<地域No.1店舗の売れる秘訣・レモン社新宿店>苦難を乗り越えて成長軌道に乗る 買い取り・販売ともに順調
東京・新宿の中古カメラ専門店、レモン社新宿店のビジネスが順調だ。新宿駅周辺はカメラ量販店が密集する激戦区だが、レモン社新宿店はフィルムカメラを前面に押し出してカメラ量販店と共存共栄の状況で、買い取りと販売ともに前年を上回っている。2011年のオープン当時は厳しく、一時は閉店も検討したが、景気の回復や知名度の向上などでもち直した。今では、苦難を乗り越えて成長軌道に乗っている。(取材・文/佐相彰彦)
レモン社新宿店
店舗データ
住所 東京都新宿区西新宿1-15-4 第2セイコービル3F
オープン日 2011年4月8日
売り場面積 約130m2
従業員数 4人
世界屈指の巨大ターミナル駅、新宿駅周辺は、国内最大の繁華街になっているだけでなく、オフィスビルも多く、文字通り昼夜ともに多くの人で賑わう街だ。家電量販店に関しても、ヨドバシカメラが新宿西口本店とマルチメディア新宿東口店の2店舗、ヤマダ電機がLABI新宿西口館とLABI新宿東口館の2店舗、ビックカメラが新宿西口店と新宿東口駅前店、ビックロの3店舗を出店し、2000億円の市場規模を誇る家電の街としても有名だ。また、カメラの買い取り・販売のマップカメラやカメラのキタムラなどもあって、いわばカメラの聖地になっている。この激戦区に、中古カメラ専門店のレモン社新宿店が出店したのは、2011年4月だった。
本来は3月にオープンする予定だったが、「東日本大震災の影響で準備が遅れ、1か月延期した」と、レモン社新宿店で責任者を務める名古義昭氏は振り返る。
4月にオープンはしたものの、その後は苦難の連続だった。「景気自体が大きく落ち込んでいた。とくに中古品に関しては、上質なカメラやレンズをまったく買い取ることができず、看板の中古カメラ販売がガタガタだった」という。これが1年程度続いて、「一時は閉店も検討したが、もう少しがんばろうという判断で、続けることになった」そうだ。
新宿に出店したのは、大阪を本拠地とするグループ会社のナニワ商会がヨドバシカメラマルチメディア梅田をオープンした時期に、近くにカメラの買い取りセンターを出店し、収益の上がる高品質の中古カメラの買い取りに成功したため。このビジネスモデルを、東京でも試そうと考えたからだ。名古氏も、「大阪の成功事例は絶対に横展開できると考えていた」という。
苦しかった1年が過ぎると、景気の回復に伴って、レモン社新宿店の業績は伸び始めた。「フィルムカメラの買い替えや、中古のフィルムカメラを売ってデジタルカメラを購入しようというお客様が多くなった。買い取りが増えたことによって、中古の品揃えが充実して、その購入者も増えた」という。
新宿にはカメラ量販店、中古カメラ専門店が多く、「高額で買い取ってもらおうと、複数の店を回るお客様が多い」という。そうしたお客様を確実に獲得するために、「競合店に比べて査定価格を高く提示する」という、いわば王道の作戦が功を奏している。これによって、買い取りのお客様の多くがリピーターになり、さらには「お客様を紹介してくれる」(名古氏)。買い取りはさらに増加した。
フィルムカメラの買い取り・販売の主力は、レモン社が得意とする独ライカの製品。「(本店に位置づけられる)銀座教会店は、買い取り・販売ともライカがほとんどだが、当店はニコンなど、国産メーカーの比率が高まっている」という。これは、銀座教会店はコレクターの来店が多いのに対して、新宿店は「実際に撮影するために購入する人が多い」からだ。
レモン社初のスタジオでの撮影サービスは、「就職活動の履歴書やパスポートの写真撮影のお客様が多く、忙しいときには15分に一人の割合」という。撮影サービスの売り上げは、2012年に前年の2.5倍を記録し、「今でも前年の1.5倍になる月が多い。低くても1.3倍」だ。この好調を受けて、今年7月にはスタジオを増床。「2か所にして、お客様をお待たせしないようにした」(名古氏)。
