携帯オーディオプレーヤーの音を少しでも良くしたい、PCで再生する曲をもっといい音で聴きたい、そんなときに使えるのがDAC「Digital Analog Converter」だ。プレーヤーやPCとデジタル接続して使用する。DACにヘッドホンをつないだり、スピーカーに接続したりして使えば、ワンランク上の音質を楽しむことができる。最近では低価格ながら、質の高い製品も登場し始めており、より身近になってきた。
ノースフラットジャパンの「FX-AUDIO- DAC-X6J」もそのひとつ。9990円で、いい音を手に入れることができる。この製品の面白いところは、オペアンプ交換ができることだ。オペアンプとは、音を増幅するICチップ。指先ほどの小さな部品ながら音質への影響が大きい。DAC-X6Jではこのオペアンプが基盤にハンダ付けされておらずソケットに入れられているため、ユーザーでも手軽に交換できる。そこで、オペアンプを交換するとどれくらい音が変わるのか、試してみることにした。
まずDAC-X6Jに搭載されているオペアンプは、Texas Instruments社製の「Burr Brown OPA2134PA」。チップ単体で買うと600円前後だ。これに加えて、3つのオペアンプを用意した。まず、新日本無線の「NJM4558DD」で1個20円(購入時価格、以下同)。オーディオ用の最もベーシックなタイプでとても安価。リファレンス用として用意した。次に、Texas Instrumentsに買収される前のBurr-Brown社製「OPA627AU」を2個使用して2回路化したノースフラットジャパン製オペアンプで、2980円。最後に新日本無線のオーディオ向けのプレミアム製品「MUSES02」で3400円だ。OPA627AUもMUSES02も高級オーディオ製品に採用されているオペアンプの代表格のチップだ。
20円から3400円まで、価格差170倍。音質にそれほどの違いはあるのだろうか。総じて言えることは、20円のNJM4558DDも含め、どのオペアンプを使っても「そこそこいい音がする」ということだ。違いはとても微妙で、耳を凝らして何度も聞き比べなければ、大きな違いは感じられなかった。しかしよくよく聴いてみれば、それぞれのオペアンプの特徴のようなものが聴こえてきた。視聴には、オンキヨーが運営するe-onkyo musicで配布・販売されているハイレゾ音源を使用した。クラシックではJ.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番」とラヴェルの「展覧会の絵 プロムナード」でいずれも192kHz/24bit。ポップスではシュガーベイブの「いつも通り」で48kHz/24bitの音源だ。プレーヤーはHidizsの「AP80 Pro」、ヘッドホンはソニーの「MDR-CD900ST」を使用した。
最初に試したのはNJM4558DD。激安のチップだけに安っぽい音がするかと思いきや、なかなかどうして、とてもいい音がする。多くの製品で採用されているといい、日常的に音楽を聴く分には全く問題ない音質だ。リファレンス用として使うには十分な実力があると感じた。次に試したのが製品に最初から搭載されているOPA2134PAだ。NJM4558DDから切り替えると、ぱっと視界が開けたような音場の広がりのような変化を感じた。テストで使用したDAC-X6Jに採用されているだけあって、とてもまとまりが良く自然な音だ。
次はOPA627AU。「孤高の存在」とも評される高級チップだ。特にバッハの無伴奏で気が付いたのは残響の広がり感と美しさだ。豊かでふくよかな低域としっかりした中域、澄んだ高域も特徴的だ。最後にMUSES02だ。新日本無線自身が「音の秘石」と表現するオペアンプシリーズだけあって、よくよく聴けば、細かなディテールや臨場感がある音だということがわかる。ポップスの「いつも通り」でボーカルを務める若き日の大貫妙子氏。声のつやがとても美しく表現されていて、さすがだと思った。
今回視聴で使用したDAC、FX-AUDIO- DAC-X6Jのメーカー、ノースフラットジャパンは日本のメーカー。中国の提携工場で生産している。末尾にJのつかないモデルもあるが、中国をはじめとする海外向け製品。採用部品や検品工程が異なるという。実は、FX-AUDIO- DAC-X6MKIIなる、Blutooth接続可能な後継機とみられる製品を中国サイトで発見。およそ67ドルで購入し、テストに使用する予定だった。しかし、海外向け製品で技適も取っておらず、日本では使用できないことが判明。そこでノースフラットジャパンより、DAC-X6Jをお借りしてテストを行った。Blutoothアンテナを外して無線が使用できない状態にしたDAC-X6MKIIとDAC-X6Jとを聞き比べてみたが、やはりDAC-X6Jの方が明らかに音が良かった。採用部品の品質の違いによるものなのだろう。
