耳の聞こえが悪くなったとき、補聴器は状況を改善する有効な手段になるが、実際にどのように聞こえ方が変わるのか、日常生活の中でどのように使用するのかを知る機会は少ない。こうした状況は、使用を検討している人、あるいは家族に使用を勧めたい人が購入を躊躇する原因にもなっている。前回、記者はオーティコン補聴器の協力を得て、自分のために補聴器をカスタマイズしてもらった。せっかくカスタマイズしたので、健聴者ではあるが、2週間ほど使ってみることにした。認証番号がつくなど医療機器としてのイメージが強い補聴器だが、今回はあえてデジタル機器と捉えてレビューしてみた。
補聴器にはいくつかの種類があるが、Opnは本体を耳にかけて、スピーカーを耳穴に入れて使用する「耳かけ型」の一つである「RITEタイプ」。耳にかける部分にマイクが搭載されており、増幅した音をワイヤーの先端にあるレシーバーから出力する。補聴器は色で左右を判別しており、右が赤、左が青となっている。ちなみにこの仕様は各メーカー共通であるとのことだ。
同器種では電源は補聴器としては珍しく、通常の空気電池(312電池)と充電池の両方に対応するハイブリッド式を採用。ハイブリッド式の場合は、充電器と充電池を別途購入する必要があるので、今回のレビューでは空気電池を使用した。この空気電池もまた各メーカー共通サイズとのことだが、コンビニなどでも販売しているので、うっかり出先で電池が切れた場合でもすぐに対処することができる。電源のオン/オフは電池の出し入れがトリガーになるので、使用するときに電池を入れて、使用しないときは電池を取り外しておく必要がある。
使い始めてすぐは、耳穴にスピーカーを入れるという慣れない作業に戸惑った。しかし、それも2~3日のことですぐに違和感はなくなった。人の目が気になるかと思ったが、デスクワーク中や会議中に装用していても、気がついた人はいなかった。横からなら耳穴に入るチューブが目に入るかもしれないが、それでも注意深く見ればというレベルだ。チューブは補聴器購入の際に個人の耳の大きさに適した長さのものを合わせてもらえるので、装用が慣れてくると、より耳に沿って目立たずつけられるそうだ。
記者は補聴器の作成カスタマイズ調整時に聴力を測った際(実際に使用するときは耳鼻科の聴力検診を受ける必要がある)、特に聴力の低下はみられなかったが、補聴器装用の効果が実感できないわけではなかった。補聴器は低下した周波数帯の音を増幅させて聞こえるようにする装置なので、すでに聞こえている周波数帯の聞こえを底上げすることもできることがわかった。
先述したように、Opnはアプリでモードやレベルの調整ができる。記者は通常時はモードを「汎用」、増幅レベルを最大の「4」に設定して使用した。起床から就寝までの間にさまざまな場所で装用していたが、予想以上に効果を実感するシーンは多かった。
まず、オフィスでのデスクワーク中。未装用時との違いが明確だったのは、キータッチの音だ。自分のPCからはもちろん、周囲のキーボードを叩く音までよく聞こえる。説明が難しいのだが、「カチカチ」としか聞こえていなかったのが「カチャカチャ」とこれまで聞き取れていなかった高音の部分まで認識できるようになった。
記者は高音の増幅を強めに補聴器装用をカスタマイズした。これを「普段聞こえている高音が大きく聞こえる」と解釈していたのだが、それだけではない。普段は“聞こえなかった”レベルの高音まで聞こえるようになった。キータッチの音はまさにその好例。実は聞こえていないだけで、本来キータッチとはこのような音なのだと気がついた。もちろん不快にならないように個人に合わせて調整することもできる。
外を出歩いているときは、遠くで鳴っている風鈴の音やすれ違う人のカバンについたキーホルダーが金具にあたる音など、普段は意識しない音が耳に飛び込んできた。「Opn」の性能の高さを感じたのは、全方位から飛び込んでくる増幅された音の位置をしっかりと把握できることだ。前後左右だけでなく、音の出所の遠近感まで感じとることができた。
記者は健聴者なので、補聴器によって日常生活では不要なレベルの音まで聞こえるようになったが、聞こえが悪い人にとっては、聞き取れなくなってしまった音が再び聞き取れるようになるということだ。もし補聴器なしでも聞こえている音が聞こえなくなったら、もし音が発生している位置が不明瞭になったら、道路沿いで後ろから車が迫ってきたときなど気づけるのかなど、そんな恐怖を感じた。
補聴器のイメージを覆す 軽量・コンパクトな「Opn」
