情報処理推進機構(IPA)と未踏は3月8日、都内で「未踏会議2019」を開催した。突出したIT能力を持つ人材の発掘・育成を行う未踏事業の意義や成果の一端を広めるイベントで今回が5回目。これまで毎年3月10日の未踏の日に開催してきたが、今年は10日が日曜日だったため、開催を2日早めた。
第1部の「未踏シンポジウム」では、開催にあたって未踏統括プロジェクトマネージャーで東京大学の竹内郁雄 名誉教授がスピーチ。「未踏はこれまで1600人の修了生を輩出してきた。うち3分の1が大学や研究機関に、3分の1が企業に進み、残りの3分の1が起業した。プリファード・ネットワークス、スマートニュース、グノシー、トレジャーデータなど、今を時めくベンチャーが未踏から生まれている。これらのベンチャーだけでも評価額が5000億円を超えるとの試算もある。未踏事業20年の歴史で使われた予算の数十倍にも及ぶ価値を創出した。さらに、未踏修了生を軸にしたコミュニティーも大きな価値を生む集合体だ。未踏から育つ多様な才能を持つ人たちが日本を活性化すると固く信じている」と話した。
続いて、未踏統括プロジェクトマネージャーで慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の夏野剛 特別招聘教授が基調講演を行った。「未踏は出身者や応募者の優秀さが一番の財産。未踏事業は、25歳未満を対象にIT人材の発掘・育成を行う本体の『未踏』に加え、起業家や事業家を育成する『未踏アドバンスト』、次世代の先端IT技術者を育成する『未踏ターゲット』、17歳以下のIT人材を育成する『未踏ジュニア』と広がり、大きなエコシステムを形成している。最近いくつかの省庁から、未踏のようなことをしたい、という相談を受けることがあり『パクリ』も増えてきた。しかし、未踏は組織としてのノウハウやコミュニティーがあればこそ。予算や人を用意しただけでは簡単に真似はできない。最近の傾向としては、モノづくりとソフトウェアを組み合わせた、時代を反映したプロジェクトが多く生まれている。2018年度の成果発表は6月上旬に行う。腕と知恵があれば、少ない予算でここまでできるということが分かっていただけると思う」と語った。
「未踏人材エコシステムの今後の発展」と題した未踏IT人材発掘・育成事業、未踏アドバンスト事業のパネルディスカッションでは、モデレーターに多摩大学(MBA)客員教授で本荘事務所の本荘修二 代表を迎え、活発な議論を展開した。パネリストとして登場した、未踏プロジェクトマネージャーで明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の五十嵐悠紀 専任准教授は「2004年と2005年に未踏事業に採択され、スーパークリエーターの認定をいただいた。題材はコンピューターグラフィックスを使って手芸設計支援をするシステムだったが、それがそのまま現在の研究テーマにつながっている。未踏事業でプロジェクトマネージャーとして採択プロジェクトを導く立場になって3年目。未踏の大きなテーマは人材育成。危なっかしいけれど、これはすごいと思えるものや、今この人がやらなければならないと思えるプロジェクトを採択したい。また女性もどんどん応募してほしい」と話した。
未踏アドバンスト事業のプロジェクトマネージャーでウルシステムズの漆原茂 代表取締役社長は「プログラミングが大好きで毎日コードを書いている。円周率をひたすら読経するというのが趣味の一つ。未踏プロジェクトのメンバーにも全員やらせようと思っている。プロジェクトを採択するには圧倒的に人物を見る。聞いたこともないようなことをまじめに本気でやろうとする人を支援したい。クリエイター、イノベーターである彼らの未来の可能性をどれだけ広げられるかが重要。また、プロジェクト成功のためには、技術もさることながらチームワークも欠かせない。そのあたりを重点的にアドバイスしている」と話した。また未踏プロジェクトマネージャーでさくらインターネットの田中邦裕 代表取締役社長は「今期からプロジェクトマネージャーになった。三つのプロジェクトを担当している。小学生の時からロボコンに興味があって、高専に入って実際にやっていた。エンジニアでありながら会社を創業し27歳で上場を果たした。憧れだったが応募できなかった未踏に、プロジェクトマネージャーとしてかかわれることになって感慨深い。なぜという動機が明確なプロジェクトなら、成長も期待できるし応援したい。未踏は触媒だらけのコミュニティー。応募の時点から最終的なアウトプットまでの成長度合いがものすごいのが未踏の特徴だ」と話した。
第1部の最後に未踏の修了生6名が登壇し、採択されたプロジェクトから現在取り組んでいる課題や仕事についてプレゼンテーションなどが行われた。続いて開いた第2部の「未踏Night」では、共催の経済産業省から世耕弘成 経済産業大臣があいさつに立ち「今週はほとんど国会にいたが、このようなフレッシュで前向きで未来志向の皆さんと出会えることはとてもいいし、気持ちの切り替えにもなる。未踏は20年の歴史があるが、始めた当初は停滞の時代だった。その中で、能力ある個人に未来を託そうと始まった。未踏修了生の活躍は目覚ましい。日本だけでなく欧米で起業される方も珍しくない。これからもどんどん日本を引っ張っていってほしい。今年経済産業大臣として初めて米ラスベガスのCESを見に行った。今回、経産省もバックアップして、初めて小さいながらも日本のスタートアップを集めたブースを展開した。隣にはフランスのスタートアップを集めた巨大なブースがあったが、日本は5年以内に追い越せると思う。CESで感じたことは、世界は大したことはない、ということ。全て想像の範囲内の技術やサービスばかり。十分逆転が可能だ。未踏の皆さんの力も借りて、CESで日本の技術はすごいということを近いうちに打ち出していきたい。特に日本は課題先進国。日本発の技術やサービスを打ち出すチャンスにあふれている」と話した。(BCN・道越一郎)
第1部の「未踏シンポジウム」では、開催にあたって未踏統括プロジェクトマネージャーで東京大学の竹内郁雄 名誉教授がスピーチ。「未踏はこれまで1600人の修了生を輩出してきた。うち3分の1が大学や研究機関に、3分の1が企業に進み、残りの3分の1が起業した。プリファード・ネットワークス、スマートニュース、グノシー、トレジャーデータなど、今を時めくベンチャーが未踏から生まれている。これらのベンチャーだけでも評価額が5000億円を超えるとの試算もある。未踏事業20年の歴史で使われた予算の数十倍にも及ぶ価値を創出した。さらに、未踏修了生を軸にしたコミュニティーも大きな価値を生む集合体だ。未踏から育つ多様な才能を持つ人たちが日本を活性化すると固く信じている」と話した。
続いて、未踏統括プロジェクトマネージャーで慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の夏野剛 特別招聘教授が基調講演を行った。「未踏は出身者や応募者の優秀さが一番の財産。未踏事業は、25歳未満を対象にIT人材の発掘・育成を行う本体の『未踏』に加え、起業家や事業家を育成する『未踏アドバンスト』、次世代の先端IT技術者を育成する『未踏ターゲット』、17歳以下のIT人材を育成する『未踏ジュニア』と広がり、大きなエコシステムを形成している。最近いくつかの省庁から、未踏のようなことをしたい、という相談を受けることがあり『パクリ』も増えてきた。しかし、未踏は組織としてのノウハウやコミュニティーがあればこそ。予算や人を用意しただけでは簡単に真似はできない。最近の傾向としては、モノづくりとソフトウェアを組み合わせた、時代を反映したプロジェクトが多く生まれている。2018年度の成果発表は6月上旬に行う。腕と知恵があれば、少ない予算でここまでできるということが分かっていただけると思う」と語った。
「未踏人材エコシステムの今後の発展」と題した未踏IT人材発掘・育成事業、未踏アドバンスト事業のパネルディスカッションでは、モデレーターに多摩大学(MBA)客員教授で本荘事務所の本荘修二 代表を迎え、活発な議論を展開した。パネリストとして登場した、未踏プロジェクトマネージャーで明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の五十嵐悠紀 専任准教授は「2004年と2005年に未踏事業に採択され、スーパークリエーターの認定をいただいた。題材はコンピューターグラフィックスを使って手芸設計支援をするシステムだったが、それがそのまま現在の研究テーマにつながっている。未踏事業でプロジェクトマネージャーとして採択プロジェクトを導く立場になって3年目。未踏の大きなテーマは人材育成。危なっかしいけれど、これはすごいと思えるものや、今この人がやらなければならないと思えるプロジェクトを採択したい。また女性もどんどん応募してほしい」と話した。
未踏アドバンスト事業のプロジェクトマネージャーでウルシステムズの漆原茂 代表取締役社長は「プログラミングが大好きで毎日コードを書いている。円周率をひたすら読経するというのが趣味の一つ。未踏プロジェクトのメンバーにも全員やらせようと思っている。プロジェクトを採択するには圧倒的に人物を見る。聞いたこともないようなことをまじめに本気でやろうとする人を支援したい。クリエイター、イノベーターである彼らの未来の可能性をどれだけ広げられるかが重要。また、プロジェクト成功のためには、技術もさることながらチームワークも欠かせない。そのあたりを重点的にアドバイスしている」と話した。また未踏プロジェクトマネージャーでさくらインターネットの田中邦裕 代表取締役社長は「今期からプロジェクトマネージャーになった。三つのプロジェクトを担当している。小学生の時からロボコンに興味があって、高専に入って実際にやっていた。エンジニアでありながら会社を創業し27歳で上場を果たした。憧れだったが応募できなかった未踏に、プロジェクトマネージャーとしてかかわれることになって感慨深い。なぜという動機が明確なプロジェクトなら、成長も期待できるし応援したい。未踏は触媒だらけのコミュニティー。応募の時点から最終的なアウトプットまでの成長度合いがものすごいのが未踏の特徴だ」と話した。
第1部の最後に未踏の修了生6名が登壇し、採択されたプロジェクトから現在取り組んでいる課題や仕事についてプレゼンテーションなどが行われた。続いて開いた第2部の「未踏Night」では、共催の経済産業省から世耕弘成 経済産業大臣があいさつに立ち「今週はほとんど国会にいたが、このようなフレッシュで前向きで未来志向の皆さんと出会えることはとてもいいし、気持ちの切り替えにもなる。未踏は20年の歴史があるが、始めた当初は停滞の時代だった。その中で、能力ある個人に未来を託そうと始まった。未踏修了生の活躍は目覚ましい。日本だけでなく欧米で起業される方も珍しくない。これからもどんどん日本を引っ張っていってほしい。今年経済産業大臣として初めて米ラスベガスのCESを見に行った。今回、経産省もバックアップして、初めて小さいながらも日本のスタートアップを集めたブースを展開した。隣にはフランスのスタートアップを集めた巨大なブースがあったが、日本は5年以内に追い越せると思う。CESで感じたことは、世界は大したことはない、ということ。全て想像の範囲内の技術やサービスばかり。十分逆転が可能だ。未踏の皆さんの力も借りて、CESで日本の技術はすごいということを近いうちに打ち出していきたい。特に日本は課題先進国。日本発の技術やサービスを打ち出すチャンスにあふれている」と話した。(BCN・道越一郎)