ゲーマーから熱い支持受け、液晶ディスプレイでベンキューが2年連続上半期No.1獲得

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2015/07/31 15:00

 液晶ディスプレイ市場は現在、ベンキュージャパン、マウスコンピューター、アイ・オー・データ機器(I・Oデータ機器)の3社が激しいシェア争いを繰り広げている。月次の動きを見ると、その激しさがよくわかる。1月、2月はマウスコンピューター、3月はI・Oデータ機器、4~6月がベンキューとめまぐるしくトップが入れ替わるという、まさに激戦。その中で、2015年上半期(1~6月)の販売台数シェアで17.5%とNo.1を獲得したのがベンキューだ。2位はI・Oデータ機器で17.4%。0.1%の僅差でベンキューが逃げ切った。

 

上半期No.1獲得の原動力になったモデルは


 2015年上半期の製品別の販売台数ランキングを見ると、最も売れたモデルは、ベンキューの24インチモデル「GL2460HM」だった。販売台数シェアは5.3%。税込1万円台後半の手軽な価格帯のエントリーモデルながら、目に優しいフリッカーフリーでブルーライト軽減機能も備えたモデルであることが、ユーザーに支持されたようだ。「GL2460HM」は、発売から3年経過した息の長いモデル。日本だけでなく欧米でも人気で、24型ディスプレイの代表的な機種になっているという。 
 


2015年上半期の製品別ランキングで最も売れたベンキューの24インチモデルGL2460HM

 2015年上半期、製品別の販売台数ランキングの2位はマウスコンピューターの「ProLite XU2390HS」。税込平均単価が2万円前後。3位がI・Oデータ機器の「LCD-MF234XBR」で税込平均単価は1万円台なかばと安価なモデルだった。いずれも23型のモデルで、最近の売れ筋液晶ディスプレイのサイズを物語っている。もともと24型はベンキューが始めたサイズで、23型より一回り大きいサイズ感もベンキュー製品人気の秘密なのかもしれない。
 

ベンキュー、No.1獲得の背景は? 担当者に聞く


 ベンキューは2014年の年間販売台数シェアが1位だったことで、液晶ディスプレイ部門で「BCN AWARD 2015」を獲得している。もはや日本の液晶ディスプレイ市場でトップメーカーになったベンキュー。PCのヘビーユーザーにはすっかりおなじみのブランドに成長したが、一般にはまだその知名度は高くない。そこで、ベンキュージャパン プロダクト&マーケティング部の洞口寛 シニアマネージャーに、改めて上半期No.1獲得の背景やベンキューディスプレイの特徴、今後の戦略などについて、 BCNの道越一郎チーフエグゼクティブアナリストが話を聞いた。 

――2015年上半期No.1を獲得したベンキューのディスプレイですが、その要因は何でしょうか。 

洞口 2年ほど前から、フリッカーフリーという機能をディスプレイに搭載しはじめました。バックライト制御の技術を搭載し、目に負担のかかる画面のちらつきをゼロにしたものです。これはベンキューが最初に謳った技術で、インターネットのSNSなどでも、フリッカーフリーといえばベンキューという評判が広がりました。27インチディスプレイから始めて、現在は、ほぼ全機種が対応しています。また、ブルーライト軽減機能を搭載した製品も増やしています。そうしたとても目に優しいディスプレイというところが、支持を受けたと考えています。 
 


ベンキュージャパン プロダクト&マーケティング部の洞口寛 シニアマネージャー

ゲームの種類に特化した専用ディスプレイで成功


――コンピュータ作業をするにあたっての目の健康の問題はこの1~2年注目されていますが、かなり早い時期から取り組んでいたんですね。そのほかの特徴は何でしょうか。 

洞口 ゲーマー向けディスプレイでしょう。例えば「XLシリーズ」は、ぬるぬるとした動画再生を実現するために、リフレッシュレートを144Hzまで引き上げたディスプレイで、FPS(First Person shooting)ゲームに特化したシリーズです。FPSゲームとは、プレイヤーが主人公になって、進めていくゲームで、武器や腕などキャラクターの一部が常に画面に見えていて、敵を倒していくようなゲームですが、それに特化した製品を開発しました。 

――FPSゲームに特化するとは、どんな機能があるのでしょうか。 

洞口 短時間で生きるか死ぬかのゲームが展開していくので、反応速度が高速でなくてはなりません。「XLシリーズ」では、Gray to Grayの応答速度1msを実現しています。また、FPSの特徴として暗いシーンが多く、普通のディスプレイではなかなか見えにくいところに敵が潜んでいたりするのですが、そうしたシーンでも視認性を高めるBlack eQualizer機能を搭載しています。ゲーム中に、これまで見えなかったものが見えるようになる、というわけです。また、ゲーマーの方は長時間プレイすることも多く、目にかかる負担も大きいため、目に優しいフリッカーフリーやブルーライト軽減技術などの機能は、長時間、高いパフォーマンスを発揮できるということで、ゲーマーの方にとっても欠かせない機能になりつつあると感じています。 
 


FPSゲームに特化したXLシリーズのフラッグシップ「XL2430T」

――なるほど、これだと確かにスコアが上がりそうですね。FPS用があるということは、そのほかのジャンル用の製品も? 

洞口 はい。RTS(Real-time Strategy)ゲーム用の「RLシリーズ」もあります。リアルタイムに戦略を立てながら敵と戦っていくゲームですね。これは、FPS用の「XLシリーズ」も同じなのですが、プロゲーマーや元プロゲーマーに開発協力を仰ぎ、彼らが求める製品づくりをしています。RTSゲーム用の「RLシリーズ」は、明るさやコントラスト、色合いといったディスプレイの特性をRTS用にチューニングしたモードを備えています。また、「ストリートファイター」のような格闘ゲームに適したモードを備える製品も発売しました。 
 

レーシング用ディスプレイなども視野に


――ゲームのジャンルごとにラインアップがあるのはすごいですね。そのほかのゲームジャンル用の製品はどうなんでしょうか。 

洞口 現在のラインアップでも、ほとんどのゲームはカバーできますが、今後は、例えばレース系のゲームであったり、シミュレーションゲームであったり、RPGだったり、ゲームジャンルごとに、より適した専用モデルの開発や市場導入など、さらに領域を広げていきたいと思っています。 

――ということは、ユーザーの間では、ゲームをするならベンキューのディスプレイ、ということになっているんじゃないですか? 
 


BCNの道越一郎チーフエグゼクティブアナリスト

洞口 はい。コアなゲームユーザーはがっちり固めたと考えています。実際に、トップゲーマーや、ライトなゲーマーさんの直接の声だったり、さまざまなレビューや口コミを見るかぎり、ゲームならベンキューという定評ができあがっていると感じています。 

――欧米と違って、日本でのゲームの位置づけはまだ低いですよね。市場全体を盛り上げるような活動もされているとうかがいました。 

洞口 日本各地で開かれている、プロゲーマーの大会から、小さい体験会のようなものまで、ゲームイベントの協賛を数多く行っています。イベントでは、大量のディスプレイが必要になることもありますので、そうしたところに積極的にゲーミングディスプレイを貸し出したりして、サポートしているんです。大会にもよりますが一回につき20台から40台を貸し出すこともあるんですよ。 
 

一般向けディスプレイのさらなる拡大のためにも認知向上が必要


――とはいえ、やっぱり一般向けのディスプレイも重要ですよね。 

洞口 今最も売れている24インチモデルの「GL2460HM」を筆頭に、やはり売れ筋はエントリー層向けのモデルです。これにもフリッカーフリーとブルーライト軽減機能の両方が入っていて、価格も手ごろなのが人気が持続している理由だと思います。こうした製品がたくさん売れるわけですから、もっとライトな使い方をする層にも、どんどんアピールしていきたいと考えています。機種別の売り上げランキングで、例えばトップ10にベンキューのディスプレイが5台以上ランクインしているなんてこともよくあり、こうしたことも、ユーザー層を広げるきっかけになっていると思います。 

――秋葉原に通っているようなPCのヘビーユーザーなら、ベンキューを知らない人はいないでしょうが、一般の人となると、まだ認知が十分でないように思いますが……。 
 


洞口 目に優しくゲームに特化したモデルもラインアップしている、という強みをうまく使って、ブランドの認知を広げていきたいですね。もちろん、一般向けのディスプレイから、写真家向けのディスプレイやグラフィックデザイナー向けのディスプレイなど、ゲーム以外の用途に特化したラインアップもありますから、幅広いユーザーの用途に合う製品を提供できると思います。また、今年から来年にかけては4Kのラインアップを広げていくというのもポイントになりそうです。
 

4Kディスプレイやそのほかユニークな製品もどんどん市場に投入


――液晶テレビを起爆剤にして、4Kブームのようなものが起きていますが、ベンキューでも4Kにはしっかり対応していくということですね。 

洞口 4Kの認知が高まっている状況をうまく使って来年以降は4Kモデルを拡充していきたいと思っています。ディスプレイにはテレビとはまた違ったニーズがあるとの考えから、4Kに必須の要素をディスプレイに入れ込んだ形で製品化していきます。テレビでできないことを表現していくというコンセプトですね。27インチ以上のラインアップで4Kを広げていくという動きになりそうです。テレビには144Hz駆動で、しかもさまざまなジャンル別のゲームモードに特化した製品など、弊社がターゲットとするユーザー向けの製品がないため、そうしたところをカバーしながら、例えば、ゲームにはなくてはならない機能を搭載したディスプレイを出せるメーカーとしてオンリーワンの存在になっていきたいですね。 
 


――今後の新製品の計画を少し教えてください。 

洞口 例えば、映画コンテンツ向けの「EWシリーズ」を強化します。現在は1機種ですが、今後、2~3機種ラインアップを拡充していく計画です。また解像度が上がり、サイズが上がってきているので、4Kで27型以上のラインアップも広げていくことになると思います。そのほか、より接続性や表示性能を向上させたゲーム向けディスプレイや、欧州で人気がある、画面がカーブしたゲーム用ディスプレイや、既存のブルーライト軽減技術をさらに向上させたものなど、さまざまな使用用途に合った、ディスプレイソリューションを提供していきたいと考えています。 

――これから登場する製品も楽しみです。本日はありがとうございました。(文・聞き手:道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト) 

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