「AirPods Max」の長期使用で見えてきた! アップル高級ヘッドホンの三つの魅力
ハイエンドヘッドホンらしい上質なサウンド
次に注目したいのはサウンドだ。オーディオメーカーのヘッドホンを愛用してきた方には、ITテクノロジーのブランドであるアップルが発売する初めてのハイエンドヘッドホンの「音質」が価格相応なのか気になる向きも多いと思う。筆者の手応えとしては、AirPods Maxのサウンドは他社のアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載するハイエンドクラスのワイヤレスヘッドホンと十分に肩を並べる完成度に到達していると感じた。自社設計の40mm口径ダイナミック型ドライバーと、Apple H1チップに搭載されているパワフルなアンプがきめ細かくて力強い、立体的なサウンドを再現する。
バランスがニュートラルで、粗っぽさのない上品なサウンドはボーカルにハイライトした楽曲や、楽器の音色をゆったりと楽しみたいクラシック、ジャズの演奏にこの上なくマッチした。アップテンポなロックやEDMの楽曲はとてもスムーズな鳴りっぷりだ。Apple MusicやSpotifyなど音楽配信サービスのコンテンツがとても心地よく楽しめた。
アップル独自の「空間オーディオ」は、対応するハードウェアとアプリを組み合わせると手軽にモバイル環境で映画やドラマなど映像コンテンツの立体サラウンドが楽しめる機能だ。
iOS 14.3以降のiPhone、iPadOS 14.3以降のiPadとにAirPods Maxをペアリングして、Apple TVアプリでDolby Atmos、7.1ch/5.1chの映像コンテンツを再生すると、間に他の機器を挟むことなくシンプルな組み合わせでサラウンド再生が楽しめる。Apple TV+のオリジナルコンテンツ「グレイハウンド」や「See~暗闇の世界~」などは空間オーディオ体験にもおあつらえ向きのコンテンツで、緻密な効果音の作り込みが味わえた。
スマホとワイヤレスヘッドホンの組み合わせでサラウンド再生を楽しめる技術はほかにもあるが、空間オーディオにはもう一つ「ダイナミック・ヘッドトラッキング」というユニークな機能がある。
空間オーディオの視聴環境で対応するコンテンツを再生すると、例えば正面にいて話している登場人物の話し声がユーザーが顔の向きを変えるとコンテンツの音が元の位置に定位したまま、片方の耳から強く聞こえてくる。映画やドラマの作品の世界に入り込んでしまえるような没入感が新鮮だ。映画館やホームシアターで何度も観てきた作品も、空間オーディオで楽しむとまた違った魅力に出会える。
やはり便利なiPhone/iPad連携
最後に、AirPods MaxがiPhone/iPadをはじめとするアップルデバイスと見事な連携機能を備えている所にも注目したい。iPhone/iPadとのペアリングがワンタッチで完了するだけでなく、ユーザーが所有する一つのデバイスとペアリングが完了すると、iCloudアカウントでサインインされているMacやApple TVなどすべてのデバイスとの自動ペアリングが行われる。例えば、MacにAirPods Maxをペアリングして映画を視聴している最中に、iPhoneにかかってきた電話に応答するとヘッドホンの接続先が自動的にiPhoneに切り替わる。上手に使いこなせばリモートワークをさらにスムーズにこなせる環境が構築できそうだ。
AirPods Maxは高価なヘッドホンだが、発売直後からアップルのオンラインストアには多くの注文が殺到したようだ。本稿を執筆している2020年12月末現在、購入後配送まで約2ヶ月半待ちとなっている。多くのユーザーに製品が行き届いた後には、空間オーディオ対応をはじめとする本機の独自性がまた改めて注目を浴びるのではないだろうか。(フリーライター・山本敦)