【木村ヒデノリのTech Magic #060】 テックの波がキッチンツールにも押し寄せている。「Chopbox(チョップボックス)」は殺菌やキッチンスケール機能を内蔵したハイテクまな板だ。これまでも収納ボックスに殺菌機能を持ったまな板は存在したが、五つもの便利な機能を内蔵しつつ、材質はほとんどが竹で、防水性能まで備えたものは見たことがない。テックでアップデートされる料理体験はどれほどのものなのだろうか。
Chopboxを開発したのは、The Yes Companyという米国に拠点を置くスタートアップだ。2019年に設立された同社は、Kickstarterで目標の1万ドルを大幅に上回る179万4958ドルを調達、2年ほどで製品化に成功した。当初の予定からは1年ほど遅れたものの、届くまでの体感時間としては優秀な方だと言えるだろう(これより1年前に出資してまだ届かないものもある。苦笑)。
面白いのは本体のほとんどのパーツが「竹」で出来ている点だ。同社は「竹はナチュラルでオーガニックな上に「ローメンテナンスウッド」として知られている」と語っており、他材よりはるかにメンテナンスが良い点に注目したそうだ。
竹は硬いだけでなく密度が高いので、水を内部に溜め込まずに自ら押し出してくれる。まな板によく使われるメープルやウォールナット、桜などはこうした作用がないため頻繁なメンテナンスが必要。もちろん天然材でなければこうした心配は不要だが、人工的なまな板には削れてそれらを摂取してしまうという懸念もある。その点、竹はプラスチック製品と比べて包丁傷にも強いし、価格も非常に安いといった利点もある。
かなり実用的かつ画期的なのがUV殺菌機能だ。Chopboxにはセカンドまな板が付属し、切り終わった食材を移すことで多くの食材を効率よくカットすることができる。このセカンドまな板を調理面に被せるように置くことで、それぞれを同時に殺菌可能。さらに右側のスロットにナイフや包丁を差し込むことで、それらもまとめて殺菌できる。
特筆すべきはこの機能が本体のみで実現されている点。他社製品で収納ボックスに殺菌機能をつけているものはあるが、場所を取ったり、ケース内が洗浄できなかったり、というデメリットがある。Chopboxのように本体だけで殺菌できる構造ならこうした点を気にせず使えて便利だ。
従来の包丁立てや、擦り傷のあるまな板には有害なバクテリアが繁殖しやすい。対して、Chopboxは使用する直前に都度1分間UVCライトを照射するだけで99.99%の細菌を死滅させられると保証している。直接見たり当てたりすることで痛みや視力障害、皮膚炎などが懸念される254nmのUVC光だが、ほとんど密閉された形で殺菌できる仕様にすることで安全性にも配慮。殺菌中に万が一、上下のボードが離れてしまったら消灯する安全設計になっているなど、工夫されている。
デメリットは消耗品のまな板に付けられた価格だ。小売価格は199ドルなので、日本円で2万円弱。まな板としてはかなりの高級品だ。当初は長く使えるのか疑問視する声があったが、そこはクラウドファンディングの良さが光る。ファンディング中に届いた支援者からのアイデアを元に、メインの調理面と研ぎ機部分は簡単に交換ができる仕様に変更された。これらは個別に購入ができるので、予備として保管しておくことも可能(現時点ではまだ販売されていない)。また、当初microUSBだった充電コネクタ部分もUSB-Cに変更された。
実際使ってみた不満を挙げるとすれば、少し大きめで厚い(約3.5cm)ということだろうか。日本の一般家庭では、これまでまな板を収納していた場所には入らないことが多いかもしれない。また、紹介していないもので「セラミックとダイヤモンド2種類の刃研ぎ機能」があるが、これも日本だと砥石を使う人が多そうだ。
個人的にはタイマー機能もキッチンにあるアマゾンエコーに声で設定する方が便利なので、これらを超える新たな機能を第2世代には搭載してほしい。ただ、キッチンスケールがまな板と段差なく付いているのはかなり便利なので、その点と殺菌機能だけでも買う価値はあるだろう。日本では6月にクラウドファンディングサイト「Campfire」で販売される予定だ。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。
アメリカのスタートアップが送り出す画期的なキッチンツール
Chopboxを開発したのは、The Yes Companyという米国に拠点を置くスタートアップだ。2019年に設立された同社は、Kickstarterで目標の1万ドルを大幅に上回る179万4958ドルを調達、2年ほどで製品化に成功した。当初の予定からは1年ほど遅れたものの、届くまでの体感時間としては優秀な方だと言えるだろう(これより1年前に出資してまだ届かないものもある。苦笑)。面白いのは本体のほとんどのパーツが「竹」で出来ている点だ。同社は「竹はナチュラルでオーガニックな上に「ローメンテナンスウッド」として知られている」と語っており、他材よりはるかにメンテナンスが良い点に注目したそうだ。
竹は硬いだけでなく密度が高いので、水を内部に溜め込まずに自ら押し出してくれる。まな板によく使われるメープルやウォールナット、桜などはこうした作用がないため頻繁なメンテナンスが必要。もちろん天然材でなければこうした心配は不要だが、人工的なまな板には削れてそれらを摂取してしまうという懸念もある。その点、竹はプラスチック製品と比べて包丁傷にも強いし、価格も非常に安いといった利点もある。
調理面だけでなく、包丁も殺菌できるUVライトを搭載
かなり実用的かつ画期的なのがUV殺菌機能だ。Chopboxにはセカンドまな板が付属し、切り終わった食材を移すことで多くの食材を効率よくカットすることができる。このセカンドまな板を調理面に被せるように置くことで、それぞれを同時に殺菌可能。さらに右側のスロットにナイフや包丁を差し込むことで、それらもまとめて殺菌できる。特筆すべきはこの機能が本体のみで実現されている点。他社製品で収納ボックスに殺菌機能をつけているものはあるが、場所を取ったり、ケース内が洗浄できなかったり、というデメリットがある。Chopboxのように本体だけで殺菌できる構造ならこうした点を気にせず使えて便利だ。
従来の包丁立てや、擦り傷のあるまな板には有害なバクテリアが繁殖しやすい。対して、Chopboxは使用する直前に都度1分間UVCライトを照射するだけで99.99%の細菌を死滅させられると保証している。直接見たり当てたりすることで痛みや視力障害、皮膚炎などが懸念される254nmのUVC光だが、ほとんど密閉された形で殺菌できる仕様にすることで安全性にも配慮。殺菌中に万が一、上下のボードが離れてしまったら消灯する安全設計になっているなど、工夫されている。
テック製品とキッチンは相性が悪いのではないか
水を使うキッチン周りとテック製品は、一般的に相性が悪い。キッチンテックが少ないのにはそういった事情もあるようだが、Chopboxは防水性能も抜かりがない。なんとIPX7に準拠しており、水深1mに30分間水没させても内部に浸水しない構造になっている。これなら洗う際に故障を気にすることもなく、使用感は通常のまな板とほぼ同じ。ただし、食洗機には非対応なので注意が必要だ。高温にさらされると天然木が反るなどの不具合が生じる可能性がある。
日本で受け入れられるには大きさが課題か?
デメリットは消耗品のまな板に付けられた価格だ。小売価格は199ドルなので、日本円で2万円弱。まな板としてはかなりの高級品だ。当初は長く使えるのか疑問視する声があったが、そこはクラウドファンディングの良さが光る。ファンディング中に届いた支援者からのアイデアを元に、メインの調理面と研ぎ機部分は簡単に交換ができる仕様に変更された。これらは個別に購入ができるので、予備として保管しておくことも可能(現時点ではまだ販売されていない)。また、当初microUSBだった充電コネクタ部分もUSB-Cに変更された。実際使ってみた不満を挙げるとすれば、少し大きめで厚い(約3.5cm)ということだろうか。日本の一般家庭では、これまでまな板を収納していた場所には入らないことが多いかもしれない。また、紹介していないもので「セラミックとダイヤモンド2種類の刃研ぎ機能」があるが、これも日本だと砥石を使う人が多そうだ。
個人的にはタイマー機能もキッチンにあるアマゾンエコーに声で設定する方が便利なので、これらを超える新たな機能を第2世代には搭載してほしい。ただ、キッチンスケールがまな板と段差なく付いているのはかなり便利なので、その点と殺菌機能だけでも買う価値はあるだろう。日本では6月にクラウドファンディングサイト「Campfire」で販売される予定だ。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。