「HUAWEI P30 Pro」をハンズオン!“4眼”でスマホカメラはどう変わる?

 【パリ発】 2018年3月にファーウェイ・テクノロジーズが発表した「HUAWEI P20 Pro」はトリプルカメラ構成を採用し、スマートフォンカメラの限界を超えてみせたエポックメイキングな一台だった。さすがにこのレベルのステップアップはもう数年先だろうと思っていたが、1年後の3月26日(パリ・現地時間)に発表された「HUAWEI P30 Pro」は予想を良い意味で裏切った。新たに採用した“4眼”でスマホカメラはどう変わるのか。ハンズオンした印象をもとにレポートしたい。

スマホカメラの限界を軽く超えてきた「HUAWEI P30 Pro」をハンズオン!

 約6.47インチの有機ELディスプレイ(2340×1080、FHD+)を搭載する「HUAWEI P30 Pro」のアウトカメラは、2000万画素/F2.2の超広角レンズ、4000万画素/F1.6の広角レンズ、800万画素/F3.4/5倍ズームのペリスコープレンズ、ToFセンサーで構成される。
 
背面の4眼レンズ

光学との区別は困難 超高精細のハイブリッド10倍ズーム

 キーテクノロジーとなるのが、屈折光学技術したペリスコープレンズ。複数のレンズが組み合わさることで、実現する焦点距離は16~1343mm。実際に発表会が行われたパリコンベンションセンターから見えるエッフェル塔を撮影して、その仕上がり具合を確認してみた。

 建物内からの撮影となったため、ガラスの反射があるのはご容赦いただきたい。まずは超広角からの1枚。エッフェル塔を中心にパリ市街の全景を撮影した。事前情報がなければ、初見ではエッフェル塔はどこに映っているかもわからない豆粒大のサイズだ。
 
超広角で撮影

 徐々に1倍、5倍……と倍率を上げていく。光学ズームの最大値である5倍まで拡大すると、エッフェル塔のディテールがくっきりと確認できる。鉄柱の入り組んだ重なりなどもつぶれずに繊細に再現できている。手前にある看板の文字も十分に読み取れるレベルだ。
 
光学1倍ズームで撮影
 
光学5倍ズームで撮影


 ハイブリッド10倍ズームまで倍率を上げると、エッフェル塔がすぐそばにあるほどのサイズに。正直、この写真からでは光学ズームとの差を感じ取りにくいくらいには高精細。鉄柱の本数を数えることもできそうだ。
 
ハイブリッド10倍ズーム。光学ズームと大差ない高精細な写真に

 最後に本機のマックス倍率であるデジタル50倍ズーム。ここまでくるともはや見えてくる景色は望遠鏡級。広角ではどこにあるか判別できなかったエッフェル塔の最上部にぐっとフォーカスできた。さずがに焦点距離が1000mmを超えているので、光学手ブレ補正を搭載しているとはいえ、手持ちだとブレは多少出る。三脚・一脚などで固定して撮影するのがベターだろう。
 
もはや望遠鏡レベルのデジタル50倍ズーム。
撮影には三脚・一脚を用意したいところ

実力は高級カメラ並み 使いやすさはスマホならでは

 次に高倍率と同じくらいインパクトのある、高感度撮影の実力を検証してみた。「HUAWEI P30 Pro」はカメラセンサーを従来のRGGBからRYYBに変更。これは世界初の試みで、黄色のフィルターの働きで従来より約40%多い光を取り込むことが可能だという。ISO感度は驚きの40万9600。過去のスマホをはるかに上回るスペックだけに、どんな写真に仕上がるのか、想像がつかないが果たして。

 ISO40万9600がどれだけ凄いのかを証明するには、完全な暗闇を用意する必要がある。肉眼ではどこにあるのかも分からない被写体にカメラを向けて、撮影すると……暗闇の中に隠れていたフィギュアがくっきりと浮かび上がった。長時間露光する必要もなく、何も考えずにシャッターを切るだけ。手元を撮影する一眼レフの設定の方が苦労する。
 
完全な暗闇から複数の動物のフィギュアが浮かび上がった

 より使用頻度の高そうな例として、今度は薄暗い部屋での撮影を試みた。せっかくなので、高倍率も組み合わせて、どれだけ繊細な写真に仕上がるか見ていこう。まず、被写体を中心に配置した広角レンズによる1枚。周囲の黒はしっかりと沈み込みつつも、モデルが着用するドレスの色味や質感はつぶれることなく表現できている。
 
超広角で撮影

 1倍、5倍、10倍まで寄っていっても、感度は常にベストな状態を保ち続ける。10倍のハイブリッドズームでもざらつくことなく、モデルの表情や化粧の濃淡まで丁寧に描写。この美しさがうまく撮影した結果ではなく、誰もがテクニックいらずで手に入れることができる表現力なのだから、恐れ入る。
 
光学5倍ズームで撮影
 
ハイブリッド10倍ズームで撮影

 ズーム撮影と暗所撮影はスマホカメラの短いながら凝縮した進化の歴史においても、なかなか満足いくレベルを達成できなかった、いわば鬼門。少しずつ改善されているものの、積極的には触れたくない領域の話だった。

 「HUAWEI P30 Pro」がその弱点の克服に大きな一歩を踏み出したことで、スマホカメラは同じスマホの中だけで比較するものではなくなるはずだ。専用機材としてのカメラとも張り合える存在(すでに一部では凌駕しているが)として、より高い次元の競争となるだろう。

 また、SNSで目にする写真群も現在とは変わったものになるかもしれない。セルフィ―がユーザー目線で進化を遂げてきたように、高倍率&高感度をどのようにユーザーが使いこなすかはまだ未知数。新たなトレンドが誕生する可能性に期待したい。(BCN・大蔵 大輔)