フルマラソンで実感!? マルチスポーツウォッチ「Polar Vantage V」を試す

 ポラール・エレクトロ・ジャパンは、手首でランニングパワーを計測できるマルチスポーツウォッチ「Polar Vantage V」を11月8日に発売した。高精度GPSで位置情報を記録し、同時に心拍数を計測するトレーニングモードで最大40時間の連続利用ができるため、アイアンマンレースやウルトラマラソンといった長時間レースにも利用できる。カラーはブラック、ホワイト、オレンジの3色。税別価格は単体で6万9800円で、胸ストラップ型心拍センサー「Polar H10」付きは7万5800円だ。

 今回は、BCNきってのランナー・業界記者最速を自称する『週刊BCN』編集部 畔上文昭編集委員にレビューを依頼し、寄稿いただいた。実際に装着してトレーニングした後、フルマラソンを走ったところ、自己ベストを更新。「ランニングパワーへの意識は価値があるかも」と評価は上々。前編・後編の2回に分けてお届けする。

<ポラール「Polar Vantage V」レビュー(前編)>

 走っていますか! 先日、夜のトレーニング中に転んでしまいました。地味に痛いです。みなさんも、暗い夜道には気を付けて!

 ところで、フルマラソンの自己ベストが更新できないなんて悩みはありませんか。フルマラソンは、何回か完走すると記録が伸びなくなってきます。私の場合、3時間12分31秒の自己ベストを出してから、約3年も更新できていませんでした。「ここままではつらい」。ありがちなマラソンを辞めちゃうケースです。

 そんな私が、ポラール・エレクトロ・ジャパンの「Polar Vantage V」を三週間ほど試用した後のフルマラソンで、自己ベストを更新しました!

 12月9日に佐野市で開催された「さのマラソン」で3時間9分51秒(ネットタイム:3時間9分46秒)を記録。私が頑張った結果ですが、もしかしたら、Polar Vantage Vの効果があったのかも。というわけで、Polar Vantage Vを使ったトレーニングを紹介します。
 
スマートフォンと連動し、トレーニングデータを管理できる「Polar Vantage V」。
デザインは賛否両論ですが、社内では若い女性に評判でした

世界初、ランニングパワーを手首で測定

 Polar Vantage Vは、主にトレーニング向けのマルチスポーツウォッチです。最大の特徴は、「ランニングパワー」を手首で測定できるところ。世界初だそうです。

 で、そのランニングパワーとは「筋肉のがんばりを示す数値」という感じ。単位はW(ワット)で、ランニング以外にも使えます。マラソンのトレーニングでは、一般的に心拍数やペース(タイム)を参考にしますが、それは十分ではありません。心拍数は筋肉に負荷をかけてから、やや遅れて数値が上がります。ペースは、筋肉への負荷だけでなく、コースや気象条件などによって大きく変わります。ちなみに、ポラールによると、ランニングパワーとは「ワット単位の機械的仕事量」だそうです。

 一方、ランニングパワーは、筋肉に負荷をかけたタイミングで数値に反映されます。しっかりと、筋肉に負荷をかけたトレーニングかどうかが分かるというわけ。また、軽く流して走っているときに、筋肉に余計な負荷をかけていないかどうかの把握に役立ちますので、フォームをチェックできます。
 
フルマラソンの距離をジョグペースで計測。ランニングパワーは心拍数と違い、ペースと連動している

 計測結果のグラフを見ると一目瞭然ですが、ペースが急激に上がっているところは、幹線道路の交差点。青信号で渡るためにダッシュしました。ダッシュでペースとランニングパワーが上がっても、心拍数への影響が少ないことが分かります。ちなみに、ペースが急降下しているところは信号待ちです。
 
交差点でダッシュすると、3分/kmを切っていた(画面の真ん中あたり)

 この結果を見ると「ペースとランニングパワーが連動しているなら、ペースが分かれば十分」と思いますよね。その通りなんです。フルマラソンの距離を走ってみても、ランニングパワーの数値が強いのか弱いのか、比較対象のデータがないとピンときません。

毎日のトレーニングを比較すると?

 比較データが欲しくても、フルマラソンの距離では何回もトレーニングできないので、約半分の距離のコースを3日連続で走ってみました。
 
ハーフ距離走、1日目。平均パワーが268Wで、最大は366W
 
ハーフ距離走、2日目。平均パワーが267Wで、最大は358W。前日よりもランニングパワーがやや少ない
 
ハーフ距離走、3日目。平均パワーが265Wで、最大は380W。
3日目ゆえの筋肉痛により、初日よりも2分遅いタイム

 3日間、同じペースを意識して走りましたが、途中で飽きてくるので、気まぐれでダッシュしています。ランニングパワーの最大値のブレは、そのためだと考えられます。平均の数値をみると、心拍数よりもブレが少ないように感じます。

 とはいえ、3日間で同じコースを同じように走っただけでは、何の役にも立ちません。ここまでで100km以上も走ってしまいましたが、ランニングパワーの使い方は、そういうものではないということが分かります。

 ランニングパワーの活用で重要なのは、トレーニングの数値を覚えておくこと。同じコースを走ったときに、タイムが同じでランニングパワーが低いとなれば、フォームがよくなったか、筋肉が付いたかのどちらかになるからです。

 筋肉はすぐに付かないので、フォームを変えてみようと試みましたが、違いはあまり実感できませんでした。3カ月くらいの期間で確認する必要がありそうです。または、インターバル走なら、すぐに数値で把握できるかもしれません。私はインターバル走が苦手なので今回は回避しましたが、次の機会があったら、試そうと思います。

■Profile
畔上文昭(あぜがみふみあき)
週刊BCN編集部 編集委員。業界記者最速(編集部調べ)の市民ランナーとして、マラソン大会やウルトラマラソン大会に出場。月間200kmという少なめのトレーニングでサブスリー(3時間切り)を目指している。このところ注力している取材領域は、量子コンピューター。