山岳写真をレタッチするコツは?―finetrack×BenQコラボによるカラーマネージメントディスプレイセミナー
国産アウトドアメーカー「finetrack(ファイントラック)」と、液晶ディスプレイメーカーのBenQ(ベンキュー)は、山岳写真を専門とするネイチャーフォトグラファー・山写氏を招いたフォトレタッチセミナー「4Kカラーマネジメントモニタによる山岳写真 Lightroom RAW現像講習会」を開催した。午前・午後の2回に同内容で行い、各回6名、計12名が参加。持ち込んだ写真のRAW現像作業を含め、計3時間の長時間にわたった講習会の様子をレポートする。
山写さんは、小学生の頃から山登りに熱中したといい、現在は海外を中心に活躍。ヒマラヤのエベレストやマカルー、カンチェンジュンガ中央峰、ヨーロッパアルプスに登り、山岳写真を撮ってきた。国内では北アルプスと八ヶ岳で活動しつつ、山岳写真のノウハウや注意事項に関しての啓発活動を行っている。今回の講座も啓発活動の一環だ。
登山の技術だけではなく、山岳写真専門フォトグラファーとして、写真の撮影技術、レタッチ技術に精通しており、「彩り豊かな山岳写真において、撮影は全体の工程の半分」と語る。もう半分の工程は、“現像”だ。
「SW271」は、sRGBよりもシアンとグリーンをしっかりと発色できるAdobe RGBのカバー率99%を実現。また、ハードウェアキャリブレーションに対応しており、PC側の設定を変えることなく、直接液晶ディスプレイの発色を調整することができるといった特徴をもつ。
山写さんは、「SW271」について、「Adobe RGBカバー率99%なのは、木々の緑や空の青さを表現することが多い山岳写真にとって非常に重要。また、調整が難しく色が崩れてしまう可能性のあるソフトウェアキャリブレーションに対し、ハードウェアキャリブレーションのほうが簡単な作業で正確な色を実現できる」と、色彩豊かな山岳写真に適したディスプレイだと評した。
次に、山岳写真の撮影技術を紹介。カメラの設定や被写体の探し方、撮影方法や構図のとりかた、ライティングなどについて、作例を提示しながら解説した。
続いて、ハードウェアキャリブレーションを実演。BenQのスタッフがサポートに立ち、キャリブレーターの選び方から、ソフトのダウンロード方法、使い方、ディスプレイの最適な角度、設定方法、入力する数値などを丁寧に説明した。開始してから10分程度でキャリブレーションは終了。参加者からは、「実際にキャリブレーションしているところを見られて、とてもよかった」との声が寄せられた。
ハードウェアキャリブレーションを終えたら、いよいよレタッチに関する講座が始まった。山写さんは「声を大にしておススメはできない」と念を押しつつも、自身が培ったノウハウを伝授した。
具体的には、「山岳写真における色彩学」や「色彩学からみる写真の配色」、「トーンと写真の考え方」など、写真の配色や構図、被写体の選び方について体系的に説明。「山は自然に色の調和が成立するので色彩の破たんはないが、なぜ景色が美しいと感じるのかを色で分析できると、選ぶ構図の選択肢が増える」という。レタッチで自然界の色の調和を乱すと、見え方に違和感を感じてしまう点にも注意が必要だと語る。だからこそ、自分の中でイメージをしっかりと決めてから撮影したのち、「Adobe Lightroom」を使用してRAW現像を開始するといいとアドバイスした。
続けて、山写さんがサポートしながら、参加者が自身で撮影した写真のレタッチに取り組んだ。アドバイスを受けながらレタッチした参加者からは、「あっという間に仕上がった」「完成度がまるで違う」と、喜びの声があがった。
講習会の終了後に参加者に感想をたずねると「4K液晶ディスプレイを使ったことがなかったが、今まで見えなかった細部までこだわって編集することができ、非常に魅力的だった」「家ではiMacを使っているので、ハードウェアキャリブレーションに対応したディスプレイの購入も検討したい」など、編集環境も好評だったようだ。
アウトドア用のウェアやギアを手がけるfinetrackも、山写さん同様、登山に関する啓発活動に力を入れている。山写さんは「登山用品にお金をかけて、安全に山岳写真を楽しむための方法と心構えを伝えることで、少しでも状況を改善していきたい」、finetrackの東京マーケティングルーム 大堀啓太室長は、「一般的なシャツは安くて入手しやすいが、汗をかいて登った高所で撮影タイミングをじっと待つ、といった状況下では体温を保つのに向かない。低体温症などの危険を避けるためにも、しっかり準備して、安全に山岳写真を楽しんでほしい」と訴えた。
今回、ベンキューが講習会を共催した理由は、より広い層にカラーマネジメントディスプレイの便利さを広めるため。山写さんは、「山岳写真の撮影の9割は登山で、その色鮮やかな景色を再現するには現像技術が欠かせない」と話す。ベンキューでは今後もイベントを開催する方針なので、気になる方はホームページやSNSをチェックしておきたい。
つい撮影機材にばかり資金をつぎ込みがちだが、安全な登山技術と山岳写真の撮影技術を身に付け、現像まで本格的にできるようになれば、もっと満足のいく作品を生み出せるだろう。
山写さんは、小学生の頃から山登りに熱中したといい、現在は海外を中心に活躍。ヒマラヤのエベレストやマカルー、カンチェンジュンガ中央峰、ヨーロッパアルプスに登り、山岳写真を撮ってきた。国内では北アルプスと八ヶ岳で活動しつつ、山岳写真のノウハウや注意事項に関しての啓発活動を行っている。今回の講座も啓発活動の一環だ。
