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<地域No.1店舗の売れる秘訣・ケーズデンキ府中本店>地道にこつこつと地位を確立 常に「お客様の満足」を考える

特集

2014/05/07 12:18

 東京都府中市のケーズデンキ府中本店は、2003年6月のオープンから地道にこつこつとビジネスを手がけ、現在は市内の家電量販店のなかで不動の地位を築いている。高齢層の地元住民を常連客として確保しながら、都心に行かなくてもお目あてのモデルが手に入る豊富な品揃えで、若年層もがっちりつかんだ。これは、スタッフ間で徹底的に情報を共有し、「お客様が満足するものは何か」を常に考え続けてきた結果だ。(取材・文/佐相彰彦)

ケーズデンキ府中本店


ケーズデンキ府中本店
店舗データ
住所 東京都府中市日鋼町1-4
オープン日 2003年6月
売り場面積 約5300m2
従業員数 約90人

職住のバランスがいい街 増床で遠方からの客を確保



 東京都の西側に位置する府中市は、人口25万3000超と、多摩地域26市のなかでは八王子市・町田市に次ぐ規模。宅地開発が進んだ1950年以降から人口が増加した。行政機関が集積し、市が独自に夜間・休日診療体制を整えているなど、住みやすい環境で他地域からの人口流入も多い。

 市の名は、武蔵国の国府が置かれていたことに由来する。総社の大國魂神社から京王線の府中駅まで続く馬場大門のケヤキ並木が有名で、観光客が多い街でもある。また、大手企業が工場や研究所など大規模な施設を置くなど、多摩地域の拠点都市の一つになっている。

 昼間人口・夜間人口がともに多いことから小売りには適したロケーションで、家電量販店も、府中駅周辺にコジマNEW府中店、ディスカウントストアのダイクマから業態変更したヤマダ電機テックランド府中店が出店。激しい競争を繰り広げている。

 その激戦区で頭一つ抜け出た存在が、ケーズデンキ府中本店だ。日本製鋼所東京製作所の跡地で、金融機関や高層ビルなどが建つオフィス街の府中インテリジェントパーク内に、2003年6月にオープンした。当初は知名度が低く、ライバルとの激しい競争を繰り広げていたが、今では平日には住民や近くに勤務する会社員で賑わい、休日にはクルマで家族連れが多く訪れる店舗にまで成長した。「価格で競争するのではなく、お客様が気軽に来店できる環境をいかに整えるかに力を注いだ結果」と、谷田部祐二店長は説明する。オープン当初は約3000m2だった売り場面積を、2012年11月に1.5倍以上の約5300m2まで増床。このリニューアルによって、遠方からもお客様が来店するようになった。

府中インテリジェントパークには金融機関を中心に多くのオフィスが入る(写真は府中Jタワー)

府中インテリジェントパークには金融機関を中心に多くのオフィスが入る(写真は府中Jタワー)

近くには多くの参拝者が訪れる大國魂神社がある

近くには多くの参拝者が訪れる大國魂神社がある

「扱っていない商品はない」で勝負 消耗品の充実で大型商品が売れる



 現在のケーズデンキ府中本店の売り場構成は、1階と地下1階が駐車場、2階が白物家電、3階がデジタル機器だ。「一昨年のリニューアル前は、1フロアですべての商品を展示していたので、限られた製品しか販売できなかった」と、谷田部店長は振り返る。リニューアル後は商品カテゴリごとにメーカー・モデルをできるだけ多く扱うようにして、「お客様が望む商品を揃えた店舗として、地域に根づいた」と自信をみせる。

 では、実際に品揃えはどうなっているのか。例えば、コーヒーメーカーの売り場は、いま人気のネスレのエスプレッソマシンをはじめ、さまざまなメーカーの商品がずらりと並ぶ。「自宅でおいしいコーヒーを淹れたいというニーズは、どの豆で、どのように飲みたいのか、人によってさまざま。すべてのお客様のニーズに応えられるよう、多くの商品を揃えた」という。冷蔵庫や洗濯機なども、一人暮らし向けの小さなモデルから、2世帯が住む大家族向けの大容量モデルまで、広いスペースを使って展示している。

充実した品揃えのコーヒーメーカー売り場

充実した品揃えのコーヒーメーカー売り場

 最も力を入れているのは「気軽に購入できるもの」(谷田部店長)。白物家電のフロアでは、電球や乾電池などの消耗品コーナーをレジ近くで目立つように配置した。また、スマートフォンのコーナーでは、ケースなどのアクセサリを拡充している。消耗品では60歳以上の高齢者を常連客として確保することを狙い、スマートフォンアクセサリで休日・祝日の会社員・若年層の来店を狙っているのだ。「たとえ消耗品一つでも、ていねいな接客で、いずれはエアコンや冷蔵庫のような大型商品を購入いただけるようにする。アクセサリを見に昼休みに訪れた会社員が、ほかの商品も充実していることを知れば、休日にも来店していただける」。この考えが見事にあたり、来店者を増やしているわけだ。

電球や乾電池などの消耗品コーナーをレジ近くで目立つように配置

電球や乾電池などの消耗品コーナーをレジ近くで目立つように配置

 接客は、定評のあるケーズデンキの手法を生かしているが、「都会の店舗でよくあるのが、レジでお客様を待たせてしまうこと。絶対にやらないようにしている」。レジは最後の接客ということで、お客様と積極的にコミュニケーションを取る場だ。しかし、これを行っていると、どうしてもお客様の行列ができてしまうので、レジ担当のスタッフはレシーバーで陳列商品の整理担当スタッフに応援を要請するなど、万全の体制を整えている。

スマートフォンコーナーでは、ケースなどのアクセサリを拡充

スマートフォンコーナーでは、ケースなどのアクセサリを拡充

 現在、ケーズデンキ府中本店の商圏は、府中市を中心に調布市など多摩地域の全域まで拡大している。「特別なことはしていない。常にお客様の満足を考えて、地道にこつこつとやってきた」。とくに60歳以上が常連客になっていることは大きく、競合店では獲得できなかった上品で落ち着いた富裕層がケーズデンキ府中本店の成長を支えている。

レジで待たせないよう、万全の体制を整えている

レジで待たせないよう、万全の体制を整えている

店長が語る人気の理由――谷田部祐二 執行役員店長



谷田部祐二 執行役員店長

 本社で管理や営業などに携わった経験が長く、4年ほど前にケーズデンキ府中本店の店長を任された。谷田部店長の就任は、府中本店をさらに成長させるための布石。実際に、「通常、店長は3年ほどでほかの店舗に行ったりするのだけれど、もう5年目を迎えた」という。まだまだ伸びる府中本店には、谷田部店長の手腕が必要ということだろう。

 スタッフは、毎朝開店の準備をしながら、携帯しているレシーバーを通じて行う「レシーバー朝礼」で、前日の成功/失敗談を発表する。型にはまった朝礼よりも発表しやすく、「みんなで共有して問題を解決する」ことがスタッフの一体感につながっている。これが強さの秘訣だ。

■人気の理由
・売り場面積の増床で品揃えを拡充
・気軽に購入できる消耗品やアクセサリの販売を重視
・レジ待ちの行列をつくらない体制



※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年4月21日付 vol.1527より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは