【実食レポート】新機軸の炊飯器「BALMUDA The Gohan」のおいしさの秘密
バルミューダの名を一躍有名にした「BALMUDA The Toaster」の発売から1年半。かねてから噂されていた炊飯器が、1月12日、ついに披露された。税別価格は4万1500円。従来の炊飯器の常識に捉われない発想で誕生した炊飯器のキーコンセプトは「おかずに合うごはん」。一体、どういう意味なのか。実食を交えたレポートで、その秘密を説明したい。
「おかずに合うごはん」がコンセプトの「BALMUDA The Gohan」
「パンはおいしくなった。そうなると、ごはんもおいしくしたくなる。日本人ですから」。寺尾玄社長は発表会の冒頭で、炊飯器開発の理由をシンプルに述べた。開発に要した期間は18か月。ちょうど「BALMUDA The Toaster」が発売された時期だ。バルミューダ史上もっとも時間を要したプロジェクトとなった根幹には、なにをもって”おいしいごはん”とするかの葛藤があったようだ。
寺尾社長が「ずいぶん迷走した」と語るように、開発途上には方向性が定まらない時期があったという。「おいしいごはんを食べるためには、良いお米を使うしかないという根拠の元、冷凍米と解凍用の電子レンジを試作したりもしました」と苦笑交じりに当時のエピソードを紹介した。
開発エピソードを語る寺尾玄社長
突破口となったのは、“蒸気”というこれまで炊飯器とは無縁に近かった概念だ。現在の炊飯器のトレンドは“高火力”による“踊り炊き”だが、あえて100℃を超えない温度でゆっくりと加熱する方式を選択した。釜の構造も極めて特殊だ。蒸気の源となる水を流し込む外釜と、米を入れる内釜からなる二重構造を採用。外釜と内釜の間は中空で、熱を生み出す蒸気が充満する仕組みになっている。
従来の炊飯器と一線を画す二重構造の釜
蒸気による加熱は対流を引き起こさない。したがって、米の一粒一粒が干渉せず、粒感の際立った炊き上がりになる。「BALMUDA The Gohan」には保温機能はないが、構造自体が魔法瓶に似ているため、ある程度、時間が経っても炊立ての鮮度をキープできる。そして、釜から取り出した後の冷めた状態でも香りや旨みが持続させることが可能だ。
各種「ごはんのお供」を取り揃えた試食会のテーブル
まず、釜から茶碗に移したほかほかのごはんを口にした感想だが、特徴である「粒感」が想像よりずっと強烈なことが印象的だった。決して芯まで熱が浸透していないということではない。それでいて、一粒一粒が完全に独立しているのだ。__RCMS_CONTENT_BOUNDARY__ 寺尾社長は「ほぐれ感」という表現をしていたが、まさに口の中で米が分解するようなさらりとした口触りだった。個人的には好みの食感だったが、柔らかめのごはんが好みの人にはやや粘り気が不足していると感じるかもしれない。
「BALMUDA The Gohan」の炊きたてごはん、見た目にも粒が際立っているのがわかる
だが、「BALMUDA The Gohan」のやや固めでほぐれ感のあるごはんが真価を発揮するのは、ごはんのお供と一緒に口に入れた瞬間だ。当日、用意のあった明太子やのり、ふりかけを乗せて食べると、やや淡泊だった米がお供の味を引立て、ちょうどよい調和が生まれる。最大に効果が実感できたのは、卵かけごはん。米の粘り気が抑えられているので、黄身のとろっとしたのどごしが存分に堪能できた。
コンセプトを体現する「卵かけごはん」、(右)寺尾社長おすすめのバターと醤油を垂らしたのり巻ごはん
ごはんのお供には、なぜか定番の品に加えて、サイコロ状のバターがあった。「のりの上にごはんを乗せて、バターと醤油を垂らすのが寺尾社長のおすすめ」というので、試してみると思いのほか、これもいける。「BALMUDA The Toaster」ではWebサイト上でオリジナルレシピをユーザーが投稿しあうことで、“食”の楽しさを引き出す演出があったが、今回の炊飯器でも食べ方の新発見が期待できそうだ。
