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動画配信者に勧めたい一生モノのマイク、2万円代で劇的に音質を改善する「Blackout Spark SL」

レビュー

2020/08/14 17:30

【木村ヒデノリのTech Magic #016】 リモートワークの普及で自ら動画配信を始める人が増えているが、コンテンツの質を上げるために映像にこだわる人はいても、音声に重きを置く人はなかなかいないのではないだろうか。あまり注目されていないが、動画を見るときに不快感を抱く原因は映像よりも音声にあることが多い。

 今回、紹介する「Blackout Spark SL(以下、Spark SL)」はトップメーカーが動画配信用途に推しているマイクだ。2万円弱と少し高めだが手が届く価格で圧倒的な音質改善を約束してくれる。発売は2017年だが、ニーズが出てきたので再度スポットを当てたいと思う。
 
Blackout Spark SLはSpark SLのカラーがブラックになった限定モデル。
機能的にはSpark SLと全く同じだが、クロムメッキとマットブラックのボディからは高級感が漂う

プロ向けマイクロフォンメーカーの高コスパコンデンサーマイク

 Spark SLは米カリフォルニア州に本社を置くBlue Microphonesの製品だ。同社はカプセル交換でマイク特性を変更できる「Bottle」という真空管マイクロフォンで一躍有名になった企業で、ハイエンドマイクには70万円を超えるものもある。こう聞くとおいそれと手が出せないメーカーのように思えるが、実はコンシューマー向けに低価格・高品質なマイクもラインアップされている。

 元々はApple社の後押しを受けて、音楽録音ソフトで使用するためのUSBコンデンサーマイクを開発したのがコンシューマー向けマイクを作るきっかけだった。USBケーブルだけで接続できるコンデンサーマイクは好評で、今もコンピューターと親和性の高い製品を多く開発している。

 中でもYetiシリーズは、ポッドキャストや動画配信をおこなうユーザーに広く支持されている。実は筆者もYetiを使っており、便利だと感じた部分もあった。だがやはりコンデンサー部が小さいためか音質に不満を感じていた。
 
USB接続で給電からマイクとしての認識まで一度に行うことができ、
リアルタイムでモニタリングできる設計が好評のYetiシリーズ
 
Yetiはスイッチで指向性(マイクが集音する向き)を変えられる反面、
センサーが小さいSpark SLは指向性が変えられずCARDIOID MODEのみとなっている

 一方でSpark SLは感度だけとっても音質の差も歴然で、Yetiが4.5mV/Paなのに対して34.9mV/Paと7.7倍になっている。動画撮影時に使用すると明瞭でとても聞き取りやすく、また高音から低音までの成分を余すところなく録音できている印象だった。Yetiも手軽でいいが、価格は1万8000円弱とそれなりにする。対してSpark SLは2万5000円程度なので、これくらいの金額差なら断然Spark SLが良いというのが使ってみた感想だった。
 
高額なシグネイチャーシリーズ以外にエッセンシャルとしてラインアップされるマイク群。
ハイエンドのBABY BOTTOLE SLでも4万円代と手が出せない金額ではない

※今回紹介しているのはSPARK SLのブラックエディションであるBLACKOUT SPARK SL(右端)

何が一番マイクによる音質の違いに影響するのか?

 一般的にあまり知られていないが、おそらく一番音質に影響するのが「マイクの種類」だ。特殊なものを除きマイクには「ダイナミック」と「コンデンサー」の2種類がある。今回紹介しているSpark SLはコンデンサーマイクにあたる。ダイナミックマイクは乱暴に扱っても壊れず、電源も不要で比較的安価だがマイクの感度自体は低い。通常用途ならこれで事足りるため、カラオケや司会、講義で使われるものなどは、ダイナミックマイクが使われることがほとんどだ。

 対してコンデンサーマイクは振動や湿度に弱く、電源も必要だが感度が非常に高い。そのためレコーディングスタジオなどプロの現場で使われることが多かった。これが現在、ゲーム配信など個人で配信する人の中で再び見直されてきている。安価なものが多くなってきたことも一因だが、やはり音質が圧倒的に違うことが大きな理由だろう。それだけ視聴者が動画を見る際に音声の影響を受けるということではないだろうか。

なぜコンデンサーマイクは音がいいのか?

 ダイナミックマイクは頑丈だが空気の振動を電気に変換する仕組みなので、電流を起こせないほど微細な振動をひろうことができない。それに対してコンデンサーマイクは、すでに電圧のかかった2枚の電極の間の電力量の変化を、音の信号として取り出すことができる。微細な振動でも電力量は変化するため、繊細な音まで録音できるのだ。

 ただし、コンデンサーマイクは前述したとおり常に通電させていなければならないため、ファンタム電源と呼ばれる電源を何かしらの形で供給しなければならない。接続の仕方は後述するが高品質な音声が録れる分、接続が煩雑なのは事実だ。
 
高感度なので振動などのノイズが乗らないようショックマウントも付属している
 
実際はこのような形でマイクブームに接続すると、配信の際に口元付近にとどめておけて便利

接続して使ってみると普通のマイクに戻れないクオリティ

 前述したとおり、Spark SLは電源供給しなければならないほか、コネクタにはコンピュータと直結できるものがないため、基本的にはオーディオインターフェースを使って接続することになる。

 筆者がおすすめなのはevo4というコンパクトなオーディオインターフェースで、オートゲイン機能があるため、ボタンを押して声を出すだけで最適な音量に調整してくれる。初心者はマイクの音量(ゲイン)をどのくらいにしたら良いかでつまずくことが多いので、この機能は便利だと思う。
 
evo4にはファンタム電源(48V)も搭載されており、
初心者も簡単にコンデンサーマイクを使い始められる
 
 このオーディオインターフェースにマイクを接続し、コンピュータへUSBケーブルでつなげるだけでSpark SLがコンピュータのマイクとして認識される。あとは動画配信時にこれを選べばいいわけだ。初めてだと尻込みするかもしれないが、やってみると簡単なのでチャレンジしてもらいたい。

 ここまで書いてきたが、やはり音声を聞いてみたいという読者も多いだろう。実際に音声を聴き比べたい方は8月2週目以降にYouTubeチャンネル「新きむら家」で、YetiとSpark SLの比較動画をアップするのでそちらをご覧いただきたい。

 マイクというのは他のガジェットとライフサイクルが違い、高品質なものは一生モノと言えるくらい使えるし、モデルチェンジも少ない。マイクに少しお金をかけて差別化すると視聴者の反応が変わると思うので息の長い製品として手元に置いてみてはいかがだろうか。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。