ゲーミフィケーションによって工夫された続けやすいトレーニング
実際使ってみるとトレーニングも直感的で使いやすく好印象だった。バンドとイヤホンをつけ、アプリでセッションを開始したらリラックスして目をつぶる。すると雨や波など自然の音が聞こえてくるので、呼吸に集中しながら心を落ち着けていく。正しく瞑想モードに入れていると自然の音は静かになり、やがて鳥の声が聞こえてくる。反対にうまくできていないと嵐になり、激しい雨や波の音とともに鳥はどこかにいってしまう。セッションが終わると何匹の鳥が鳴いたかとともに、脳の状態がグラフ化される。これを毎日保存して精度を高めていくわけだ。
瞑想だけでなく睡眠の質も改善
ここまでの瞑想トレーニング機能だけでも秀逸な仕上がりだが、Muse Sには睡眠の質を高める機能も付いている。価格は従来のMuse 2にくらべ1.4倍とかなり高くなってはいるが、後述するデータを見てもらえば納得できるのではないだろうか。そのくらいこの「Go-to-Sleep機能」と呼ばれる新機能はすぐれていた。Go-to-Sleep機能でも、瞑想と同じくセンサーからのリアルタイムデータを使って睡眠を改善していく。違うのは意図的にトレーニングするわけではなく、ヘッドバンドとイヤホンをつけてベッドに横になるだけ、という部分だ。客観的に効果を測定するために「Auto Sleep」という別のアプリも併用し、計測を試みた。結果は驚きで、Museをつけて寝た時の方が明らかに睡眠が改善されている。
長時間寝ても深い睡眠が少なかった使用前にくらべ、Go-to-Sleep機能で就寝した場合は睡眠時間が短くても深い眠りが多くなっているのがわかる。また心拍数の平均値の低下も深い眠りであるノンレム睡眠がきちんと訪れている証拠だ。
日中も以前よりも疲れが取れている実感がある。正直ここまでの違いが出るとは思っていなかったので非常に驚いた。(※睡眠の質はレム睡眠とノンレム睡眠がバランスよく交互に来ると良いと言われている。深い眠りであるノンレム睡眠だけが多くても質がいいとは言えないそうだ。)
1か月間使ってみて、瞑想のみでも仕事のパフォーマンスに違いは出たが、睡眠の質においてもここまでの結果を出せるデバイスは正直”買い”だろう。先進的なガジェットの中には発展途上のものも多いがMuseに限って言えば実用段階だと断言できる。あえてデメリットを上げるとすれば英語にしか対応していないというところだろうか。
「頭が冴えない」といった漠然とした悩みは意識的に行動しても改善しづらい。だがMuse Sのようなデバイスがあれば、具体的な数値や結果を元に自分を最適化していける。現代社会において、集中力や睡眠の質を数値に基づいて改善できるのは大きなメリットだ。
睡眠に関しては他にも多くのスリープテックが存在するが、脳波をリアルタイムに活用しながら改善していく手法は、単に結果を教えてくれるものよりも効果的だと感じた。現在コンテンツは英語のみの展開だが、国内製品にない先進性と実用性を感じたので読者もぜひ試してみてほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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