レモン社新宿店の一番の強みを名古氏は「スタッフの接客によって、お客様がついてきている」と自負している。スタッフは、お客様から指名されるケースが多い。「買い取りの査定は、単に査定額を提示しただけではお客様は納得しない。お客様が満足するように、ボディやレンズ、部品など、一つひとつの状態をきちんと説明している」。この接客が信頼され、高評価につながり、高額査定とともに他店に勝つための武器になった。
カメラの買い取り・販売、撮影サービスと、お客様が満足する接客によって、今ではオープン当時の落ち込みから完全に脱却。激戦区のなかで、「フィルムカメラを当店に売ったお金で、カメラ量販店でデジタルカメラを購入するという共存共栄が成り立っているので、カメラ量販店とは競争していない」という。周辺の中古カメラ専門店は競合だが、最近では差異化策として、「レンズの買い取りを強化している。フィルムカメラのお客様だけでなく、レンズ交換型のデジタルカメラをもつユーザーもお客様として獲得したい」と、あの手この手で競争に打ち勝っていく。
新宿にある中古カメラ専門店のカメラのキタムラ、マップカメラは、どちらも大手。そこで、カメラ量販店との共存共栄という策を講じた。大阪では成功している。「東京でもうまくいけば、当社にとって大きな武器になる」と目を輝かせる。
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年10月13日付 vol.1550より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
レモン社新宿店
店舗データ
住所 東京都新宿区西新宿1-15-4 第2セイコービル3F
オープン日 2011年4月8日
売り場面積 約130m2
従業員数 4人
カメラ激戦区・新宿に出店 オープンから苦難の連続
世界屈指の巨大ターミナル駅、新宿駅周辺は、国内最大の繁華街になっているだけでなく、オフィスビルも多く、文字通り昼夜ともに多くの人で賑わう街だ。家電量販店に関しても、ヨドバシカメラが新宿西口本店とマルチメディア新宿東口店の2店舗、ヤマダ電機がLABI新宿西口館とLABI新宿東口館の2店舗、ビックカメラが新宿西口店と新宿東口駅前店、ビックロの3店舗を出店し、2000億円の市場規模を誇る家電の街としても有名だ。また、カメラの買い取り・販売のマップカメラやカメラのキタムラなどもあって、いわばカメラの聖地になっている。この激戦区に、中古カメラ専門店のレモン社新宿店が出店したのは、2011年4月だった。
レモン社新宿店のある路地には飲食店などが建ち並んで昼夜ともに賑わう
本来は3月にオープンする予定だったが、「東日本大震災の影響で準備が遅れ、1か月延期した」と、レモン社新宿店で責任者を務める名古義昭氏は振り返る。
4月にオープンはしたものの、その後は苦難の連続だった。「景気自体が大きく落ち込んでいた。とくに中古品に関しては、上質なカメラやレンズをまったく買い取ることができず、看板の中古カメラ販売がガタガタだった」という。これが1年程度続いて、「一時は閉店も検討したが、もう少しがんばろうという判断で、続けることになった」そうだ。
新宿に出店したのは、大阪を本拠地とするグループ会社のナニワ商会がヨドバシカメラマルチメディア梅田をオープンした時期に、近くにカメラの買い取りセンターを出店し、収益の上がる高品質の中古カメラの買い取りに成功したため。このビジネスモデルを、東京でも試そうと考えたからだ。名古氏も、「大阪の成功事例は絶対に横展開できると考えていた」という。
新宿駅周辺はヨドバシカメラ新宿西口本店(写真)など、カメラ量販店が密集する激戦区
高額査定と接客が他店に勝つ武器 撮影サービスは前年の1.5倍に
苦しかった1年が過ぎると、景気の回復に伴って、レモン社新宿店の業績は伸び始めた。「フィルムカメラの買い替えや、中古のフィルムカメラを売ってデジタルカメラを購入しようというお客様が多くなった。買い取りが増えたことによって、中古の品揃えが充実して、その購入者も増えた」という。
新宿にはカメラ量販店、中古カメラ専門店が多く、「高額で買い取ってもらおうと、複数の店を回るお客様が多い」という。そうしたお客様を確実に獲得するために、「競合店に比べて査定価格を高く提示する」という、いわば王道の作戦が功を奏している。これによって、買い取りのお客様の多くがリピーターになり、さらには「お客様を紹介してくれる」(名古氏)。買い取りはさらに増加した。
フィルムカメラの買い取り・販売の主力は、レモン社が得意とする独ライカの製品。「(本店に位置づけられる)銀座教会店は、買い取り・販売ともライカがほとんどだが、当店はニコンなど、国産メーカーの比率が高まっている」という。これは、銀座教会店はコレクターの来店が多いのに対して、新宿店は「実際に撮影するために購入する人が多い」からだ。
国産メーカーの比率が高まっているという
レモン社初のスタジオでの撮影サービスは、「就職活動の履歴書やパスポートの写真撮影のお客様が多く、忙しいときには15分に一人の割合」という。撮影サービスの売り上げは、2012年に前年の2.5倍を記録し、「今でも前年の1.5倍になる月が多い。低くても1.3倍」だ。この好調を受けて、今年7月にはスタジオを増床。「2か所にして、お客様をお待たせしないようにした」(名古氏)。
スタジオでの撮影サービスも提供している
レモン社新宿店の一番の強みを名古氏は「スタッフの接客によって、お客様がついてきている」と自負している。スタッフは、お客様から指名されるケースが多い。「買い取りの査定は、単に査定額を提示しただけではお客様は納得しない。お客様が満足するように、ボディやレンズ、部品など、一つひとつの状態をきちんと説明している」。この接客が信頼され、高評価につながり、高額査定とともに他店に勝つための武器になった。
買い取りの査定時は、一つひとつ状態を説明している
カメラの買い取り・販売、撮影サービスと、お客様が満足する接客によって、今ではオープン当時の落ち込みから完全に脱却。激戦区のなかで、「フィルムカメラを当店に売ったお金で、カメラ量販店でデジタルカメラを購入するという共存共栄が成り立っているので、カメラ量販店とは競争していない」という。周辺の中古カメラ専門店は競合だが、最近では差異化策として、「レンズの買い取りを強化している。フィルムカメラのお客様だけでなく、レンズ交換型のデジタルカメラをもつユーザーもお客様として獲得したい」と、あの手この手で競争に打ち勝っていく。
買い取りを強化している交換レンズ
責任者が語る人気の理由――名古義昭 店長
写真の専門学校を経て、DPEショップで働き、その後、レモン社に入社した。銀座教会店で経験を積み、新宿店のオープン時に責任者として現場を任された。銀座教会店がコレクター、新宿店が写真愛好家と、主要客層は異なるとはいえ、どのお客様もカメラに関する知識は豊富だ。「お客様からのどんな質問にも答えられるよう、日々、勉強している」。この努力が質の高い接客につながっている。
新宿にある中古カメラ専門店のカメラのキタムラ、マップカメラは、どちらも大手。そこで、カメラ量販店との共存共栄という策を講じた。大阪では成功している。「東京でもうまくいけば、当社にとって大きな武器になる」と目を輝かせる。
■人気の理由
・他店よりも高額で買い取る
・査定額の理由をしっかりと説明
・カメラ量販店との共存共栄
・他店よりも高額で買い取る
・査定額の理由をしっかりと説明
・カメラ量販店との共存共栄
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年10月13日付 vol.1550より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは