日立が13年ぶり家庭用ポンプ、省エネと低騒音性でNo.1実現

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2015/07/10 19:27

 日立アプライアンスは7月7日、家庭用ポンプ「スマート強(つよし)くん」WM-P250Xを10月1日から発売すると発表した。価格は事業者向けの積算見積価格で11万円(税別)。同社にとって家庭用ポンプの発表会は13年ぶりのことだが、同事業の歴史は古く1918年(大正7年)までさかのぼる。2018年には100年事業になるほど、息の長い事業なのだ。


新商品「スマート強(つよし)くん)」WM-P250Xは、同社の家庭用ポンプの発表会として13年ぶりの開催

家庭用ポンプは新興国向けにも期待

 家庭用ポンプ事業について日立アプライアンスの松田美智也取締役家電・環境機器事業部長は「2014年度の売上高は84億円で、内訳は日本よりもタイが半分以上を占めている。今後は新興国でのニーズが期待でき、今回、浅井戸用ポンプ(ミニタンク式)でフルモデルチェンジをした」と語る。

 家庭用ポンプの国内の市場規模は、年ごとの寒波や猛暑による季節変動はあるものの年間約19万台と安定した需要がある。井戸水は千葉県や福岡県では10万世帯以上、全国5500万世帯のうち約135万世帯が使っている。散水や洗車、洗濯、トイレ、洗面、風呂など生活用水としての利用が多いという。
 

「新興国向けニーズも期待できる」と語る日立アプライアンスの松田美智也取締役家電・環境機器事業部長

省エネと低騒音でNo.1

 フルモデルチェンジしたWM-P250は、消費電力350Wで省エネNo.1(浅井戸用電気井戸ポンプ)と、40dBで低騒音No.1(同)を達成した。

 これを実現した主要な技術が、井戸から吸い上げた水をポンプから排出する際のキーデバイスとなるポンプヘッドの改良と、水の量の変化を正確に測定できる「カルマン渦式超音波流量センサー」の搭載である。

 ポンプヘッドの改良では、井戸水を吸い上げるときに一緒に砂などが流入することで摩耗しやすいケーシングと呼ばれる部品の素材を、耐摩耗性の高い素材に変えた。従来は硬い青銅製だった材質を、柔らかい弾力性のある「ガラス強化樹脂」に変更。部品を変形させる砂の摩耗エネルギーを、クッションのように吸収することで大幅に低減させたのだ。

 ほかにも、ケーシング周辺の水の流路を、抵抗なく水が流れるように最適化して、省エネと低騒音化につなげた。
 

耐摩耗性ケーシングの原理
 

WM-P250Xに使われている耐摩耗性ケーシング(右)

新しいセンサー技術で省エネ

 もうひとつの「カルマン渦式超音波流量センサー」は、水の量を測りながらモーターの無駄な回転をなくす。カルマン渦とは、流路に逆三角形のくさびを設けて、そこを通る水が引き起こす渦のこと。風になびく旗の原理と似ている。

 このカルマン渦が水の量によって変わる様子を電圧セラミックセンサーが検知して、モーターの回転が最適になるように指示するというわけだ。無駄な電力消費が抑えられたことが、省エネNo.1につながった。
 

「カルマン渦式超音波流量センサー」でモーターの無駄な回転を抑える