オーディオ沼は深いとよく言われる。いい音を求め始めるときりがなく、とてもお金がかかるからだ。しかし、こうした安価な製品や部品の交換でも、いい音が楽しめ、音質の変化で遊べるのであれば、多少沼にはまってみても面白そうだ。(BCN・道越一郎)
ノースフラットジャパンの「FX-AUDIO- DAC-X6J」もそのひとつ。9990円で、いい音を手に入れることができる。この製品の面白いところは、オペアンプ交換ができることだ。オペアンプとは、音を増幅するICチップ。指先ほどの小さな部品ながら音質への影響が大きい。DAC-X6Jではこのオペアンプが基盤にハンダ付けされておらずソケットに入れられているため、ユーザーでも手軽に交換できる。そこで、オペアンプを交換するとどれくらい音が変わるのか、試してみることにした。
まずDAC-X6Jに搭載されているオペアンプは、Texas Instruments社製の「Burr Brown OPA2134PA」。チップ単体で買うと600円前後だ。これに加えて、3つのオペアンプを用意した。まず、新日本無線の「NJM4558DD」で1個20円(購入時価格、以下同)。オーディオ用の最もベーシックなタイプでとても安価。リファレンス用として用意した。次に、Texas Instrumentsに買収される前のBurr-Brown社製「OPA627AU」を2個使用して2回路化したノースフラットジャパン製オペアンプで、2980円。最後に新日本無線のオーディオ向けのプレミアム製品「MUSES02」で3400円だ。OPA627AUもMUSES02も高級オーディオ製品に採用されているオペアンプの代表格のチップだ。
20円から3400円まで、価格差170倍。音質にそれほどの違いはあるのだろうか。総じて言えることは、20円のNJM4558DDも含め、どのオペアンプを使っても「そこそこいい音がする」ということだ。違いはとても微妙で、耳を凝らして何度も聞き比べなければ、大きな違いは感じられなかった。しかしよくよく聴いてみれば、それぞれのオペアンプの特徴のようなものが聴こえてきた。視聴には、オンキヨーが運営するe-onkyo musicで配布・販売されているハイレゾ音源を使用した。クラシックではJ.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番」とラヴェルの「展覧会の絵 プロムナード」でいずれも192kHz/24bit。ポップスではシュガーベイブの「いつも通り」で48kHz/24bitの音源だ。プレーヤーはHidizsの「AP80 Pro」、ヘッドホンはソニーの「MDR-CD900ST」を使用した。
最初に試したのはNJM4558DD。激安のチップだけに安っぽい音がするかと思いきや、なかなかどうして、とてもいい音がする。多くの製品で採用されているといい、日常的に音楽を聴く分には全く問題ない音質だ。リファレンス用として使うには十分な実力があると感じた。次に試したのが製品に最初から搭載されているOPA2134PAだ。NJM4558DDから切り替えると、ぱっと視界が開けたような音場の広がりのような変化を感じた。テストで使用したDAC-X6Jに採用されているだけあって、とてもまとまりが良く自然な音だ。
次はOPA627AU。「孤高の存在」とも評される高級チップだ。特にバッハの無伴奏で気が付いたのは残響の広がり感と美しさだ。豊かでふくよかな低域としっかりした中域、澄んだ高域も特徴的だ。最後にMUSES02だ。新日本無線自身が「音の秘石」と表現するオペアンプシリーズだけあって、よくよく聴けば、細かなディテールや臨場感がある音だということがわかる。ポップスの「いつも通り」でボーカルを務める若き日の大貫妙子氏。声のつやがとても美しく表現されていて、さすがだと思った。
今回視聴で使用したDAC、FX-AUDIO- DAC-X6Jのメーカー、ノースフラットジャパンは日本のメーカー。中国の提携工場で生産している。末尾にJのつかないモデルもあるが、中国をはじめとする海外向け製品。採用部品や検品工程が異なるという。実は、FX-AUDIO- DAC-X6MKIIなる、Blutooth接続可能な後継機とみられる製品を中国サイトで発見。およそ67ドルで購入し、テストに使用する予定だった。しかし、海外向け製品で技適も取っておらず、日本では使用できないことが判明。そこでノースフラットジャパンより、DAC-X6Jをお借りしてテストを行った。Blutoothアンテナを外して無線が使用できない状態にしたDAC-X6MKIIとDAC-X6Jとを聞き比べてみたが、やはりDAC-X6Jの方が明らかに音が良かった。採用部品の品質の違いによるものなのだろう。
オーディオ沼は深いとよく言われる。いい音を求め始めるときりがなく、とてもお金がかかるからだ。しかし、こうした安価な製品や部品の交換でも、いい音が楽しめ、音質の変化で遊べるのであれば、多少沼にはまってみても面白そうだ。(BCN・道越一郎)