本格かまどのご飯がホントに炊ける? 三菱の「本炭釜 KAMADO」を試した
三菱が6月21日に発売した高級IHジャー炊飯器「本炭釜 KAMADO NJ-AW106」は、「きわだつ粒感とみずみずしさ」がウリ。ご飯の一粒一粒の食感を残しながらも、中にみずみずしさを閉じ込めるように炊くことで、ご飯のおいしさを追求した製品だ。ボタンを押すだけで、本格的なかまどで炊いたご飯の味が毎日楽しめるというが、果たしてその実力は? 実際に炊いて食べてみた。
最近、地元のいくつかの商店街で唐揚げ専門店が意外に多くあることに気が付いた。大分県には多くの唐揚げ専門店があるそうで、それが東京に進出してきたとかで、日曜日ともなるとお客が行列をなす。
コンビニエンスストアのレジの回りにも、唐揚げやチキンはいまや定番品としておかれるようになった。どうして唐揚げはこんなに人を魅了するのだろう。ふと、そんなことを考えたときに、人がおいしいと感じる食感のひとつに「外はサクサク、中はジューシー」という共通のキーワードがあるのではないかと勝手に思った。
揚げたての唐揚げの「外はサクサク、中はジューシー」という食感は、たとえば石窯で焼き上げたピザ生地の「外はカリカリ、中はもちもち」といった食感にも通じるものがある。メロンパンでも「外の皮はサクサク、中はもっちり」を売りにする専門店が増えている。こう考えると、人がおいしいと感じる食感のひとつに、外は少し硬いけど、中は水分やうまみが閉じ込められているということはないだろうか。
三菱の「本炭釜 KAMADO」は、商品開発をするにあたってかまどで炊いたご飯を研究。かまどで炊いたおいしいご飯の秘密は「粒感とみずみずしさ」にあるのではないかと考えて、それを追求した。チャートにすると、「本炭釜 KAMADO」は同社の従来機種よりもご飯の硬さと、みずみずしさ(含水率)が突き抜けたゾーンに位置する。
従来機種では、ご飯の粒感を目指すと、ご飯の中のみずみずしさが少なくなってしまっていたという。逆にみずみずしさを追求すると、ご飯がやわらかくなってしまい粒感が失われてしまう。つまり、ご飯の粒感(硬さ)とみずみずしさはトレードオフの関係にあったのだ。「本炭釜 KAMADO」は、どのようにしてこの二つの両立を実現させたのだろうか。
まず今回、これまでの本炭釜と大きく異なるのが「新羽釜形状」の本炭釜を採用したこと。10周年を迎えた三菱の本炭釜シリーズは、当初から純度99.9%の炭素材料を一つひとつ削り出して作られている。炊飯器の火力に相当するIHコイルによって発生する磁力線と炭の相性はよく、熱が内釜の深くまで浸透する。これが釜の中全体を発熱させながら大火力でご飯を炊き上げる効果を生む。
今回の「本炭釜 KAMADO」でもその基本的な仕組みは踏襲しているが、釜の上部から横に羽根が飛び出している「羽釜形状」にポイントがある。かまどで炊くときの羽釜は、ふたとの間に大きな空間が生じている。「本炭釜 KAMADO」の場合、0.95Lの空間体積分の空間がある。この空間の温度を見てほしい。97~98℃と、従来機種よりも低くなっていることがわかる。
つまり、羽釜の内部を大火力で沸騰させても、低い温度の上部の空間が吹きこぼれを抑えてくれるのだ。吹きこぼれる心配がないため、火力を途中で弱めることなく、連続した沸騰を維持させながらご飯を炊き上げることができる。三菱ではこれを「激沸騰」と呼んでいる。
激沸騰で大火力を持続することで、炊飯中に生じるうまみ成分のおねばや、お米の一粒一粒に熱を伝える気泡がしっかりと閉じ込められる。ちなみに、三菱は圧力炊飯方式を採用していないので、内釜の気圧は「かまどの羽釜」と同じ1.0気圧である。
実際にお米を炊いてみた。米はスーパーで購入した新潟県産コシヒカリの無洗米。5.5合炊きなので、一気に5合炊いてみることにした。メーカーの担当者から「羽釜の羽根からはみ出すことなくぴったり炊ける」と聞いていたので、実際に試したくなったからだ。
「お米」ボタンを押して無洗米を選択。次に「銘柄芳潤」ボタンを押してコシヒカリを選択。好みによって、5段階のかたさ(かため~やわらか)、3段階の粘り(しゃっきり~もちもち)が選べる。今回は、真ん中の「ふつう」にしてみた。あとは炊飯ボタンのスイッチを押すだけ。こんな簡単な作業で、かまどで炊いたご飯が味わえるのかと思うと期待が膨らむ。
待つこと62分。炊飯後にふたを開けてみると、蒸気の中から一粒一粒が立っているご飯が見えた。へこみはなく、全体的にバランスよくふっくらと炊き上がっている。釜底から上がってきた泡が、しっかりとご飯に熱を伝えていることを示す「かに穴」も確認できた。正直、炊飯容量マックスに近い5合で、ここまでバランスのいい炊き上がりに驚かされた。
しかも、ご飯が羽釜の羽根より下の位置でとまっている。羽根よりも上の空間の温度が97~98℃に保たれることで、炊きムラなく、ご飯に熱を伝えることができるのだ。
実際に茶碗にご飯を盛ってみると、一粒一粒がつぶれていない。ご飯を食べてみると、見た目の通りに口の中で粒感が得られる。それでいて、中は粘りややわらかさがあり、みずみずしく感じた。
日本人の食文化には、おかずとご飯を口の中で一緒にして食べる口中調理という特徴がある。海外ではリゾットやパエリア、チャーハンなど、具とご飯をまぜて調理されることが多い。三菱の「本炭釜 KAMADO」のご飯は、タラコだけでもご飯がグングンとすすむ、そんな日本の食卓にもあった味のように感じた。(BCN・細田 立圭志)
本炭釜10周年モデルの三菱電機の「本炭釜 KAMADO」
最近、地元のいくつかの商店街で唐揚げ専門店が意外に多くあることに気が付いた。大分県には多くの唐揚げ専門店があるそうで、それが東京に進出してきたとかで、日曜日ともなるとお客が行列をなす。
コンビニエンスストアのレジの回りにも、唐揚げやチキンはいまや定番品としておかれるようになった。どうして唐揚げはこんなに人を魅了するのだろう。ふと、そんなことを考えたときに、人がおいしいと感じる食感のひとつに「外はサクサク、中はジューシー」という共通のキーワードがあるのではないかと勝手に思った。
ご飯の炊き上がりの「粒感とみずみずしさ」を追求
揚げたての唐揚げの「外はサクサク、中はジューシー」という食感は、たとえば石窯で焼き上げたピザ生地の「外はカリカリ、中はもちもち」といった食感にも通じるものがある。メロンパンでも「外の皮はサクサク、中はもっちり」を売りにする専門店が増えている。こう考えると、人がおいしいと感じる食感のひとつに、外は少し硬いけど、中は水分やうまみが閉じ込められているということはないだろうか。
三菱の「本炭釜 KAMADO」は、商品開発をするにあたってかまどで炊いたご飯を研究。かまどで炊いたおいしいご飯の秘密は「粒感とみずみずしさ」にあるのではないかと考えて、それを追求した。チャートにすると、「本炭釜 KAMADO」は同社の従来機種よりもご飯の硬さと、みずみずしさ(含水率)が突き抜けたゾーンに位置する。
粒感(硬さ)とみずみずしさ(含水率)の関係
従来機種では、ご飯の粒感を目指すと、ご飯の中のみずみずしさが少なくなってしまっていたという。逆にみずみずしさを追求すると、ご飯がやわらかくなってしまい粒感が失われてしまう。つまり、ご飯の粒感(硬さ)とみずみずしさはトレードオフの関係にあったのだ。「本炭釜 KAMADO」は、どのようにしてこの二つの両立を実現させたのだろうか。
本炭釜で初となる「新羽釜形状」を採用
まず今回、これまでの本炭釜と大きく異なるのが「新羽釜形状」の本炭釜を採用したこと。10周年を迎えた三菱の本炭釜シリーズは、当初から純度99.9%の炭素材料を一つひとつ削り出して作られている。炊飯器の火力に相当するIHコイルによって発生する磁力線と炭の相性はよく、熱が内釜の深くまで浸透する。これが釜の中全体を発熱させながら大火力でご飯を炊き上げる効果を生む。
今回の「本炭釜 KAMADO」でもその基本的な仕組みは踏襲しているが、釜の上部から横に羽根が飛び出している「羽釜形状」にポイントがある。かまどで炊くときの羽釜は、ふたとの間に大きな空間が生じている。「本炭釜 KAMADO」の場合、0.95Lの空間体積分の空間がある。この空間の温度を見てほしい。97~98℃と、従来機種よりも低くなっていることがわかる。
粒感があり、中はみずみずしいご飯の秘密は羽釜の上部空間にある
つまり、羽釜の内部を大火力で沸騰させても、低い温度の上部の空間が吹きこぼれを抑えてくれるのだ。吹きこぼれる心配がないため、火力を途中で弱めることなく、連続した沸騰を維持させながらご飯を炊き上げることができる。三菱ではこれを「激沸騰」と呼んでいる。
激沸騰で大火力を持続することで、炊飯中に生じるうまみ成分のおねばや、お米の一粒一粒に熱を伝える気泡がしっかりと閉じ込められる。ちなみに、三菱は圧力炊飯方式を採用していないので、内釜の気圧は「かまどの羽釜」と同じ1.0気圧である。
5合炊きでご飯が「羽根」までぴったりに炊けるわけとは
実際にお米を炊いてみた。米はスーパーで購入した新潟県産コシヒカリの無洗米。5.5合炊きなので、一気に5合炊いてみることにした。メーカーの担当者から「羽釜の羽根からはみ出すことなくぴったり炊ける」と聞いていたので、実際に試したくなったからだ。
「お米」ボタンを押して無洗米を選択。次に「銘柄芳潤」ボタンを押してコシヒカリを選択。好みによって、5段階のかたさ(かため~やわらか)、3段階の粘り(しゃっきり~もちもち)が選べる。今回は、真ん中の「ふつう」にしてみた。あとは炊飯ボタンのスイッチを押すだけ。こんな簡単な作業で、かまどで炊いたご飯が味わえるのかと思うと期待が膨らむ。
新潟県産コシヒカリ(無洗米)を5合炊いてみた
待つこと62分。炊飯後にふたを開けてみると、蒸気の中から一粒一粒が立っているご飯が見えた。へこみはなく、全体的にバランスよくふっくらと炊き上がっている。釜底から上がってきた泡が、しっかりとご飯に熱を伝えていることを示す「かに穴」も確認できた。正直、炊飯容量マックスに近い5合で、ここまでバランスのいい炊き上がりに驚かされた。
しかも、ご飯が羽釜の羽根より下の位置でとまっている。羽根よりも上の空間の温度が97~98℃に保たれることで、炊きムラなく、ご飯に熱を伝えることができるのだ。
5合で炊いたご飯は、羽根より下の位置でとまる。上部の空間を確保することでご飯の一粒一粒が立つ。熱がご飯に伝っていることを示す「かに穴」も確認できる
実際に茶碗にご飯を盛ってみると、一粒一粒がつぶれていない。ご飯を食べてみると、見た目の通りに口の中で粒感が得られる。それでいて、中は粘りややわらかさがあり、みずみずしく感じた。
粒感を得られながらも、中は粘りややわらかい食感だった
日本人の食文化には、おかずとご飯を口の中で一緒にして食べる口中調理という特徴がある。海外ではリゾットやパエリア、チャーハンなど、具とご飯をまぜて調理されることが多い。三菱の「本炭釜 KAMADO」のご飯は、タラコだけでもご飯がグングンとすすむ、そんな日本の食卓にもあった味のように感じた。(BCN・細田 立圭志)