デジカメ原型「QV-10」から20年、カメラ付きテレビとして開発していた!?

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2015/07/24 20:47

 いまや、デジタルカメラに液晶モニタがあるのは当たり前だ。ファインダーの代わりにモニタを覗いて被写体を確認したり、撮った写真をチェックしたりする際に活躍する。とはいえ、フィルムカメラ時代にはこのモニタがなかった。世界で初めてモニタを搭載したデジタルカメラは、1995年3月に発売したカシオ計算機の「QV-10」だ。いまのデジタルカメラの原型が誕生して20年。カシオは7月22日に「世界初の液晶モニター付きデジタルカメラ『QV-10』発売20周年記念イベント」を開いた。


(左から)司会の麻倉氏、開発者の末高氏、カシオの中山執行役員

 イベントでは、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏を進行役に、「QV-10」の開発者である末高弘之氏(現OPCOM Japan代表取締役社長)、カシオの中山仁執行役員の3人による対談を行った。

 「QV-10」の月間販売台数は、発売当初は約3000台ほどだった。その後、人気に火がつき、夏には約1万台までに上った。結果として年間20万台を売る大ヒット製品となった。

 

大ヒットとなった「QV-10」

 当時、「QV-10」を購入した麻倉氏は「どこに持って行っても注目され、コミュニケーションに大いに役立った。ワーナースタジオにDVDの取材に行ったときに俳優が集まる食堂で『QV-10』を見せたら、俳優から撮ってくれと言われ、すごい反応だった」と振り返る。

 

当時を振り返る麻倉氏

カシオのデジカメ史、「熱子」「重子」とダジャレのようなモデルも

 カシオのデジタルカメラの歴史を振り返ってみよう。「QV-10」発売の8年前、1987年には「VS-101」というフロッピーディスクに画像をアナログ記録するカメラを開発、発売した。当時の価格は12万8000円だ。

 

ビデオカメラほどの大きさの「VS-101」

 「フィルムがいらず、フィルムの消費を気にしなくていい、テレビですぐ撮った写真が見られる、というのがコンセプトだった。ところが、ビデオカメラほどの大きさで、セールスは失敗」と、末高氏は話す。

 

「熱子」「重子」と呼ばれていた「DC-90」

 次に、試作品として1991年に「DC-90」を開発した。「作ってみたら、熱いし、重かった」と、末高氏は振り返り、社内では「熱子(あつこ)」、「重子(おもこ)」と呼ばれていたと裏話を披露した。特に、熱いのが問題で「熱さ対策にファインダーの代わりにファンを搭載した。ファインダーがないと、被写体を確認できないので、液晶モニタを外付けにすることにした」(末高氏)という。

 

「熱子」「重子」に外付けの液晶モニタを接続しているところ

 結果としては「熱子」「重子」も失敗だったわけだが、ここで得た経験が後の「QV-10」に生かされている。それが液晶モニタだ。ファインダーの代わりとして液晶モニタを接続したが、撮影したすぐ後に写真を確認できるのが面白いということに気がついたのだ。
 末高氏は「モデルの女性社員が、撮影が終わるごとにカメラのところに来て、どんな風に撮れていますか、と覗き込んでいた。この写真は気に入らない、こっちがいいなど、撮る人と撮られる人のコミュニケーションにも役だった」と話す。

 光明を見出したカシオのデジタルカメラ事業部だが、社内では「VS-101」の失敗からデジタルカメラの製品化が難しい状況だった。そこで、当時ポケット液晶テレビなどの企画を立案していた中山執行役員の力を借り、「カメラ付きの液晶テレビ」として企画書を提出した。結果として、カメラ付きのテレビ「RS-20」は発売しなかったが、「RS-20」からテレビチューナーを外した「QV-10」が発売された。

 

企画書とカメラ付きのテレビ「RS-20」(未発売)

 「QV-10」の発売までの険しい道のりを聞いた麻倉氏は「失敗があってもこの道はデジタルだと信じて進んだ執念があった。そして単にアナログをデジタルに置き換えるのではなく、ファインダーの回転やモニタの搭載などデジタルならではのことをしたのがよかった」と評価した。

これからのデジタルカメラ いずれはシャッターレスに

 デジタルカメラ市場に革命をもたらしたカシオ。デジタルカメラの未来は、どのように考えているのだろうか。中山執行役員は「シャッターレス化」を挙げた。

 「静止画と動画を区別せずに撮影して、後から好きな写真を取り出せるのが理想。そうすればシャッターを押すという行為がなくなる。また、画素数競争は今後続いていくと思う。デジタルズームを考えると画素数はあればあるほどいい。超高画素で見えてくるものがある。そういうカメラをいずれやりたい」と、中山執行役員はさらなるデジカメの革新を誓った。