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<地域No.1店舗の売れる秘訣・ビックロ>業界の枠を越えたコラボレーション 家電とアパレルの融合で成果

特集

2013/10/16 12:16

 ビックロ ビックカメラ新宿東口店(ビックロ)が、9月27日、オープン1周年を迎えた。家電量販店のビックカメラとアパレルショップのユニクロという業界の枠を越えたコラボレーションで注目を集めたビックロは、融合することによって、双方ともこれまでにない客層の獲得に成功した。JR新宿駅周辺には、いくつかの大手家電量販店が旗艦店を構えているが、そのなかでも異色の存在として頭角を現している。(取材・文/佐相彰彦)


ビックロ ビックカメラ新宿東口店
店舗データ
住所 東京都新宿区新宿3-29-1
オープン日 2012年9月27日
売り場面積 約1万2000m2
従業員 約450人

大手の旗艦店が多い街 国内屈指の激しい競争



 JR新宿駅は、1日の乗降客が約74万3000人(2012年)という国内最大のターミナル駅だ。昼間人口は75万人を超え、駅周辺は商業地区として平日、休日を問わず賑わっている。

巨大ターミナル、新宿駅には多くの人が訪れる

 新宿には、都市型店舗をもつ大手家電量販店が旗艦店を出している。駅西口には、新宿を本拠地とするヨドバシカメラがマルチメディア新宿西口本店を、目と鼻の先にはヤマダ電機がLABI新宿西口館を出店し、激しい競争を繰り広げている。1975年オープンという老舗のマルチメディア西口本店に、2011年オープンのLABI新宿西口館が勝負を挑むという構図だ。また、新宿駅西口に直結する小田急ハルク内のビックカメラ新宿西口店も、商圏はほぼ同じといっていい。

 駅東口には、ヨドバシカメラマルチメディア東口店、ヤマダ電機LABI東口館、ビックカメラ新宿東口駅前店などがあって、こちらも競争が激化している。

新宿駅周辺には大手家電量販店が旗艦店を構える

 2000年に新宿東口に出店していたビックカメラは、こうした新宿地区の激戦を受けて、大胆な店舗形態でシェア拡大に打って出た。2012年9月27日、ユニクロとのコラボレーションで、「ビックロ」をオープンしたのだ。

 「ビックロ」は、地下3階から地上8階までのフロア構成。地上2・3階がビックロ ユニクロ新宿東口店、地下3・2階と地上4・5階がビックロ ビックカメラ新宿東口店になる。入り口の1階は、ビックロ ユニクロ新宿東口店とビックロ ビックカメラ新宿東口店の共有フロアだ。オープンに際して、ビックカメラの宮嶋宏幸社長が「家電とファッションを組み合わせて新しい需要を開拓する」と宣言した通り、ビックロ ビックカメラ新宿東口店は、ビックカメラにとって新たな顧客層を開拓する店舗になっている。

顧客は20~30代の女性が中心 ポイントカードの新規会員を獲得



 ビックカメラは、カメラ量販店ということもあって、これまでの中心客層は男性、それも30~40歳代の会社員と高年齢層が多かった。ところが、ビックロビックカメラ新宿東口店では、20~30歳代の女性がメインのお客様だという。松浦竜生店長は、「ユニクロさんとのコラボレーションによるもの」と説明する。

 ユニクロとのコラボレーションを最も端的に現しているのが、1階の店舗レイアウトだ。ここには、季節や話題性をテーマにデモンストレーションを行う「ビックテーマゾーン」を設けている。例えば、春には新生活のための白物家電の展示、母の日にはマッサージ機の設置、初夏にはアウトドアをテーマとしたキャンプ用品の展示、食欲の秋には調理家電の実演、スマートフォンの新製品発売時期には実機を試すことができるハンズオンコーナーなどを展開している。子どもが楽しめるように、おもちゃコーナーにする時もある。ユニクロに来店した女性が、経路にあるビックテーマゾーンに興味を示し、さらには理美容品売り場に立ち寄るなどという流れが確立している。


 さらにユニクロとビックカメラは、各階でコラボレーション。ユニクロの洋服を着てデジタル機器をつけたマネキンを、さまざまな場所に設置している。「この取り組みが販売増につながっている」と、松浦店長は自信をみせる。

 女性の来店は、接客にも変化をもたらした。カメラが趣味の男性なら一眼レフの機能を強調することが購入につながるのだが、女性に対しては、「利用シーンをイメージできるようにわかりやすくていねいに説明している」(松浦店長)という。例えば、男性へのプレゼントを探している女性のお客様には、男性の立場からその商品の利便性を説明している。また、スタッフ全体の4割を女性スタッフにして、女性客が気軽に相談・購入できるようにしている。松浦店長は、「女性という新たな客層の開拓で、ポイントカードの新規会員が順調に増えている」とアピールする。



 もちろん、ビックロ ビックカメラ新宿東口店には、古くからのお客様であるカメラが趣味の男性や、休日には家族連れも多く訪れる。平日の昼間には、近くの伊勢丹新宿店の主要客である主婦層も来店する。さらに、新形態の店舗ということから、外国人観光客も多いという。そのため、英会話が堪能なスタッフを揃えるなど人材の強化にも力を入れている。「東京・新宿の新名所にする」(宮嶋社長)ことをコンセプトに掲げたビックロは、まさにその道を進んでいるといえるだろう。

店長が語る人気の理由――松浦竜生 店長



 これまで有楽町店や池袋本店の店長を歴任し、オープン当初からビックロビックカメラ新宿東口店を任されている松浦店長。新宿という街について、「とくに東口は若者が多い」と捉えている。ユニクロとのコラボレーションで女性客が多いことから、「ユニクロさんのスタッフとの交流を大切にしている」。週1回の合同ミーティングだけでなく、毎日、ユニクロの店長とコミュニケーションしてノウハウを吸収。「売り場の見せ方などは本当に勉強になる」という。もちろん、ユニクロもビックカメラの展示や接客から学んでいる。こうしたスタッフのコラボレーションが、この人気店をつくりあげた。

■人気の理由
・異業種とのコラボレーションで「来店する楽しさ」を訴える
・1階に話題性のある商品を置いて女性客を吸引
・家電にくわしくないお客様をリピーターにするていねいな接客


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年10月7日付 vol.1500より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは