「防犯・見守り」で100億円、パナソニックが新規事業で3年後に

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2015/09/11 19:22

 パナソニックが10月15日から発売する「スマ@ホーム」というホームネットワークシステムは新規事業の門出となる商品だ。「国内の家庭向けはほとんどゼロ。ホームセーフティや見守り事業の売上高を2018年度(19年3月期)に70億~100億円にしたい」と、中島幸男常務役員は新規事業に意欲を見せる。


パナソニックの中島幸男 常務役員 コンシューマーマーケティングジャパン本部長

不安に感じるが防犯機器は設置していない

 商品ラインアップはBCNランキングで既報のとおりだが、注目したいのは価格だ。屋内カメラとホームユニットのセットで税別の実勢価格は2万6000円前後。屋外カメラは、1台あたり1万8000円前後で追加できる。また人感センサー(4000円前後)やドア開閉センサー(4500円前後)も追加できる。 

 手ごろな価格と簡単な設置で、普及を後押ししできるかが、今後、事業を拡大する上で試金石となる。屋内外の様子はスマートフォン(スマホ)で外から確認できるなど、セキュリティ会社のサービスとひと味違う。 

 同社が防犯や見守りに着目したのは、ニーズはあるのに手ごろな価格の製品がないという需給ギャップだ。同社の調べでは、一般家庭の防犯に対する意識調査で70.8%の顧客が「不安に感じる」と答えている。内訳は「毎日不安を感じる」が3.9%、「不安を感じることが多い」が16.5%、「時々不安を感じる」が50.4%である。 
 


「スマ@ホーム」のシステム構成

 一方で「防犯機器を設置していない」とする顧客は72.3%と多い。不安なのに設置しない。その理由は、設置費用やランニングコストが高く、敷設自体が大変だと感じているためだ。 
 


防犯機器の設置状況と設置しない理由

防犯と見守りニーズは高まる一方

 市場環境も防犯や見守りサービスを後押しする。女性の社会進出が増えて2012年の全国の共働き世帯は1000万世帯を超えた。年々増えつづけている。また、65歳以上の人がいる世帯2093万世帯のうち、高齢者の単身や二人暮らしは約1122万世帯で53.6%と半数を超えている(いずれも12年の総務省調べ)。 
 


共働き世帯の増加


65歳以上の高齢者の単身・二人暮らし世帯の増加

 さらにパナソニックでは、共働きや高齢者世帯だけでなく、ペットと一緒に暮らす家庭における見守りニーズもあるとみる。 

 同社が実施した「家の中の様子をスマートフォンで確認したい機器があれば設置しますか」というアンケートでは、ペットオーナーの7割以上が設置に前向きであることが分かった。一般生活者や子育て中の母親、要介護者の同居者のいずれにおいても7~8割と、潜在ニーズの高さがうかがえる。 
 


スマホで家の中の様子を確認したいニーズ

相手と交互に話すことも可能

 スマホを使った見守りサービスでは、プレストーク方式で相手と交互に話すこともできる。家の中を見るだけでなく、簡単なコミュニケーションがとれるので、たとえば学校から帰ってきた子どもに外出先から声をかけることができる。この機能は屋内外のカメラに共通なので、屋外カメラに映った不審者に声を出して追い払うことも可能だ。 

 また屋内カメラには、温度センサーや音センサーも内蔵。室内が設定以上の温度になったり、設定以上の大きな音が発生したときに、スマホに通知する機能が搭載されている。

 遠くで暮らす親や自宅の子どもの様子を外出先からいつでも確認したいニーズは増えている。パナソニックの事業戦略はそのニーズを刈り取っていけるのか注目したい。 (BCNランキング 細田 立圭志)