Shureの名機をワイヤレス化! 販売再開した「Shure RMCE-TW1」のメリット・デメリット
【木村ヒデノリのTech Magic #025】 一部の機能が自社の基準に満たないとして販売が中止されていた待望の製品が再び市場に戻ってきた。10月1日から販売が再開された「RMCE-TW1トゥルーワイヤレス・セキュアフィット・アダプター(以下、TW1)」は、プロにも定評のあるShure(シュア)社の高遮音性イヤホンを耳にかける形で装着できるようにする製品だ。高品質な同社のイヤホンをワイヤレスに変換できるということで期待の高い製品だが、音質面では意外な落とし穴もあった。メリット・デメリット含め紹介したいと思う。
通常のイヤホンならケーブルは本体と一体型だが、シュア製品はケーブルだけ取り外して交換できるという特徴がある。これがTW1を含めたさまざまなオプションの提供を可能にしているわけだが、なかなか珍しいコンセプトでもある。確かに考えてみればシュアのイヤホンは2万円台~8万円台と決して安くはない。一度買ったら買い替えずに長く使いたいというニーズが高いので、テクノロジー部分の恩恵を後から享受できるのはユーザー体験を底上げする仕様といえるだろう。
現在音声のコーデック一般的なものは三つ、SBC、AAC、aptXだ。このうちSBCは古いもので、現在音質を求めるユーザーからは敬遠されている。残りの二つはそれぞれApple製品、Android製品で主に使われているもので、aptXの方はさらに細分化されたものがある。下記の表で確認して欲しい。
つまり何が言いたいかというと、ワイヤレス化自体はできるものの、ハイエンドのSE846(2020年10月時点で実勢価格は8万5000円)をTW1に接続しても本来の高音質を再現することはできない。加えてTW1自体もaptX HDとaptX LLには対応していないため、ハイレゾ再生やゲーム用には使えない。結論を言えば、TW1でワイヤレス化するのに適しているのはSE215、もしくはすでにTW1とセットで売られているAONIC215ということになる。
ただし、あくまで「技術的に」ということであって、高音質と言えるほどの違いがあるかというとやや疑問である。実際に筆者はaptX HD環境で48KHz/24bitの音源を再生してみたが、明らかな違いは感じなかった。一番低品質なSBCと比較しても「音像がややはっきりしたかな」程度で、「これはもう元の環境に戻れない!」というほどの差ではなかった。音質の感じ方には個人差があると思うが、実際に波形を記録した結果、さほど差がないといった記事もあったので、一考の余地はあるのではないだろうか。
俗に“シュアがけ”と呼ばれる独特の装着法の安定度はかなり高く、ハードな運動にも耐えつつ良い音を届けてくれるだろう。また、TW1で実現される外音取り込みモードも良い。アプリで操作すると外音の取り込みレベルも調整でき、密閉型なのに耳につけたまま楽に会話ができる。こういった機能を後付けできるのもメリットと言えるだろう。
不満というほどではなかったが、やはりユーザーが期待していたのはハイエンド製品がワイヤレスで使えるようになる、というものだったはずだ。業務用でなくても高音質でのワイヤレス伝送は確立されつつあるため、次世代製品(TW2?)にはハイレゾ対応を期待したい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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往年の名機をワイヤレス化できる衝撃
「SE846」は2013年に発売され、今でもプロに愛用されるシュアの代表的なイヤホンだ。往年というにはやや新しいかもしれないが、イヤホンとしてはかなりのロングセラーなのではないだろうか。シュアからは他にもSE215、SE425、SE535など価格帯と機能性の違うイヤホンがリリースされている。TW1を使えばユーザーはこれらの中から好きなものを選んでワイヤレス化することができる。通常のイヤホンならケーブルは本体と一体型だが、シュア製品はケーブルだけ取り外して交換できるという特徴がある。これがTW1を含めたさまざまなオプションの提供を可能にしているわけだが、なかなか珍しいコンセプトでもある。確かに考えてみればシュアのイヤホンは2万円台~8万円台と決して安くはない。一度買ったら買い替えずに長く使いたいというニーズが高いので、テクノロジー部分の恩恵を後から享受できるのはユーザー体験を底上げする仕様といえるだろう。
Bluetooth 5.0だから音質が良いわけではない
ワイヤレスイヤホンの売り文句に「Bluetooth 5.0」が出されているケースが散見されるが、バージョンと音質が必ずしも関係しているわけではないので整理しておきたい。まず、Bluetooth 4.0と5.0の主な違いは「通信範囲」と「転送速度」だ。通信範囲は約4倍、転送速度は約2倍早くなっているが、これはあくまで技術的な話で、音質はこれとは別の「コーデック」、つまり圧縮したり展開したりする方式が重要になってくる。現在音声のコーデック一般的なものは三つ、SBC、AAC、aptXだ。このうちSBCは古いもので、現在音質を求めるユーザーからは敬遠されている。残りの二つはそれぞれApple製品、Android製品で主に使われているもので、aptXの方はさらに細分化されたものがある。下記の表で確認して欲しい。
つまり何が言いたいかというと、ワイヤレス化自体はできるものの、ハイエンドのSE846(2020年10月時点で実勢価格は8万5000円)をTW1に接続しても本来の高音質を再現することはできない。加えてTW1自体もaptX HDとaptX LLには対応していないため、ハイレゾ再生やゲーム用には使えない。結論を言えば、TW1でワイヤレス化するのに適しているのはSE215、もしくはすでにTW1とセットで売られているAONIC215ということになる。
シュア製品をワイヤレス化しても高品質な音は聴けないのか
それでは高音質は諦めないといけないのかというとそうでもない。シュアからはTW1の他にBT2というBluetoothモジュールが発売されている。SE846などと同梱でも販売されている製品だが、こちらはaptX HD、aptX LLに対応している。したがって、BT2を使えばSE846などハイエンド製品でハイレゾ音質を楽しむことが可能になる。ただし、あくまで「技術的に」ということであって、高音質と言えるほどの違いがあるかというとやや疑問である。実際に筆者はaptX HD環境で48KHz/24bitの音源を再生してみたが、明らかな違いは感じなかった。一番低品質なSBCと比較しても「音像がややはっきりしたかな」程度で、「これはもう元の環境に戻れない!」というほどの差ではなかった。音質の感じ方には個人差があると思うが、実際に波形を記録した結果、さほど差がないといった記事もあったので、一考の余地はあるのではないだろうか。
選択肢としては良いものの今後に期待したい製品
結局SE846などハイエンドの製品をTW1でワイヤレス化してもあまりコスパが良くない。それであれば他社のハイレゾ対応ワイヤレスイヤホンを買う方がいいだろう。ただ、すでにSE215を持っている、あるいはシュアの音質が好きで、スポーツなど動き回る用途に使いたいという場合はおすすめだ。俗に“シュアがけ”と呼ばれる独特の装着法の安定度はかなり高く、ハードな運動にも耐えつつ良い音を届けてくれるだろう。また、TW1で実現される外音取り込みモードも良い。アプリで操作すると外音の取り込みレベルも調整でき、密閉型なのに耳につけたまま楽に会話ができる。こういった機能を後付けできるのもメリットと言えるだろう。
不満というほどではなかったが、やはりユーザーが期待していたのはハイエンド製品がワイヤレスで使えるようになる、というものだったはずだ。業務用でなくても高音質でのワイヤレス伝送は確立されつつあるため、次世代製品(TW2?)にはハイレゾ対応を期待したい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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