「IFA2014」展示からみえてきた4Kテレビの進化の方向

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2014/09/09 20:23

【ドイツ・ベルリン発】世界最大のエレクトロニクスショー「IFA2014」では、今年も「4K」が一つの大きなトピックになっている。世界のテレビメーカーが今年後半の主力製品として展開する4Kテレビが、会場を埋め尽くした。その展示内容を俯瞰すると、各社各様の戦略がみえてきた。

 パナソニックは「VIERA」シリーズ初の直下型LEDバックライトと高精度ローカルディミング(局所輝度制御)を搭載する「AX900」シリーズを発表。昨年の「IFA2013」では65型の4Kテレビ「TX-L65WT600」を発表したが、1年かけて画質や機能面での着実な成長をアピールする強力なモデルを用意してきた。

パナソニックの新しい4Kビエラ「AX900」シリーズ

パナソニックの新しい4Kビエラ「AX900」シリーズ

 ローカルディミングの制御領域を従来モデルの「3×3」から「5×5」へと細分化し、LEDバックライトの点灯もオン/オフの間の中間状態まで段階的に制御することで、より繊細な明暗表現ができるようになった。

 また、欧州では珍しく本体に外付けしたUSB-HDDへのテレビ番組録画機能を設けたうえ、クラウドサービスを経由して、録画番組を宅外からモバイル端末で視聴できる「TV Anywhere」のサービス訴求にも力を入れる。これまでテレビ録画に関心の薄かったヨーロッパの人々が、ライフスタイルに合ったテレビの遠隔視聴がより便利になれば、そのための手段として録画を活用するようになるのだろうか。反響が楽しみだ。

 ソニーは、日本国内にも展開する「X9200Bシリーズ」「X8500Bシリーズ」に相当する液晶テレビ「ブラビア」のヨーロッパモデルを出展。さらに「4K X-Reality PRO」による高精度のアプコン技術や、4K動画撮影に対応するスマートフォン「Xperia」シリーズで撮影したコンテンツの表示など、ソニーならではの4K高画質技術と連携サービスをアピールする。日本では販売していない「X9200Bシリーズ」系の79型など、大型モデルにお目にかかれるのも海外の展示会ならではだ。

 日本にない「ブラビア」のラインアップといえば、ディスプレイ部分を湾曲させた4Kテレビ「S90Bシリーズ」。サイズは75/65型の2機種だ。日本ではなじみの薄い湾曲型テレビを、ソニーがなぜIFAで発表したのか。その答えは、サムスンやLGをはじめ、海外テレビメーカーのブースに足を運べば、たちどころにわかる。

湾曲型の4K液晶テレビ「S90Bシリーズ」をヨーロッパ向けに展開

湾曲型の4K液晶テレビ「S90Bシリーズ」をヨーロッパ向けに展開

 今年、メッセ・ベルリンの会場内にオープンしたホール「CityCube」の広大な展示スペースを、IFAで初めて使うことになったのはサムスンだ。毎年、IFA会場のさまざまなスペースに、コンシューマーエレクトロニクスから白物家電まで、幅広いカテゴリの商品群をところ狭しと出展するサムスンが、今年は「CityCube」をフルに活用して自慢の商品群を一堂に集めた。

 テレビのトップエンドの製品群は、4Kの「Curved TV(湾曲型テレビ)」だ。通常のフラットな状態と湾曲した状態をリモコン操作で切り替える「Bendable TV」は、世界最大サイズをうたう105インチの4Kテレビを出展。「4Kの没入感をより引き立たせるソリューション」として、湾曲型テレビに徹底して力を入れていく姿勢をみせた。

「Curved TV」の魅力を強く訴求したサムスン

「Curved TV」の魅力を強く訴求したサムスン

 同じ湾曲型4Kテレビながら、今年のフラッグシップモデルとして有機ELテレビにスポットを当てていたのが、LGエレクトロニクスだ。77型の4K有機ELテレビは、こちらもディスプレイの形状をフラット/カーブドで自動で切り替える機能を前面に出している。年初のCES2014で発表した105型/アスペクト比21:9の湾曲5K液晶テレビは、IFAの会場にも登場。ハーマンカードン製の7.2chサラウンドスピーカーを内蔵するなど、LGならではの付加価値を添えて提案する。

LGの77型有機EL湾曲型テレビと105型の湾曲型液晶テレビ

LGの77型有機EL湾曲型テレビ(上)と105型の湾曲型液晶テレビ

 中国のハイセンスも、来年の発売に向けて4Kの湾曲型液晶テレビを開発中だ。ブースのメインステージに85型のモデルを出展し、足早に通路を通り過ぎようとしていた来場者まで、いったん足を止めて映像に見入っている姿が印象的だった。

左がフラットな状態。右がリモコンのボタン操作で湾曲した状態

左がフラットな状態。右がリモコンのボタン操作で湾曲した状態

 こうした湾曲型テレビからは、海外のメーカーが中心になって、4Kの成長を促すための一つのトレンドに育てていこうという機運が感じられた。じっくりと映像を視聴すると、確かにフラットタイプの4Kテレビで視聴するよりも、映像の世界への没入感が高い。ただ、同時に、よほど大きな画面のテレビでない限り、スイートスポットで没入感を得られる視聴者の数も限られてくるので、家族が集まるリビングに置くテレビとしては、やや訴求の方法に違和感を覚えた部分もある。

 家族で集まって見るときはフラットな状態、一人で映画の世界に浸りたいときには湾曲させたシアタースタイルと、用途に応じて使い分けができそうな自動スイッチタイプの湾曲対応4Kテレビに、これからの4K普及に向けた一つの活路が見え隠れしていた。

 また、4Kの異なる切り口として、東芝が国内でも人気の「Z9Xシリーズ」による映像デモに加え、鏡面仕様のミラー型ディスプレイを展示して、来場者の注目を集めていた。こちらはリビングのテレビとしての用途よりも、家庭内の生活空間にフィットする情報ディスプレイとして、あるいは商用も視野に入れたサイネージ用のディスプレイとしての提案も検討しているという。

日本でも人気の「Z9Xシリーズ」とミラー型の情報ディスプレイ

日本でも人気の「Z9Xシリーズ」(左)とミラー型の情報ディスプレイ(右)

 欧州で絶大な人気を誇るフィリップスのテレビは、今年は4Kに加えてAndroid OSの搭載をアピール。Andoridベースのゲームやブラウザ、VODアプリなどが活用できるスマートテレビとして、独自のスタンスから高画質と利便性の融合を提案していた。

4K+Androidで次世代のプレミアム感をアピールするフィリップス

4K+Androidで次世代のプレミアム感をアピールするフィリップス