iPadの対抗馬として通用するか 「HUAWEI MatePad Pro」の実力検証
タブレット端末市場は長らくアップルのiPadの一強だ。3~4月にかけて在庫不足で一時的に販売台数シェアを下げたが、5月にすぐさま7割近くの水準まで復帰。他のメーカーの製品が選ばれるケースは「安いから」という理由が多いように思う。そんな固定化された市場に一石投じる可能性があるのが、ファーウェイが6月12日に発売した「HUAWEI MatePad Pro(MatePad Pro)」だ。
ファーウェイは、タブレット端末市場でアップルに次ぐ2番手につける。売れ筋は、「HUAWEI MediaPad T5」「HUAWEI MediaPad M5 lite」など、価格がお手頃ながら性能に優れる、コスパの良いモデルだ。「iPadは高すぎる!」というユーザーの受け皿になっているという見方もできる。MatePad Proはこうした「iPadが無理なら」という購入時の心理を「iPadか、MatePadか」に変えるかもしれない。
実機をみて真っ先に思い浮かぶのが、iPadの最上位機種「iPad Pro」だ。極狭ベゼルのフルビューディスプレイで画面占有率が非常に高い。特徴的なのは、カメラ位置でiPad Proが上部中央のベゼル内に搭載しているのに対して、MatePadが画面内の上部端にパンチホールのように備えられている。
画面サイズは約10.8インチ。iPad Proの11インチと比較すると、MatePad Proは縦長だ。その分、数値以上にコンパクトに見える。重さは、iPad Proが471gに対して、MatePad Proが460g。体感としてさほど違いはないが、スリムなMatePad Proの方が重心が偏らず、片手に持ったときは楽に感じた。
MatePad Proを起動して最初に感動するのは、画面の美しさだ。解像度がWQXGA(2560×1600)と高精細なのはもちろん、DCI-P3という広色域をカバーする規格を採用することで細やかな色表現を実現している。写真のビューワーとしても重宝しそうだ。スピーカーは上下に二つ、合計四つを備えるので音楽や映像の再生でも臨場感が高かった。
ハイスペックもMatePad Proの売りの一つだ。CPUにはファーウェイスマートフォンの最上位機種などでも採用されている「HUAWEI Kirin 990」をオクタコアで搭載。RAMは6GBでマルチタスクも余裕の快適動作だった。GPUは16コア積んでおり、グラフィックスの表現力もきわめて高い。ゲーミングにも適したタブレット端末といえるだろう。
もう一つの売りが、別売の純正スタイラスペン「HUAWEI M-Pencil」の存在だ。現在のiPadがペンの進化によって新たな価値を獲得したように、MatePad Proもペン操作によって、その用途はかなり広がる。書き味も悪くない。メモだけでなく図やイラストを書いたりというニーズにもばっちり応えてくれそうだ。
機能でぜひ活用したいのが、二つのアプリで同時に作業できる「マルチウインドウ」だ。メモ書きしながらブラウザやSNSを確認するなど、一気にタブレットの可能性が広がる。先述したように、スペックが高いので動作は非常にスムーズだった。
懸念があるとすれば、MatePad ProはAndroidをベースにしたOSを搭載しているが、米国の禁輸措置によってGoogleのモバイルサービス(Google MapやGoogle Drive、Gmail、Googleプレイストアなど)を利用することができない。アプリは、ファーウェイ純正の「HUAWEI AppGallery」からインストールできるものに限定される。
HUAWEI AppGalleryは以前にも使用したことがあったが、今回改めてストアを眺めていると、だいぶ利用頻度の高いアプリが増えた印象だ。例えば、コミュニケーションツールとして必須の「LINE」、動画配信アプリ「U-NEXT」などが使えるようになった。また、アマゾンアプリストアを経由することで「Amazon Prime Video」や「Kindle」なども使うことができた。
とはいえ、現時点では使えないアプリもある。「Netflix」はアプリはなく、プリインストールしてあるブラウザも対応していなかった。Spotifyなどの音楽ストリーミング系のサービスもあまり選択肢がなく、これからの拡充に期待したいところだ。
MatePad Proの市場想定価格は5万9800円で、ストレージ容量が同じ128GBの「iPad Pro 11インチモデル」の8万4800円と比較すると2万5000円安い。もちろん、iPad独自の機能やカメラ性能、使い勝手の良さなどもあるので単純に比べるのは適切ではないかもしれないが、自分がタブレット端末に求める用途を考慮してMatePad Proに魅力を感じるユーザーも多いだろう。
タブレット端末は在宅における余暇を埋めるデバイスとして、テレワークのパートナーとして今後も需要は拡大が見込まれている。そんな状況で、ハイエンドモデルの選択肢がiPadくらいしかないというのは寂しい。MatePad Proによって、市場にもたらされる変化にも注目したい。(BCN・大蔵大輔)
ファーウェイは、タブレット端末市場でアップルに次ぐ2番手につける。売れ筋は、「HUAWEI MediaPad T5」「HUAWEI MediaPad M5 lite」など、価格がお手頃ながら性能に優れる、コスパの良いモデルだ。「iPadは高すぎる!」というユーザーの受け皿になっているという見方もできる。MatePad Proはこうした「iPadが無理なら」という購入時の心理を「iPadか、MatePadか」に変えるかもしれない。
実機をみて真っ先に思い浮かぶのが、iPadの最上位機種「iPad Pro」だ。極狭ベゼルのフルビューディスプレイで画面占有率が非常に高い。特徴的なのは、カメラ位置でiPad Proが上部中央のベゼル内に搭載しているのに対して、MatePadが画面内の上部端にパンチホールのように備えられている。
画面サイズは約10.8インチ。iPad Proの11インチと比較すると、MatePad Proは縦長だ。その分、数値以上にコンパクトに見える。重さは、iPad Proが471gに対して、MatePad Proが460g。体感としてさほど違いはないが、スリムなMatePad Proの方が重心が偏らず、片手に持ったときは楽に感じた。
MatePad Proを起動して最初に感動するのは、画面の美しさだ。解像度がWQXGA(2560×1600)と高精細なのはもちろん、DCI-P3という広色域をカバーする規格を採用することで細やかな色表現を実現している。写真のビューワーとしても重宝しそうだ。スピーカーは上下に二つ、合計四つを備えるので音楽や映像の再生でも臨場感が高かった。
ハイスペックもMatePad Proの売りの一つだ。CPUにはファーウェイスマートフォンの最上位機種などでも採用されている「HUAWEI Kirin 990」をオクタコアで搭載。RAMは6GBでマルチタスクも余裕の快適動作だった。GPUは16コア積んでおり、グラフィックスの表現力もきわめて高い。ゲーミングにも適したタブレット端末といえるだろう。
もう一つの売りが、別売の純正スタイラスペン「HUAWEI M-Pencil」の存在だ。現在のiPadがペンの進化によって新たな価値を獲得したように、MatePad Proもペン操作によって、その用途はかなり広がる。書き味も悪くない。メモだけでなく図やイラストを書いたりというニーズにもばっちり応えてくれそうだ。
機能でぜひ活用したいのが、二つのアプリで同時に作業できる「マルチウインドウ」だ。メモ書きしながらブラウザやSNSを確認するなど、一気にタブレットの可能性が広がる。先述したように、スペックが高いので動作は非常にスムーズだった。
懸念があるとすれば、MatePad ProはAndroidをベースにしたOSを搭載しているが、米国の禁輸措置によってGoogleのモバイルサービス(Google MapやGoogle Drive、Gmail、Googleプレイストアなど)を利用することができない。アプリは、ファーウェイ純正の「HUAWEI AppGallery」からインストールできるものに限定される。
HUAWEI AppGalleryは以前にも使用したことがあったが、今回改めてストアを眺めていると、だいぶ利用頻度の高いアプリが増えた印象だ。例えば、コミュニケーションツールとして必須の「LINE」、動画配信アプリ「U-NEXT」などが使えるようになった。また、アマゾンアプリストアを経由することで「Amazon Prime Video」や「Kindle」なども使うことができた。
とはいえ、現時点では使えないアプリもある。「Netflix」はアプリはなく、プリインストールしてあるブラウザも対応していなかった。Spotifyなどの音楽ストリーミング系のサービスもあまり選択肢がなく、これからの拡充に期待したいところだ。
MatePad Proの市場想定価格は5万9800円で、ストレージ容量が同じ128GBの「iPad Pro 11インチモデル」の8万4800円と比較すると2万5000円安い。もちろん、iPad独自の機能やカメラ性能、使い勝手の良さなどもあるので単純に比べるのは適切ではないかもしれないが、自分がタブレット端末に求める用途を考慮してMatePad Proに魅力を感じるユーザーも多いだろう。
タブレット端末は在宅における余暇を埋めるデバイスとして、テレワークのパートナーとして今後も需要は拡大が見込まれている。そんな状況で、ハイエンドモデルの選択肢がiPadくらいしかないというのは寂しい。MatePad Proによって、市場にもたらされる変化にも注目したい。(BCN・大蔵大輔)