30周年を迎えたトレンドマイクロ、深刻化する「見えない脅威」に対抗

 マルチデバイス対応の総合セキュリティソフト「ウイルスバスター クラウド」シリーズを展開するトレンドマイクロは今年で30周年を迎える。9月6日に開催された最新版の発表会では、30年の取り組みを振り返るとともに、直近の脅威動向が示された。

今年で設立から30周年を迎えたトレンドマイクロの「ウイルスバスター クラウド」シリーズは
最新版ではAI機能を強化

 発表会の冒頭で大三川彰彦副社長は「“デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現”が30年間変わらない当社のビジョン」と語り、取り組みの一部を紹介した。
 
30年間の取り組みを説明する大三川彰彦副社長

 1997年に世界中にサイバー攻撃の迅速な分析・対応するためのトレンドラボを設立。2007年には地域に特化した脅威情報を収集するリージョナルラボも立ち上げた。14年からは法執行機関との連携を開始。各国政府から一般家庭までを横断するセキュリティ対策を行ってきた。
 
トレンドマイクロは幅広い地域とユーザーをセキュリティ対策の対象としてきた

 大三川副社長は「プロアクティブなデジタルライフサポートをコンシューマ向けに迅速に提供していく。また、ホームネットワークやモバイルセキュリティなどの新しい分野における啓蒙と対策を進めていく」と、一般ユーザーに向けた今後のアプローチについても説明した。

 30年前のコンピューター黎明期から脅威は姿形を変え、常に存在していた。岡本勝之セキュリティエバンジェリストは30年で登場した脅威を俯瞰し、「見える脅威から見えない脅威への変化」と見解を示す。かつては愉快犯が明らかにそれとわかる不正プログラムをばらまいていたが、現在は金銭や情報の窃取を目的にわかりにくい方法で巧妙に不正プログラムを仕込んでいる。
 
30年の間に脅威は「見えないものになってきた」と語る岡本勝之セキュリティエバンジェリスト

 直近では有名企業のサポートを語るフィッシング詐欺やユーザーの不安を煽るサポート詐欺が増加しており、フィッシング詐欺にいたっては18年上半期で290万件と、17年下半期の約3倍に伸びている。また、Android端末を狙ったアプリ経由の攻撃が増えていたり、安全と思われがちなMac向け不正アプリが正規マーケットに出回っていたり、Windows以外の脅威も無視できないレベルになってきている。

 「ウイルスバスター クラウド」シリーズは、前バージョンからAI技術を採用しているが、これも既存のパターンから脅威を検出する仕組みだけでは限界があると判断したうえでのアプローチだ。
 
「ウイルスバスター クラウド」は前バージョンからセキュリティ対策にAI機能を取り入れている

 最新版では、新たにWindows向けにファイル実行前にふるまいを予測するAIを実装することで、脅威検出の機能を強化した。先述したサポート詐欺もその対象に含まれている。これまではiOSのみだったアプリ内ブラウザのWeb脅威対策は対象をAndroidにも拡大。ネットバンキングやネットショッピング利用時に個人情報を狙う攻撃から保護する「決済保護ブラウザ」も新搭載。オンラインでは9月6日、店頭では9月13日に発売する。(BCN・大蔵 大輔)