使用したのはオーティコン補聴器の「Oticon Opn(オープン)」という同社が発売する最新シリーズの補聴器だ。通常の補聴器フィッティングの手順を踏まえて、記者の年齢や聴力、聞こえ方の好みなどが専用ソフトウェアを介して本器にデータ送信され、反映されている。まず、注目したいのがOpnのサイズだ。補聴器というと大型の器具を想像する読者が多いと思うが、最新の補聴器は装用しても違和感がなく、持ち歩きも不便ではないサイズにコンパクト化している。重さも左右合わせて5gと軽いので、長時間の装用でも負担は少ない。補聴器にはいくつかの種類があるが、Opnは本体を耳にかけて、スピーカーを耳穴に入れて使用する「耳かけ型」の一つである「RITEタイプ」。耳にかける部分にマイクが搭載されており、増幅した音をワイヤーの先端にあるレシーバーから出力する。補聴器は色で左右を判別しており、右が赤、左が青となっている。ちなみにこの仕様は各メーカー共通であるとのことだ。
同器種では電源は補聴器としては珍しく、通常の空気電池(312電池)と充電池の両方に対応するハイブリッド式を採用。ハイブリッド式の場合は、充電器と充電池を別途購入する必要があるので、今回のレビューでは空気電池を使用した。この空気電池もまた各メーカー共通サイズとのことだが、コンビニなどでも販売しているので、うっかり出先で電池が切れた場合でもすぐに対処することができる。電源のオン/オフは電池の出し入れがトリガーになるので、使用するときに電池を入れて、使用しないときは電池を取り外しておく必要がある。
音の増幅で聞こえなかった音を認識 方向・距離まで把握できる
Opnは専用のスマートフォンアプリと連携しており、モードや音の増幅レベルをシーンに応じて切り替えることができるという特徴がある。最初に設定しておけば、その後は電池を入れただけで、自動でアプリに接続されるので、手間はほとんど必要としない。アプリで電池の残量目安を確認することも可能だ。使い始めてすぐは、耳穴にスピーカーを入れるという慣れない作業に戸惑った。しかし、それも2~3日のことですぐに違和感はなくなった。人の目が気になるかと思ったが、デスクワーク中や会議中に装用していても、気がついた人はいなかった。横からなら耳穴に入るチューブが目に入るかもしれないが、それでも注意深く見ればというレベルだ。チューブは補聴器購入の際に個人の耳の大きさに適した長さのものを合わせてもらえるので、装用が慣れてくると、より耳に沿って目立たずつけられるそうだ。
記者は補聴器の作成カスタマイズ調整時に聴力を測った際(実際に使用するときは耳鼻科の聴力検診を受ける必要がある)、特に聴力の低下はみられなかったが、補聴器装用の効果が実感できないわけではなかった。補聴器は低下した周波数帯の音を増幅させて聞こえるようにする装置なので、すでに聞こえている周波数帯の聞こえを底上げすることもできることがわかった。
先述したように、Opnはアプリでモードやレベルの調整ができる。記者は通常時はモードを「汎用」、増幅レベルを最大の「4」に設定して使用した。起床から就寝までの間にさまざまな場所で装用していたが、予想以上に効果を実感するシーンは多かった。
まず、オフィスでのデスクワーク中。未装用時との違いが明確だったのは、キータッチの音だ。自分のPCからはもちろん、周囲のキーボードを叩く音までよく聞こえる。説明が難しいのだが、「カチカチ」としか聞こえていなかったのが「カチャカチャ」とこれまで聞き取れていなかった高音の部分まで認識できるようになった。
記者は高音の増幅を強めに補聴器装用をカスタマイズした。これを「普段聞こえている高音が大きく聞こえる」と解釈していたのだが、それだけではない。普段は“聞こえなかった”レベルの高音まで聞こえるようになった。キータッチの音はまさにその好例。実は聞こえていないだけで、本来キータッチとはこのような音なのだと気がついた。もちろん不快にならないように個人に合わせて調整することもできる。
外を出歩いているときは、遠くで鳴っている風鈴の音やすれ違う人のカバンについたキーホルダーが金具にあたる音など、普段は意識しない音が耳に飛び込んできた。「Opn」の性能の高さを感じたのは、全方位から飛び込んでくる増幅された音の位置をしっかりと把握できることだ。前後左右だけでなく、音の出所の遠近感まで感じとることができた。
記者は健聴者なので、補聴器によって日常生活では不要なレベルの音まで聞こえるようになったが、聞こえが悪い人にとっては、聞き取れなくなってしまった音が再び聞き取れるようになるということだ。もし補聴器なしでも聞こえている音が聞こえなくなったら、もし音が発生している位置が不明瞭になったら、道路沿いで後ろから車が迫ってきたときなど気づけるのかなど、そんな恐怖を感じた。