<家電激戦区を歩く>群馬県・高崎市(2) 郊外でのショッピングが盛ん 駐車場の充実で駅前も活性
クルマ社会である群馬県高崎市の家電量販店は、これまで郊外型がほとんどだったが、JR高崎駅前にヤマダ電機が全国屈指の大型店舗、LABI1高崎を出店したことで、駅前の店舗が台頭。その存在は、駅周辺の活性化にもつながっている。また、店舗の改装や独自商品の販売、商品・地域に精通したスタッフの配置など、それぞれの家電量販店が他店との差異化を図る動きが活発だ。(取材・文/佐相彰彦)
→群馬県・高崎市(1)から読む
<店舗>
郊外型の家電量販店が主流だった高崎市の状況は、ここ5年でかなり変化した。2008年7月にオープンしたヤマダ電機LABI1高崎など、JR高崎駅前の量販店が台頭してきたのだ。
LABI1高崎は、約2万m2の売り場面積で約100万アイテムを取り扱う。デジタル・家電製品だけでなく、書籍や玩具、日用雑貨も販売し、あらゆる層のお客様を獲得している。新井克哉副店長は、「レストランやキッズコーナーを併設し、さまざまなイベントを開催する長時間滞在店」とアピールする。店内は、土・日曜や祝日だけでなく、平日の昼や夕方も多くのお客様で賑わっている。
収容台数1000台の駐車場をもつLABI1高崎は、群馬県全域が商圏。さらに、JR高崎駅が上越・長野新幹線の停車駅であることから、県外からのお客様も吸引している。新井副店長は、「クルマのお客様が多いが、休日に新幹線でいらっしゃる方も多い」という。遠方からのお客様を含めて、買い物で駅周辺を訪れる購買習慣が定着しつつあるのは、百貨店の高崎タカシマヤの存在も影響している。隣の長野県には、ながの東急百貨店しか都市型百貨店がない。数としてマジョリティにはなり得ないだろうが、「新幹線で高崎に行き、高崎タカシマヤとLABI1高崎でお買い物」というスタイルが長野県民の間にあるのは事実だ。
1978年に駅前にオープンした地域の老舗、ビックカメラ高崎東口店は、LABI1高崎とは異なるタイプの客層をもつ。一般的に駅前店舗はお客様の移り変わりが激しく、新たなお客様を獲得していくことが命題となるが、ビックカメラ高崎東口店は地域密着型で固定客を確保。榎阪崇志副店長は、「古くからのお客様が多く、スタッフとの信頼関係ができている。毎日、スタッフと会話をするために来店されるお客様もいらっしゃる」と自信をみせる。年齢は40代から上の層が多く、「とくに60代が多い」そうだ。専用駐車場は60台で、高崎市だけでなく前橋市や本庄市などからもお客様が訪れる。
こうした駅前店舗に対して、コジマNEW高崎店は、飲食店などの大型店舗が建ち並ぶ国道17号線沿いで、高崎市や前橋市からお客様を呼び込んでいる。「駅前が家電の街になりつつあるので、郊外店も変わっていかなければならない」(高野知也店長)と、今年5月に改装に踏み切り、デジタルカメラ関連商品の充実を図った。
【売り場】近隣の主婦層を囲い込む
地域密着型の郊外店は、文字通り地域住民の獲得がカギを握る。コジマNEW高崎店の高野店長は、「近隣にお住まいのお客様に、『デジタル機器は駅前のビックカメラで購入している』と言われた。これをきっかけに、弱点だった品揃えを解決するために改装に踏み切った」という。お客様がビックカメラ高崎東口店で購入しているのなら、ビックカメラグループとしてお客様を確保しているので問題はない。しかし、「お客様の利便性を考えた場合、住まいの近くの店にデジタル機器が充実していたほうがいい」(高野店長)と判断した。改装では、ビックカメラとのコラボレーションでデジタルカメラや関連商品を充実させた。これによって、デジタルカメラの売上構成比が高まっているという。
白物家電は、アイテム数は変更していないが、体験コーナーを増設。とくに充実させたのは、理美容品と健康器具だ。理美容品コーナーでは、ドライヤーやヘアアイロンを試すことができるほか、フェイシャルエステコーナーを設置。健康器具コーナーでは、さまざまな種類の体重計や体脂肪計を実際に体験できる。「とくに主婦層の集客を狙っている」(高野店長)という。
客層の年齢が比較的高いビックカメラ高崎東口店では、「手づくりのPOPでわかりやすく商品を説明することを重視している」(榎阪副店長)という。すべてのコーナーで、「おすすめポイント」として人気商品の売れている理由を説明したPOPを貼り出しているのに加え、例えばパソコンコーナーではキーボードとタッチの両方で操作でき、用途に合わせて形を変えるコンバーチブルパソコンを詳しく説明したPOPで、お客様にアピールしている。
ヤマダ電機LABI1高崎では、「最新の商品を求めているお客様の要望に対応しなければならない」(新井副店長)と、新製品に関しては全メーカー・全機種を展示。その一つとして、薄型テレビコーナーでは大画面の4Kテレビを壁一面に展示している。新井副店長は、「鮮明な映像を見たいとおっしゃっているお客様は多く、すべてのメーカー・機種を用意した」という。
【品揃え】改装でリピーターを確保
これまで取り扱っていなかった商品を置いたことで、リピーターの確保に成功しているのは、コジマNEW高崎店だ。改装でデジタルカメラの品揃えを充実させたことで、「30代のお父さんがファミリーで来店するようになった」と、高野店長は満足げだ。こうした幼児や小学校低学年の子どもをもつファミリー向けに、ビックカメラの協力で玩具関連商品を充実させたところ、デジタルカメラを目的に来店するファミリーが、いっしょに玩具を購入するケースが増えたという。高野店長は、「玩具だけを目当てに何度も足を運んでくださるお客様もいる」と、手応えを感じている。
