OPPOスマホのしたたかな価格戦略、成長の壁は“キャラ被り”
2018年1月の日本市場参入から9か月。これまでエントリーとミドルクラスのスマートフォンを展開していたOPPOが、ついにフラッグシップモデルを投入した。世界初のスライド式カメラを採用したAndroidスマートフォン「Find X」。今年6月にワールドワイドで発表され、ギミックで実現した画面占有率93.8%のフルビューディスプレイが話題になったスマホだ。
「11万1880円」という価格は競合の状況を考慮すると、実はとても戦略的だ。9月21日に発売した「iPhone XS」は最安で税別11万2800円、Googleの「Pixel 3 XL」は最安で税別11万9000円。今秋に注目されている2機種より割安な価格設定になっているのだ。「iPhone XS」「Pixel 3 XL」の最安は64GBモデルなので、256GBが標準の「Find X」は価格差以上にお得なモデルといえる。
一方で物足りなさを感じたのは、防水機能とFelicaの非対応だ。防水機能は本体内部がリフトアップする構造上、現時点では諦めなければならない要素であることは想像がつく。しかし、Felicaは最上位モデルであれば各社が搭載しているだけに、明確なディスアドバンテージといえる。OPPO Japanの鄧宇辰代表取締役によると「技術的には可能」とのこと。今回はいち早い国内投入を優先した結果、省かれたということかもしれない。先行して発売されている「R15 pro」は防水かつFelica対応なので、そちらとの棲み分けという捉え方もできる。
今後、OPPOが日本でポジションを高めていくにあたって壁になってくるのは、一足先に日本市場に参入し、短期間でユーザー数を拡大させたファーウェイだ。足掛かりとなったのはコスパにすぐれるエントリーモデルだが、ここ数年はミドルやハイエンドの支持も高い。OPPOにとっては、まさにロールモデルといえる成長シナリオを辿ってきた。中国企業のブランドイメージ向上はOPPOにとっても追い風だが、同じ方向に成長していけば“キャラ被り”ともいわれることは避けられない。
今回の「Find X」の早期投入には、このキャラ被りをOPPO側も意識して避けようとしている意思を感じた。鄧氏は「Find X」を「現在のスマホの完成形」ではなく「未来のスマホのスタート地点」と紹介したが、OPPOが日本市場に印象づけたいのは、奇抜なアイディアも製品化できる開発力だ。発表会の話題が新製品に終始するのではなく、「5Gに世界で初めて対応したスマホを2019年に投入する」など今後の方向性に波及したこともそれを裏づける。「Find X」がシェア拡大に貢献しなくても、OPPOの独自のキャラを根付かせることができれば戦略としては成功。経営陣はそれくらい割り切った期待を「Find X」にもっているのではないだろうか。(BCN・大蔵 大輔)
「iPhone XS」や「Pixel 3 XL」より安い
2月の「R11s」、8月の「R15 neo」「R15 pro」投入から第三弾となる「Find X」。これまでもっともハイエンドだった「R15 pro」の価格は7万円前後だったが、「Find X」は想定実勢価格は税別11万1880円と突き抜ける。しかし、世界初のカメラやセンサーをスライド式にしたギミックや、メモリ8GBという破格のスペック、独自のAI機能を搭載したカメラ、35分でフル充電が可能な急速充電システムなど、価格に見合う価値は十分に備えている。「11万1880円」という価格は競合の状況を考慮すると、実はとても戦略的だ。9月21日に発売した「iPhone XS」は最安で税別11万2800円、Googleの「Pixel 3 XL」は最安で税別11万9000円。今秋に注目されている2機種より割安な価格設定になっているのだ。「iPhone XS」「Pixel 3 XL」の最安は64GBモデルなので、256GBが標準の「Find X」は価格差以上にお得なモデルといえる。
一方で物足りなさを感じたのは、防水機能とFelicaの非対応だ。防水機能は本体内部がリフトアップする構造上、現時点では諦めなければならない要素であることは想像がつく。しかし、Felicaは最上位モデルであれば各社が搭載しているだけに、明確なディスアドバンテージといえる。OPPO Japanの鄧宇辰代表取締役によると「技術的には可能」とのこと。今回はいち早い国内投入を優先した結果、省かれたということかもしれない。先行して発売されている「R15 pro」は防水かつFelica対応なので、そちらとの棲み分けという捉え方もできる。
成長するほどに無視できなくなるファーウェイという壁
先行して販売している機種の売れ行きについて、鄧氏は「上々」と一言述べただけだった。全国の家電量販店やECショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、OPPOは9月に「R15 neo」「R15 pro」がけん引する形でSIMフリースマホ市場で6.2%のシェアを獲得。ファーウェイ、ASUS、シャープに次ぐ4位に躍り出ている。硬直した市場状況を鑑みれば十分に健闘しているが、鄧氏としては年末に向けて2ケタシェアを達成している心積もりだったのかもしれない。今後、OPPOが日本でポジションを高めていくにあたって壁になってくるのは、一足先に日本市場に参入し、短期間でユーザー数を拡大させたファーウェイだ。足掛かりとなったのはコスパにすぐれるエントリーモデルだが、ここ数年はミドルやハイエンドの支持も高い。OPPOにとっては、まさにロールモデルといえる成長シナリオを辿ってきた。中国企業のブランドイメージ向上はOPPOにとっても追い風だが、同じ方向に成長していけば“キャラ被り”ともいわれることは避けられない。
今回の「Find X」の早期投入には、このキャラ被りをOPPO側も意識して避けようとしている意思を感じた。鄧氏は「Find X」を「現在のスマホの完成形」ではなく「未来のスマホのスタート地点」と紹介したが、OPPOが日本市場に印象づけたいのは、奇抜なアイディアも製品化できる開発力だ。発表会の話題が新製品に終始するのではなく、「5Gに世界で初めて対応したスマホを2019年に投入する」など今後の方向性に波及したこともそれを裏づける。「Find X」がシェア拡大に貢献しなくても、OPPOの独自のキャラを根付かせることができれば戦略としては成功。経営陣はそれくらい割り切った期待を「Find X」にもっているのではないだろうか。(BCN・大蔵 大輔)