次に、当日の朝、握ったというおにぎりだが、こちらは時間の経過にも関わらず、うまみと香りが十分に維持されていた。固めの米ということで、多少のパサつきは覚悟していたのだが、舌に触れたときにしっとりとした艶やかさを感じた。このあたりは、“熱が対流しない”炊飯方式が奏功している点だといえるだろう。
冷めてもうまみや香り・つやが落ちないおにぎり
最後にバルミューダ製品共通の魅力であるデザイン設計に触れたい。「BALMUDA The Gohan」は炊飯容量は0.5合~3合。高齢者や一人暮らし世帯などの少容量炊きニーズを狙ったというわけではなく、3合が「蒸気炊きでおいしく炊けるラインだから」だそうだ。
しかし、その制限から本体は非常にコンパクト。横に並べると、人気商品の「BALMUDA The Toaster」よりも横幅は狭い。重量感のあるデザインを意識しているため、大き目の印象を与えるが、一人暮らしのキッチンの狭いスペースでも問題なく設置できるサイズだ。
「BALMUDA The Toaster」より横幅の狭いコンパクト設計
カラーは、販売中のトースターと電気ケトル同様、ブラックとホワイトをラインアップ。天面には、液晶パネルとモード選択と予約設定をする最小限のボタンを配置。白米(53~68分)、白米早炊(32~39分)、玄米(75~104分)、炊き込み(53~68分)、おかゆ(51~67分)の5モードを用意する。
寺尾社長は「秋には、電子レンジもしくはコーヒーメーカーを披露したい」と次なる調理家電の開発にすでに着手していることを予告。常識を覆すアイディアはまだまだ尽きそうにない。期待は高まるが、まずは目の前の炊飯器が市場にどう受け止められるかが重要だ。
これまでヒットを生んだトースターと電気ケトルはいわゆるニッチ分野だったが、炊飯器は各社が凌ぎを削る調理家電の激戦区だ。新しいごはんの提案が顧客のハートと胃袋を捕まえることができるか、注目したい。(BCN・大蔵大輔)
「おかずに合うごはん」がコンセプトの「BALMUDA The Gohan」
「パンはおいしくなった。そうなると、ごはんもおいしくしたくなる。日本人ですから」。寺尾玄社長は発表会の冒頭で、炊飯器開発の理由をシンプルに述べた。開発に要した期間は18か月。ちょうど「BALMUDA The Toaster」が発売された時期だ。バルミューダ史上もっとも時間を要したプロジェクトとなった根幹には、なにをもって”おいしいごはん”とするかの葛藤があったようだ。
寺尾社長が「ずいぶん迷走した」と語るように、開発途上には方向性が定まらない時期があったという。「おいしいごはんを食べるためには、良いお米を使うしかないという根拠の元、冷凍米と解凍用の電子レンジを試作したりもしました」と苦笑交じりに当時のエピソードを紹介した。
開発エピソードを語る寺尾玄社長
突破口となったのは、“蒸気”というこれまで炊飯器とは無縁に近かった概念だ。現在の炊飯器のトレンドは“高火力”による“踊り炊き”だが、あえて100℃を超えない温度でゆっくりと加熱する方式を選択した。釜の構造も極めて特殊だ。蒸気の源となる水を流し込む外釜と、米を入れる内釜からなる二重構造を採用。外釜と内釜の間は中空で、熱を生み出す蒸気が充満する仕組みになっている。
従来の炊飯器と一線を画す二重構造の釜
蒸気による加熱は対流を引き起こさない。したがって、米の一粒一粒が干渉せず、粒感の際立った炊き上がりになる。「BALMUDA The Gohan」には保温機能はないが、構造自体が魔法瓶に似ているため、ある程度、時間が経っても炊立ての鮮度をキープできる。そして、釜から取り出した後の冷めた状態でも香りや旨みが持続させることが可能だ。
ポイントは“ほぐれ感”、おかずとの相乗効果が最大の魅力
言葉だけではいささかイメージが沸かない「おかずに合うごはん」だが、いざ口にするとバルミューダが目指した到達点が明確になった。発表会後に開催された試食会では、炊きたての茶碗一杯分のごはんと半日前に握ったおにぎりを実食することができた。テーブルには、ごはんのほか、各種「ごはんのお供」が並んでいた。各種「ごはんのお供」を取り揃えた試食会のテーブル
まず、釜から茶碗に移したほかほかのごはんを口にした感想だが、特徴である「粒感」が想像よりずっと強烈なことが印象的だった。決して芯まで熱が浸透していないということではない。それでいて、一粒一粒が完全に独立しているのだ。__RCMS_CONTENT_BOUNDARY__ 寺尾社長は「ほぐれ感」という表現をしていたが、まさに口の中で米が分解するようなさらりとした口触りだった。個人的には好みの食感だったが、柔らかめのごはんが好みの人にはやや粘り気が不足していると感じるかもしれない。
「BALMUDA The Gohan」の炊きたてごはん、見た目にも粒が際立っているのがわかる
だが、「BALMUDA The Gohan」のやや固めでほぐれ感のあるごはんが真価を発揮するのは、ごはんのお供と一緒に口に入れた瞬間だ。当日、用意のあった明太子やのり、ふりかけを乗せて食べると、やや淡泊だった米がお供の味を引立て、ちょうどよい調和が生まれる。最大に効果が実感できたのは、卵かけごはん。米の粘り気が抑えられているので、黄身のとろっとしたのどごしが存分に堪能できた。
コンセプトを体現する「卵かけごはん」、(右)寺尾社長おすすめのバターと醤油を垂らしたのり巻ごはん
ごはんのお供には、なぜか定番の品に加えて、サイコロ状のバターがあった。「のりの上にごはんを乗せて、バターと醤油を垂らすのが寺尾社長のおすすめ」というので、試してみると思いのほか、これもいける。「BALMUDA The Toaster」ではWebサイト上でオリジナルレシピをユーザーが投稿しあうことで、“食”の楽しさを引き出す演出があったが、今回の炊飯器でも食べ方の新発見が期待できそうだ。
次に、当日の朝、握ったというおにぎりだが、こちらは時間の経過にも関わらず、うまみと香りが十分に維持されていた。固めの米ということで、多少のパサつきは覚悟していたのだが、舌に触れたときにしっとりとした艶やかさを感じた。このあたりは、“熱が対流しない”炊飯方式が奏功している点だといえるだろう。
冷めてもうまみや香り・つやが落ちないおにぎり
最後にバルミューダ製品共通の魅力であるデザイン設計に触れたい。「BALMUDA The Gohan」は炊飯容量は0.5合~3合。高齢者や一人暮らし世帯などの少容量炊きニーズを狙ったというわけではなく、3合が「蒸気炊きでおいしく炊けるラインだから」だそうだ。
しかし、その制限から本体は非常にコンパクト。横に並べると、人気商品の「BALMUDA The Toaster」よりも横幅は狭い。重量感のあるデザインを意識しているため、大き目の印象を与えるが、一人暮らしのキッチンの狭いスペースでも問題なく設置できるサイズだ。
「BALMUDA The Toaster」より横幅の狭いコンパクト設計
カラーは、販売中のトースターと電気ケトル同様、ブラックとホワイトをラインアップ。天面には、液晶パネルとモード選択と予約設定をする最小限のボタンを配置。白米(53~68分)、白米早炊(32~39分)、玄米(75~104分)、炊き込み(53~68分)、おかゆ(51~67分)の5モードを用意する。
寺尾社長は「秋には、電子レンジもしくはコーヒーメーカーを披露したい」と次なる調理家電の開発にすでに着手していることを予告。常識を覆すアイディアはまだまだ尽きそうにない。期待は高まるが、まずは目の前の炊飯器が市場にどう受け止められるかが重要だ。
これまでヒットを生んだトースターと電気ケトルはいわゆるニッチ分野だったが、炊飯器は各社が凌ぎを削る調理家電の激戦区だ。新しいごはんの提案が顧客のハートと胃袋を捕まえることができるか、注目したい。(BCN・大蔵大輔)