「EOS R5」の意外なメリットを発見! クラウド連携で開かれる新たな可能性

【木村ヒデノリのTech Magic #017】 キヤノンの「EOS R5」が発売されて半月。熱暴走の問題や競合であるソニー「α7S III」の発表など、正直不利な情報が山積みだった。しかし、実は「EOS R5」の大きなメリットは当初の期待とは別のところにあった。発売日からさまざまな使い方を試してみたが、あまり注目されていない「image.canon」とのクラウド連携がミラーレス一眼の運用効率を大幅に向上してくれたので紹介したい。

「EOS R5」の大きさはほぼ「EOS R」と変わらないが、
ボディ内手振れ補正など「5」の名に恥じない高機能が盛り込まれている

操作系は5D系を踏襲 ミラーレスの優位性を最大限に活かしたボディ

 機能性はもちろんだが、はじめに手に取って驚くのはそのボディの小ささだ。重さはEOS Rが580g(本体のみ)だったのに対し、650g(本体のみ)とほとんど違いを感じない。今までの5D系と比べると一回り小さくなっており、その分だけ操作もしやすい印象を受けた。復活したマルチコントローラーはメニュー操作時に大きく貢献する。

 また、ディスプレイを利用したタッチ&ドラッグAFでもピントを合わせる位置を変えられるため、即座にフォーカスポイントを変更することができる。ボディが少し大きいだけで画面を使っての操作自体が億劫になってしまうため、様々な操作をする上で小型ボディの恩恵は大きい。
 
コンパクトなボディは各ボタンに指が届きやすく、操作性は段違い

 機能性はEOS Rと同程度の大きさとは思えないくらい向上している。特にボディとレンズの協調手振れ補正や、EVF内のプレビュー表示速度向上、暗所でのAF性能などは価格こそ高いが満足できる仕上がりになっている。

 動画も発熱の問題などが取り上げられているが、筆者が使っている限りでは十分に実用的だった。特に4K撮影時にクロップされなくなったのが大きい。室内でYouTube動画を撮影する際、EOS Rではクロップされる関係でどうしても20mm相当のレンズが必要だったが、EOS R5では35mm相当レンズで撮影可能なため、RF35mm f1.8などコンパクトなRFマウントレンズで撮影ができる。これは外に持ち出して撮影する際などにはかなり大きなメリットとなるだろう。8Kでの撮影も、猛暑下で平均10分前後は撮影可能だった。Bロールや15秒CMなど、長回ししない撮影時には十分ではないだろうか。
 
協調手振れ補正によって、0.4秒で手持ち撮影してもこの画が撮れるのは驚きだ

機能性の中でも特筆したい「クラウド自動アップロード機能」

 これ以上の詳細な機能性や諸々の検証についてはここでは割愛し、筆者が便利で最も実用的だと感じた機能を紹介したい。あまり注目されていないが、EOS R5ではカメラ本体が5GHz帯のWi-Fiに対応し、自動アップロードもできるようになった。これが驚くべき便利さを提供してくれる。

 EOS Rまでは2.4GHzにしか対応しておらず、アップロードはいちいちメニューから行わなければならなかったため、1度も使用したことがなかった。しかしEOS R5では、電源を入れ直す必要はあるものの、5GHz帯の高速通信を使って自動で撮影した画像のアップロードが可能だ。

 下図で示した通り、アップロードの速度が飛躍的に向上しているほか、電源は省電力設定でオートオフを設定しておけば、アップロードが終わり次第、自動でオフになる。撮影後に電源を切り、もう一度オンにしておけば撮影した直近の画像を自宅のネットワークを介してアップロード、その後オフにしてくれる。
 
5GHz帯を使うEOS R5では2倍近い速度でアップロードが可能。
専用トランスミッター付きバッテリーグリップとFTPを利用した転送では46秒とかなり高速
※いずれもRAWデータ10枚を送信した場合
 
オートパワーオフを設定しておけば、アップロードが終わった後、
自動でオフになるので電池消費の心配もない

 また、発売と同じタイミングで整備された「image.canon」が自動アップロードの実用性を高めてくれている。2020年8月18日現在、image.canonは五つのサービスとの連携が可能で、サービスによって自動アップロードに対応している。

 特にLightroom CCとの連携は秀逸で、自動アップロードと同時にLightroomのライブラリに撮影画像を共有してくれるなど使い勝手がいい。現段階ではPhotoshop、Lightroom、Capture Oneなど主要な現像ソフトウェアはEOS R5に対応していないため、RAWデータの現像はもとより取り込みもできなくなっているが、なんとimage.canon経由だとRAWデータの現像がLightroomで可能になる。

 これにより、自動アップロードしたRAWデータがスマホのLightroomアプリで即座に現像が可能になり、EOS R5で撮影した画像をInstagramなどのSNSで共有することが劇的に簡便になった。ソフトウェアが対応すれば以前のようにケーブル接続で取り込みが可能になると思われるが、正直今後ケーブルを使うことがないだろうなと思えるくらいこのクラウド連携機能は便利だった。

 image.canon自体は30日間(保管したいものは10GBまで別に保管可能)以上経過した画像は自動で削除されていくが、自動連携で共有された別のサービスの画像は削除されないので問題ない。
 
image.canonは現在五つのサービスとの連携に対応しており、
今後の拡張性にも期待が持てる

 プロ・ハイアマチュア機とされるEOS R5だが、このクラウド連携機能とオートフォーカスの優秀さを考えると、そこまで技術や知識のないユーザーでも十分に活用できる印象だ。特にInstagramやTwitterでの情報発信をしていて差別化を図りたいユーザーは、高額だが廉価なミラーレス一眼を選ぶよりは思い切ってEOS R5を選んだ方が写真運用の効率は大幅に上がり、かつ撮れる写真のバリエーションが大幅に上がるので十分に検討の余地があると感じた。

 それでも価格がネックになるのならおすすめしたいのが、今月末に発売予定の「EOS R6」だ。画素数こそR5から落ちるものの、暗所性能はよりすぐれており、価格が3分の2程度。競合機のα7S IIIに関しては動画撮影するユーザー以外は対象にならないかと思うが、EOS R5とR6はSNSで写真中心に配信するユーザーも十分に対象になってくる。

 動画以外の性能にも注目しながら自分に合ったモデルを選択することで静止画やその運用に大きなメリットを与えてくれる製品なので、この機会にメイン機として導入するものいいだろう。少なくとも筆者は価格以上の満足感を得られた製品だった。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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