登山の技術だけではなく、山岳写真専門フォトグラファーとして、写真の撮影技術、レタッチ技術に精通しており、「彩り豊かな山岳写真において、撮影は全体の工程の半分」と語る。もう半分の工程は、“現像”だ。
現像作業をやりやすくするカラーマネジメントディスプレイ
講習会では、受講者全員にベンキューの4K対応27型カラーマネジメント液晶ディスプレイ「SW271」を用意。後半では、山写さんがサポートしながら、参加者は、自身で撮影した写真のレタッチに取り組んだ。「SW271」は、sRGBよりもシアンとグリーンをしっかりと発色できるAdobe RGBのカバー率99%を実現。また、ハードウェアキャリブレーションに対応しており、PC側の設定を変えることなく、直接液晶ディスプレイの発色を調整することができるといった特徴をもつ。
山写さんは、「SW271」について、「Adobe RGBカバー率99%なのは、木々の緑や空の青さを表現することが多い山岳写真にとって非常に重要。また、調整が難しく色が崩れてしまう可能性のあるソフトウェアキャリブレーションに対し、ハードウェアキャリブレーションのほうが簡単な作業で正確な色を実現できる」と、色彩豊かな山岳写真に適したディスプレイだと評した。
山岳写真の撮影のコツやレタッチに役立つ技術をレクチャー
初めに、山岳写真の基礎知識について、山写さんは、「前提には登山がある。安全に登山・下山できる機材と技術、知識を備えて初めて撮影ができる」と説明。山岳写真にともなう危険への対処の大切さを強調した。次に、山岳写真の撮影技術を紹介。カメラの設定や被写体の探し方、撮影方法や構図のとりかた、ライティングなどについて、作例を提示しながら解説した。
続いて、ハードウェアキャリブレーションを実演。BenQのスタッフがサポートに立ち、キャリブレーターの選び方から、ソフトのダウンロード方法、使い方、ディスプレイの最適な角度、設定方法、入力する数値などを丁寧に説明した。開始してから10分程度でキャリブレーションは終了。参加者からは、「実際にキャリブレーションしているところを見られて、とてもよかった」との声が寄せられた。
ハードウェアキャリブレーションを終えたら、いよいよレタッチに関する講座が始まった。山写さんは「声を大にしておススメはできない」と念を押しつつも、自身が培ったノウハウを伝授した。
具体的には、「山岳写真における色彩学」や「色彩学からみる写真の配色」、「トーンと写真の考え方」など、写真の配色や構図、被写体の選び方について体系的に説明。「山は自然に色の調和が成立するので色彩の破たんはないが、なぜ景色が美しいと感じるのかを色で分析できると、選ぶ構図の選択肢が増える」という。レタッチで自然界の色の調和を乱すと、見え方に違和感を感じてしまう点にも注意が必要だと語る。だからこそ、自分の中でイメージをしっかりと決めてから撮影したのち、「Adobe Lightroom」を使用してRAW現像を開始するといいとアドバイスした。
レタッチによって写真の印象は変わる!
RAW現像作業タイムでは、まずは、山写さんがあらかじめ撮影した写真を使って実際のレタッチを進めた。自身のレタッチによって写真の印象が変わる様子を体験した参加者の一人は、「どのようにレタッチするのか考えながら撮影する大切さがわかった」と、手応えを感じていた様子だった。続けて、山写さんがサポートしながら、参加者が自身で撮影した写真のレタッチに取り組んだ。アドバイスを受けながらレタッチした参加者からは、「あっという間に仕上がった」「完成度がまるで違う」と、喜びの声があがった。
講習会の終了後に参加者に感想をたずねると「4K液晶ディスプレイを使ったことがなかったが、今まで見えなかった細部までこだわって編集することができ、非常に魅力的だった」「家ではiMacを使っているので、ハードウェアキャリブレーションに対応したディスプレイの購入も検討したい」など、編集環境も好評だったようだ。
安全な登山があってこその山岳写真
山写さんがセミナー・講習会の講師を務める理由は、山岳写真の安全な楽しみ方を広めるためだという。講座の冒頭には必ず山岳写真の注意点と安全策について紹介する時間を設け、「InstagramやFacebookなどのSNSで自己承認欲求を満たすため、より刺激的な写真を載せて“いいね”を集めようと、山岳写真を撮る人が増えてきた。しかし、登山用品をケチったら、写真どころか自身も無事では済まない事態に陥ることもある」と警告する。アウトドア用のウェアやギアを手がけるfinetrackも、山写さん同様、登山に関する啓発活動に力を入れている。山写さんは「登山用品にお金をかけて、安全に山岳写真を楽しむための方法と心構えを伝えることで、少しでも状況を改善していきたい」、finetrackの東京マーケティングルーム 大堀啓太室長は、「一般的なシャツは安くて入手しやすいが、汗をかいて登った高所で撮影タイミングをじっと待つ、といった状況下では体温を保つのに向かない。低体温症などの危険を避けるためにも、しっかり準備して、安全に山岳写真を楽しんでほしい」と訴えた。
今回、ベンキューが講習会を共催した理由は、より広い層にカラーマネジメントディスプレイの便利さを広めるため。山写さんは、「山岳写真の撮影の9割は登山で、その色鮮やかな景色を再現するには現像技術が欠かせない」と話す。ベンキューでは今後もイベントを開催する方針なので、気になる方はホームページやSNSをチェックしておきたい。
つい撮影機材にばかり資金をつぎ込みがちだが、安全な登山技術と山岳写真の撮影技術を身に付け、現像まで本格的にできるようになれば、もっと満足のいく作品を生み出せるだろう。