画面を裏返して接続できる2 in 1 PC dynabook R82、開発の舞台裏とは
キーボードがあるベース部とディスプレイ部が取り外せて、しかも裏返しにしても接続できる「リバーシブルドッキング」ができるPCは用途が広い。東芝の dynabook R82は、そんなユニークなPCの一つだ。12.5インチのディスプレイ部だけの重さは699gとびっくりするくらい軽く、これだけでWindowsタブ レットとしても十二分に活用できる。このPCとしてもタブレットとしても使える2 in 1マシンの開発に携わった東芝のビジネスソリューション事業部 商品開発部 古賀裕一 部長と、マーケティングを担当する国内営業統括部 国内マーケティング部 マーケティング企画担当 夷隅嘉晃 グループ長に開発の舞台裏を聞いた。
古賀 2 in 1として使った時の面白さを最大限に考えました。やはり、表裏いずれでも画面部とベース部を接続できる、リバーシブルドッキングが目玉ですね。画面をぐ るっとキーボードの後ろに回すタイプだと、タブレットとして使っているときに、キーボードが押されて気持ち悪いんです。そこで、リバーシブルドッキングを サポートしよう決めました。
──裏返しても画面を脱着できるというのは、おもしろいですね。技術的にはどんな工夫があったんですか。
古賀 実は、表裏5000回ずつ手作業で着脱試験をして います。このレベルでは全く問題はありません。機械に着脱を試験させる方法もありますが、それだとストレスのかかり方が一定になってしまい、実際の利用 シーンでの耐久性試験にはならないんです。時々変な角度で差し込もうとしたりするのが人間ですから、やはり人の手でやらないとちゃんとした試験にはなりま せん。
古賀 まず、プレゼン時に使いやすいですよね。インターフェイスポートがそのまま使えるというメリットも大きい。タブレットのドッキングステーションのような使い方もできます。利用シーンが広く、様々な用途に使えるのが大きな特徴です。
──ベース部と画面部を無線でつなげば苦労もなかったんじゃないですか。
古賀 表示のみをタブレット側で処理するなら無線でもか なりのスピードが出ます。しかし、ベース側にメインボードをもってくることになりますから、通信ができる範囲でなければ全く使えないというデメリットがあ るんです。また、電源供給をベース側にしたかった、ということがあります。企業向けモデルでは、セカンドバッテリーモデルも用意しています。その場合には バッテリー駆動時間が倍になるが、そうしたメリットを享受するためにも、有線接続を選択したわけです。
──薄く軽量でも基本性能はしっかりしているんですね。
古賀 タブレットとして使うことを考え、徹底的に軽くし ようということで、12.5インチのWindowsタブレットとしては699gという超軽量に仕上げました。そのためにファンレスにしながら、パフォーマ ンスもしっかり出るよう設計してあります。CPUにインテルのCore M プロセッサーを採用し、熱があまり出ずにきっちりと性能を出せるぎりぎりのチューニングを施しました。仕事に使うには、普通のコアシリーズとそん色ないス ピードが確保できました。
インターフェイスは充実。ベース側にはRGBのディスプレイポートも備える
古賀 パフォーマンスを一切落とさずに熱を散らすという ところに苦労しました。一部分だけ熱くならないよう放熱用のシートを入れて熱の均一化を図っています。温度が上がっても性能をやや落として熱を抑える、と いうことはほとんどしていません。東芝の考えとして、ベンチマークテストをやった時に、1回目も2回目も3回目も性能が劣化させてはいけないというものが あります。実際使っていて急に遅くなったというようなことはありません。
──放熱シートだけではなく、ほかにもいろいろと工夫したんでしょう。
古賀 設計する前に、徹底的に熱のシミュレーションを行 いました。通常はスピードを確保するため、CPUの真横にメモリを置いたりしますが、いずれも熱を持つ部品なのでなるべく散らして配置しました。また、基 盤の中に入っている銅をうまく使って熱を散らすなどの工夫もしました。同時に、放熱のための穴もないんです。
──ファンがないんだから放熱の穴ぐらいあけてもよさそうなもんですが。
──やっぱりビジネス系のニーズがかなりの部分を占めるんでしょうか。
夷隅 PCは一頃、エンターテインメント用途で市場が膨 らんだ時代がありました。ところが今は、その大部分をスマホが担っています。一方、ビジネスのニーズは堅調です。R82もビジネス用途を前面に出していま す。もちろん、個人向けでは、依然としてエンターテインメント系の用途が市場拡大の要素になるとは思いますが、具体的にはなかなか難しいですね。
──本体の話に戻りますが、東芝のPCというとキーボードの打ち心地がいいというイメージがあるのですが。
古賀 感覚を数値化して管理しています。例えば、「F」 というキーを押すとどのくらいキーボード自体がたわむかなどを数値化して管理しているんです。力いっぱい押すのはスペースキーとエンターキーだったります よね。そういった利用に耐えるように管理して設計するんです。気持ちのいいキーボードにするため、東芝のPCだけでなく、他社のPCでも、いいものを計っ て、それを基準にしています。
──今後R82はどのように進化するんでしょうか。
古賀 薄型化、軽量化、堅牢性の向上についてはまだ改善 の余地があります。SIMと組み合わせるなどの通信の利便性も考える必要があるでしょう。ただ、デタッチャブルにすると、どうしてもベース部を軽くできな いんです。画面部がそれなりの重量がありますから、ベースが軽すぎると、向こう側に倒れてしまうんです。クラムシェルとして使う際に、ディスプレイを開く 角度は120度ぐらい。ディスプレイ部を軽くすることでこの角度が大きくとれるようになります。全体で1kg以下にするのは非常にハードルが高いですけど ね。
──難しそうですが、軽いデタッチャブル、楽しみです。本日はありがとうございました
(聞き手、文、写真、BCN 道越一郎)
裏返して着脱するにはいろんな工夫が
タブレットとしても使える2in1のPC、dynabook R82
古賀 2 in 1として使った時の面白さを最大限に考えました。やはり、表裏いずれでも画面部とベース部を接続できる、リバーシブルドッキングが目玉ですね。画面をぐ るっとキーボードの後ろに回すタイプだと、タブレットとして使っているときに、キーボードが押されて気持ち悪いんです。そこで、リバーシブルドッキングを サポートしよう決めました。
──裏返しても画面を脱着できるというのは、おもしろいですね。技術的にはどんな工夫があったんですか。
リバーシブルドッキングで、画面を裏向きにつけることもできる
100ピンのコネクタ二個を表接続用、裏接続用にそれぞれ備えた
着脱試験は手作業でやらなければ意味がない
──とはいえ、やっぱり脱着式だと、すぐ壊れちゃうんじゃないかと心配になったりしますが……。古賀 実は、表裏5000回ずつ手作業で着脱試験をして います。このレベルでは全く問題はありません。機械に着脱を試験させる方法もありますが、それだとストレスのかかり方が一定になってしまい、実際の利用 シーンでの耐久性試験にはならないんです。時々変な角度で差し込もうとしたりするのが人間ですから、やはり人の手でやらないとちゃんとした試験にはなりま せん。
ベース部と画面部の着脱試験は手作業で行っている
古賀 まず、プレゼン時に使いやすいですよね。インターフェイスポートがそのまま使えるというメリットも大きい。タブレットのドッキングステーションのような使い方もできます。利用シーンが広く、様々な用途に使えるのが大きな特徴です。
──ベース部と画面部を無線でつなげば苦労もなかったんじゃないですか。
古賀 表示のみをタブレット側で処理するなら無線でもか なりのスピードが出ます。しかし、ベース側にメインボードをもってくることになりますから、通信ができる範囲でなければ全く使えないというデメリットがあ るんです。また、電源供給をベース側にしたかった、ということがあります。企業向けモデルでは、セカンドバッテリーモデルも用意しています。その場合には バッテリー駆動時間が倍になるが、そうしたメリットを享受するためにも、有線接続を選択したわけです。
クラムシェルとしても遜色ない製品を目指した
──ノートPCのクラムシェルスタイルにもかなりこだわったとうかがいましたが。
通常のクラムシェルと比較しても遜色ない2in1を作りたかったと語る、
ビジネスソリューション事業部 商品開発部 古賀裕一 部長
──薄く軽量でも基本性能はしっかりしているんですね。
古賀 タブレットとして使うことを考え、徹底的に軽くし ようということで、12.5インチのWindowsタブレットとしては699gという超軽量に仕上げました。そのためにファンレスにしながら、パフォーマ ンスもしっかり出るよう設計してあります。CPUにインテルのCore M プロセッサーを採用し、熱があまり出ずにきっちりと性能を出せるぎりぎりのチューニングを施しました。仕事に使うには、普通のコアシリーズとそん色ないス ピードが確保できました。
インターフェイスは充実。ベース側にはRGBのディスプレイポートも備える
ファンレスにするため放熱には徹底的にこだわった
──一口にファンレスといっても、パフォーマンスとの両立はかなり難しいんじゃないですか。古賀 パフォーマンスを一切落とさずに熱を散らすという ところに苦労しました。一部分だけ熱くならないよう放熱用のシートを入れて熱の均一化を図っています。温度が上がっても性能をやや落として熱を抑える、と いうことはほとんどしていません。東芝の考えとして、ベンチマークテストをやった時に、1回目も2回目も3回目も性能が劣化させてはいけないというものが あります。実際使っていて急に遅くなったというようなことはありません。
──放熱シートだけではなく、ほかにもいろいろと工夫したんでしょう。
古賀 設計する前に、徹底的に熱のシミュレーションを行 いました。通常はスピードを確保するため、CPUの真横にメモリを置いたりしますが、いずれも熱を持つ部品なのでなるべく散らして配置しました。また、基 盤の中に入っている銅をうまく使って熱を散らすなどの工夫もしました。同時に、放熱のための穴もないんです。
──ファンがないんだから放熱の穴ぐらいあけてもよさそうなもんですが。
インターフェイスが充実する一方で、放熱のための穴は一つもない
キーボードのうち心地も数値化して管理する
──ところで、R82に対するユーザーの反応はどんな感じですか?
我々の意図通りの評価をいただいていると語る国内営業統括部
国内マーケティング部 マーケティング企画担当 夷隅嘉晃 グループ長
──やっぱりビジネス系のニーズがかなりの部分を占めるんでしょうか。
夷隅 PCは一頃、エンターテインメント用途で市場が膨 らんだ時代がありました。ところが今は、その大部分をスマホが担っています。一方、ビジネスのニーズは堅調です。R82もビジネス用途を前面に出していま す。もちろん、個人向けでは、依然としてエンターテインメント系の用途が市場拡大の要素になるとは思いますが、具体的にはなかなか難しいですね。
──本体の話に戻りますが、東芝のPCというとキーボードの打ち心地がいいというイメージがあるのですが。
古賀 感覚を数値化して管理しています。例えば、「F」 というキーを押すとどのくらいキーボード自体がたわむかなどを数値化して管理しているんです。力いっぱい押すのはスペースキーとエンターキーだったります よね。そういった利用に耐えるように管理して設計するんです。気持ちのいいキーボードにするため、東芝のPCだけでなく、他社のPCでも、いいものを計っ て、それを基準にしています。
──今後R82はどのように進化するんでしょうか。
古賀 薄型化、軽量化、堅牢性の向上についてはまだ改善 の余地があります。SIMと組み合わせるなどの通信の利便性も考える必要があるでしょう。ただ、デタッチャブルにすると、どうしてもベース部を軽くできな いんです。画面部がそれなりの重量がありますから、ベースが軽すぎると、向こう側に倒れてしまうんです。クラムシェルとして使う際に、ディスプレイを開く 角度は120度ぐらい。ディスプレイ部を軽くすることでこの角度が大きくとれるようになります。全体で1kg以下にするのは非常にハードルが高いですけど ね。
──難しそうですが、軽いデタッチャブル、楽しみです。本日はありがとうございました
(聞き手、文、写真、BCN 道越一郎)
dynabook R82を世に送り出した古賀裕一 部長(左)と夷隅嘉晃 グループ長