。また、PCやスマートフォンとの連携も可能だ。
AmazonのFire TV Stickや、GoogleのChromecastもApple TV 4Kと同種のデバイスだ。価格競争力はこの2つのモデルのほうが強く、最新モデルのFire TV Stick 4Kが6980円、Chromecast with Google TVが7600円なのに対し、Apple TV 4Kは2万1800円(32GBモデル)とおおよそ3倍近く高い。評価のポイントは、その価格差分の価値を実感できるかどうかだ。
メリット(1) リモコンの操作性と軽快な動作
Apple TV 4Kのメリットから見ていこう。メディアストリーンミング端末は、基本的に付属のリモコンで操作する。Apple TVは、このリモコンの質感、そして操作性が秀逸だ。
Apple TV 4Kのリモコン「Siri Remote(第2世代)」は、Appleらしいアルミ削り出しのボディを採用。プラスチックでできたリモコンと違い、ひんやりとした高級感のある手触りが心地よい。
Fire TV Stick 4Kでは、ボタンを連打して早送りし、ちょうどよさそうなところで決定ボタンを押して止める……といった流れで操作していた。適切な位置から再生するのが難しく、少なからずストレスを感じていた。一方のSiri Remoteでは、左右スワイプでより直感的に操作でき、隣のアプリを選ぶといった細かな操作をしたいときはクリックパッド外縁部のボタンを押せばよい。2つの操作方法をミックスして使えるわけだ。このあたりのUIの作り込みに、Appleらしさを体感した。
Apple TV 4K最大の特徴といっても過言ではないリモコン・Siri Remote
メリット(2) Apple製品同士の連携がスムーズ
当然といえば当然だが、Apple製品同士の連携もスムーズだ。
iPhoneで見ている動画を、大きなディスプレイやテレビで見たいとしよう。Fire TV Stick 4Kを使っていたときは、iPhoneで再生中の動画を転送できず、結局リモコンで検索し直す手間をかけていた(Androidスマホならできていた)。これがApple TVなら、iPhoneからAirPlay(iPhoneやiPadで見ている動画・音楽・写真を別のデバイスでストリーミング再生する機能のこと)をオンにすれば、簡単にApple TVが接続されたデバイスに映像を転送・再生できる。
キッチンで見ていた野球中継をApple TVで見直すときも、
AirPlayでスムーズに操作できる
Appleのスマートスピーカー「HomePod mini」や、イヤホンの「AirPods Pro」への音声転送も簡単に行える。我が家ではリスニング用に購入していたHomePod miniをディスプレイの両サイドに1台ずつ配置し、ステレオペアに設定している。このHomePod miniのペアをApple TV 4Kの音声出力先に設定することで、ディスプレイ付属のスピーカーより重低音の効いたパワフルな音声を楽しめた。
テレビやディスプレイのスピーカーが貧弱なら、
HomePod miniも悪くない選択肢だ
ちなみに同じようなことはFire TV Stick 4KとAmazon Echoの組み合わせでもでき、そのためにAmazon Echoを新調したこともあった。だが、当時は再生途中にディスプレイの電源を切ると、次回再生時に高確率で異音が鳴ってしまう不安定な挙動により使い物にならず、泣く泣くお蔵入りした。このあたりの安定性もさすがAppleといったところだ。
また、地味に便利なのが、iPhoneと連携した検索ワードやログイン情報の入力。Apple TVで文字入力画面を表示すると、iPhoneに通知が表示される。この通知をタップすると、iPhoneから文字が入力できるのだ。ログイン情報は、iPhoneのパスワード自動入力機能を利用すれば、安全かつ速やかに入力できる。Fire TV Stick 4Kでは、リモコンで一つずつ文字を選択して入力していたので、この機能はかなり楽に感じた。
Apple TVならではのユニークな機能としてぜひ紹介しておきたいのが、iPhoneやiPad向けのゲームをプレイできること(tvOS対応のゲームのみ)。PlayStation 4以降もしくはXboxのワイヤレスコントローラー、MFi(Made for iOS)認証を受けたBluetoothコントローラーがあれば、大画面で快適にゲームを楽しめる。
ここまでApple TV 4Kのメリットを見てきたが、デメリットがないわけでもない。その最たるものがtvOSに対応するアプリの数だ。それも肝心の映像コンテンツに物足りなさを感じている。
映画やドラマ、アニメに関するサービスはけっこう充実している。Apple TV+はもちろんのこと、Amazon Prime Video、Netflix、Huluなどサードパーティのサブスクサービスにも対応する。映画・ドラマ・アニメを中心にコンテンツを視聴している人であれば、十分満足できるラインナップではないだろうか。
一方で、ニュースやスポーツ関連にはあまり強いとはいえない。F1やプロ野球、JリーグはDAZNでフォローできるものの、WOWOWオンデマンドやTVerなどのアプリは現在のところ配信されておらず、テニスの四大大会やオリンピックの中継をApple TV 4K一台でフォローするのは難しい。結局、一部サービスはパソコンのウェブブラウザで再生し、外付けディスプレイに映す形で運用している。
だが、Apple TVのユーザーがもう少し多ければ対応状況はもう少し違ったかも……と思わずにはいられない。Fire TV Stick 4Kなら、WOWOWオンデマンドで全仏オープンもウィンブルドンも見られるのだから。結局はデバイスの性能やユーザーインターフェースがどれだけ優れていても、見たいコンテンツがなければ、メディアストリーミング端末の魅力は半減してしまう。
結論を言おう。Apple TV 4Kは映像体験をグレードアップしてくれる優れたデバイスとなるだろう。ただし、皆さんがすでにApple製品を愛用しており、なおかつ見たいコンテンツがtvOSでサポートされている……という条件を満たせばの話だが。(浦辺制作所・澤田 竹洋)