「Surface Studio」は、クリエイターの創造性や感性を刺激する超高性能デスクトップPCとして、日本マイクロソフトの「Surface」シリーズのなかでも最高峰の位置づけにある。記者が使いこなすには、あまりにもハイスペックで手に負えないので、プロのグラフィックデザイナーに4か月ほど使ってもらい、使用感を取材した。初号機ということもあり、驚きと感動ととともに疑問に思う点などがあったという。
匿名を条件に使ってもらったのは、家庭用ゲームのグラフィックデザイナーとして、コンピュータグラフィックの分野で15年以上の経験を積み、最近では3Dグラフィックゲームの背景画の描画などを担当しているA氏だ。
毎日、仕事で使っているソフトはアニメーションソフトの「Maya」や、3Dの映画やVFX、ゲーム、イラストレーションなど多くの分野で使われてる「ZBrush」、3Dペイントツールの「Substance Painter」、そして「Photoshop」などだ。
使ってみて最初に感動したのが、まるでキャンバスのように28インチの「PixelSense Display」を自在に傾けられる「ゼログラビティ ヒンジ」だったという。自然な姿勢でデザイン作業ができるのに加え、4500×3000(192ppi)の高精細さは、描画したデザインにリアリティ感を与えるのに十分といえる。
A氏は「ほぼ水平に傾けられるのはとても驚きだった。Mayaを使うときや、自分で描画したデザインを上から眺められるのはとても新鮮で楽しく、自然な感じがした」と語ったように、普段は垂直にした画面を見ながら作業しているデザイナーにとって、直感的な操作感が得られるSurface Studioは新しい体験だったようだ。
また、高性能なGPUを搭載しているだけあって、指でアングルを変えたり、Mayaで描画しているときのパフォーマンスは、実際に仕事で使っているときの動作環境と違和感がなく、スムーズだったという。
特に、大容量データを扱う3Dグラフィックで描画したものに陰影をつけて生成する「レンダリング」という演算処理に、この高いパフォーマンスはいかんなく発揮される。例えば、立体的な人物の下にある細かい芝生の陰影は、実に素早く生成されたそうだ。
Surface Studioが必ずしもプロのデザイナーだけに特化しているPCではないものの、プロのデザイナーの多くがスタイラスペンを持って、ペンタブレットの上を走らせながら作業する。つまり、スタイラスペンを持った手元を見ることなく、視線は画面に集中しながら手を動かして作業をするわけだ。この点、Surface Studioは、そうした間にマウス操作を挟むシーンが少なくないという。
例えば、Surfaceペンのちょっとした仕様変更や調整が、ペンのクリック操作だけで処理することができず、マウスを使って本体に格納された機能変更の画面を立ち上げなければならいといった点は、ストレスに感じたという。
Surface Studioに、プロのデザイナーの創造力を刺激するほどの新しい体験が散りばめられていることは間違いない。ただ、プロであるからこそ、日常の作業効率の改善につながるのかを意識し、評価もやや辛口になってしまうのかもしれない。
革新性を追求すると、従来の操作とは異なる新しい操作の提案が生まれる。しかし、従来の操作に慣れたユーザーは違和感を覚えてしまう。そんなジレンマの連続なのだろう。デザイナーの描画時に、SurfaceペンとSurface Dial、タッチだけに集中して操作することは可能なのだろうか。「個人的には私の仕事がより快適になる大きな可能性を感じた」と語るA氏。Surface Studioへの期待と要求は大きかった。(BCN・細田 立圭志)
プロも新鮮な体験だった「ゼログラビティ ヒンジ」
レビューで使用したSurface Studioは、CPUにインテルのCore i7、メモリが32GB、ストレージに2TBのRapid Hybrid Drive、GPUにNVIDIAのGeFore GTX980M(4GB)を搭載している最上位モデル。スクリーン上に置いて回すと、詳細メニューなどが表示されるSurface Dialと、描画に必要なSurfaceペン、Surfaceマウスが付属している。匿名を条件に使ってもらったのは、家庭用ゲームのグラフィックデザイナーとして、コンピュータグラフィックの分野で15年以上の経験を積み、最近では3Dグラフィックゲームの背景画の描画などを担当しているA氏だ。
毎日、仕事で使っているソフトはアニメーションソフトの「Maya」や、3Dの映画やVFX、ゲーム、イラストレーションなど多くの分野で使われてる「ZBrush」、3Dペイントツールの「Substance Painter」、そして「Photoshop」などだ。
使ってみて最初に感動したのが、まるでキャンバスのように28インチの「PixelSense Display」を自在に傾けられる「ゼログラビティ ヒンジ」だったという。自然な姿勢でデザイン作業ができるのに加え、4500×3000(192ppi)の高精細さは、描画したデザインにリアリティ感を与えるのに十分といえる。
A氏は「ほぼ水平に傾けられるのはとても驚きだった。Mayaを使うときや、自分で描画したデザインを上から眺められるのはとても新鮮で楽しく、自然な感じがした」と語ったように、普段は垂直にした画面を見ながら作業しているデザイナーにとって、直感的な操作感が得られるSurface Studioは新しい体験だったようだ。
また、高性能なGPUを搭載しているだけあって、指でアングルを変えたり、Mayaで描画しているときのパフォーマンスは、実際に仕事で使っているときの動作環境と違和感がなく、スムーズだったという。
特に、大容量データを扱う3Dグラフィックで描画したものに陰影をつけて生成する「レンダリング」という演算処理に、この高いパフォーマンスはいかんなく発揮される。例えば、立体的な人物の下にある細かい芝生の陰影は、実に素早く生成されたそうだ。
操作感を阻害するモノとは?
ただ、こうした直感的な操作感を楽しんでいるのを損なってしまうのが、マウスの使用だったという。A氏は「指によるタッチやスタイラスペンのSurfaceペンだけで操作できれるようになれば、かなりストレスフリーになると思う」と指摘する。Surface Studioが必ずしもプロのデザイナーだけに特化しているPCではないものの、プロのデザイナーの多くがスタイラスペンを持って、ペンタブレットの上を走らせながら作業する。つまり、スタイラスペンを持った手元を見ることなく、視線は画面に集中しながら手を動かして作業をするわけだ。この点、Surface Studioは、そうした間にマウス操作を挟むシーンが少なくないという。
例えば、Surfaceペンのちょっとした仕様変更や調整が、ペンのクリック操作だけで処理することができず、マウスを使って本体に格納された機能変更の画面を立ち上げなければならいといった点は、ストレスに感じたという。
Surface Studioに、プロのデザイナーの創造力を刺激するほどの新しい体験が散りばめられていることは間違いない。ただ、プロであるからこそ、日常の作業効率の改善につながるのかを意識し、評価もやや辛口になってしまうのかもしれない。
革新性を追求すると、従来の操作とは異なる新しい操作の提案が生まれる。しかし、従来の操作に慣れたユーザーは違和感を覚えてしまう。そんなジレンマの連続なのだろう。デザイナーの描画時に、SurfaceペンとSurface Dial、タッチだけに集中して操作することは可能なのだろうか。「個人的には私の仕事がより快適になる大きな可能性を感じた」と語るA氏。Surface Studioへの期待と要求は大きかった。(BCN・細田 立圭志)