迫力あふれる映像とサウンド
DCI-P3の広色域と最大500nitsのピーク輝度をカバーする大型のディスプレイはデスクトップでのシアター鑑賞にも打ってつけだからだ。しかも、16インチのMacBook ProはノートPCの常識を超えるほどパワフルなスピーカーを内蔵している。キーボードの左右には高域用のツイーターを1基、中低域用のウーファーを2基備えた2ウェイ・3スピーカーシステムをそれぞれ搭載する。2基のウーファーユニットは背面対向配置として、不要な振動を打ち消す構造を採用。歪みのないクリアな低音再生を特徴としている。アップルはこれを「フォースキャンセリングウーファー」と名付けて新しいMacBook Proの看板テクノロジーの一つに掲げている。
最新のmacOSがドルビーアトモス再生にも対応していることから、コンテンツの音声をドルビーアトモスで収録している映画やドラマは、特に高さ方向にも限界を感じさせない広がり感も鮮やかなプレイバックが楽しめる。
秋にスタートしたアップルのオリジナル動画コンテンツ配信サービス「Apple TV+」の再生とは特に相性が良い。ドラマ「ザ・モーニングショー」は4K収録された映像がとても緻密で、16インチのワイドな画面に表示すると没入感が一段と際立ってくる。
音声もドルビーアトモスで収録されているので、包囲感がとてもリアルだ。ダイアローグも明瞭で聴きやすい。何よりキーボードの側にスピーカーが内蔵されているはずなのに、サウンドは画面からまっすぐ聞こえてくるような感覚がある。画音一体の迫力あふれるコンテンツ体験が得られるよう、丁寧にチューニングされたスピーカーがワンランク上のデスクトップエンターテインメント体験を満喫させてくれるはずだ。
キーボードの打鍵感が心地よい
新しい16インチのMacBook Proはビジネスツールとしても大いに活躍してくれそうだ。新設計のキーボードがよく出来ている。ベースの設計を再びシザー式として、キーの裏側に打鍵のインパクトを吸収するラバードーム素材を配置した。キーストロークは従来の15.4インチのRetinaディスプレイを搭載するMacBook Proの約0.5mmから約1.0mmに変更して、キーキャップも入れ替えた。これによりタイピング時の安定感が格段に増している。柔らかな打鍵感なので、長時間のテキスト入力も疲れにくい。そして静かにタイピングができる。
なお16インチのMacBook ProはTouch Bar搭載を標準仕様としている。Touch IDセンサーを内蔵する電源キーだけでなく、EscapeキーもTouch Barから独立配置に戻った。特にプログラミングの用途にMacBookを使う方は安堵したのではないだろうか。
ビデオ会議にも真価を発揮する高性能マイク
本体に内蔵するマイクの静音性能も高められている。ノイズレベルを下げてクリアに集音ができる3基のマイクによるアレイシステムは「外付けマイクを使わずにスタジオ品質の録音ができるグレード」であるとアップルは説明している。たとえ実際に音楽の録音製作作業に使うあてはなかったとしても、FaceTimeなどビデオ会議用アプリケーションを使った遠隔会議に実力をいかんなく発揮してくれそうだ。Siriの聴き取りも鋭く正確だ。バッテリーは100Wh(約27,000mAh)の大容量。Apple TVアプリケーションによる動画再生は最大11時間もサポートしているので、飛行機による長旅も安心だ。96W USB-C電源アダプターが同梱されている。
最後にもう一度基本に立ち戻って、16インチの大きなRetinaディスプレイをクリエイター的に活用する方法も追求してみた。わが家にあるワコムの液晶タブレットをMacBook Proに接続して、ペン入力で画像データの細かな補正作業ができるようになると、画面の大きさも助けて、作業がとてもスムーズに運んだ。MacBook Proは高価なノートPCだが、よりコンパクトな液タブと一緒に持ち運びながら場所を選ばず創作作業ができるようになるので、作業効率は間違いなくアップするだろう。
アップルの直販サイトから購入する場合はCPUにメモリ、ストレージなどスペックを自由にカスタマイズできる。最新のMacBook Proはさまざまななユーザーの期待に応えてくれる万能マシンになりそうだ。(フリーライター・山本敦)