独自商品が売り上げ増に貢献しているのが、ヤマダ電機LABI1高崎。人気のタブレット端末では、今年7月に発売した自社ブランドのタブレット端末「EveryPad」が売れている。「お客様は、他店で扱っていない商品として興味を示してくれる。30~40代の男性の購入が多い」(新井副店長)という。また、JR高崎駅に直結する2階のスマートフォンコーナーを訪れるお客様が多く、「スマートフォンアクセサリの品揃えを充実させたことで、平日の昼休みは会社員、夕方は学校帰りの学生などが購入していく」そうだ。
自社の得意分野を生かして固定客を確保しているのが、ビックカメラ高崎東口店。デジタル一眼レフやミラーレス一眼、レンズの品揃えが充実しているだけでなく、デジタルカメラに精通したベテランのスタッフを揃えている。写真撮影を趣味とする60代のお客様が、スタッフからアドバイスを受けながらデジタルカメラを購入。「その後も頻繁に来店され、スタッフと写真について語り合って、満足してお帰りになる」(榎阪副店長)と、お客様がスタッフとのコミュニケーションを楽しみに来店しているという。
→群馬県・高崎市(3)に続く(2013年9月4日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年8月12日・19日付 vol.1493より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
→群馬県・高崎市(1)から読む
<店舗>
LABI1高崎で駅前が活性化 常連客を確保するビック高崎
郊外型の家電量販店が主流だった高崎市の状況は、ここ5年でかなり変化した。2008年7月にオープンしたヤマダ電機LABI1高崎など、JR高崎駅前の量販店が台頭してきたのだ。
ヤマダLABI1高崎のフロア構成
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LABI1高崎は、約2万m2の売り場面積で約100万アイテムを取り扱う。デジタル・家電製品だけでなく、書籍や玩具、日用雑貨も販売し、あらゆる層のお客様を獲得している。新井克哉副店長は、「レストランやキッズコーナーを併設し、さまざまなイベントを開催する長時間滞在店」とアピールする。店内は、土・日曜や祝日だけでなく、平日の昼や夕方も多くのお客様で賑わっている。
収容台数1000台の駐車場をもつLABI1高崎は、群馬県全域が商圏。さらに、JR高崎駅が上越・長野新幹線の停車駅であることから、県外からのお客様も吸引している。新井副店長は、「クルマのお客様が多いが、休日に新幹線でいらっしゃる方も多い」という。遠方からのお客様を含めて、買い物で駅周辺を訪れる購買習慣が定着しつつあるのは、百貨店の高崎タカシマヤの存在も影響している。隣の長野県には、ながの東急百貨店しか都市型百貨店がない。数としてマジョリティにはなり得ないだろうが、「新幹線で高崎に行き、高崎タカシマヤとLABI1高崎でお買い物」というスタイルが長野県民の間にあるのは事実だ。
1978年に駅前にオープンした地域の老舗、ビックカメラ高崎東口店は、LABI1高崎とは異なるタイプの客層をもつ。一般的に駅前店舗はお客様の移り変わりが激しく、新たなお客様を獲得していくことが命題となるが、ビックカメラ高崎東口店は地域密着型で固定客を確保。榎阪崇志副店長は、「古くからのお客様が多く、スタッフとの信頼関係ができている。毎日、スタッフと会話をするために来店されるお客様もいらっしゃる」と自信をみせる。年齢は40代から上の層が多く、「とくに60代が多い」そうだ。専用駐車場は60台で、高崎市だけでなく前橋市や本庄市などからもお客様が訪れる。
こうした駅前店舗に対して、コジマNEW高崎店は、飲食店などの大型店舗が建ち並ぶ国道17号線沿いで、高崎市や前橋市からお客様を呼び込んでいる。「駅前が家電の街になりつつあるので、郊外店も変わっていかなければならない」(高野知也店長)と、今年5月に改装に踏み切り、デジタルカメラ関連商品の充実を図った。
【売り場】近隣の主婦層を囲い込む
最新機種を揃えて集客
地域密着型の郊外店は、文字通り地域住民の獲得がカギを握る。コジマNEW高崎店の高野店長は、「近隣にお住まいのお客様に、『デジタル機器は駅前のビックカメラで購入している』と言われた。これをきっかけに、弱点だった品揃えを解決するために改装に踏み切った」という。お客様がビックカメラ高崎東口店で購入しているのなら、ビックカメラグループとしてお客様を確保しているので問題はない。しかし、「お客様の利便性を考えた場合、住まいの近くの店にデジタル機器が充実していたほうがいい」(高野店長)と判断した。改装では、ビックカメラとのコラボレーションでデジタルカメラや関連商品を充実させた。これによって、デジタルカメラの売上構成比が高まっているという。
白物家電は、アイテム数は変更していないが、体験コーナーを増設。とくに充実させたのは、理美容品と健康器具だ。理美容品コーナーでは、ドライヤーやヘアアイロンを試すことができるほか、フェイシャルエステコーナーを設置。健康器具コーナーでは、さまざまな種類の体重計や体脂肪計を実際に体験できる。「とくに主婦層の集客を狙っている」(高野店長)という。
白物家電フロアにさまざまな体験コーナーを設置しているコジマNEW高崎店
客層の年齢が比較的高いビックカメラ高崎東口店では、「手づくりのPOPでわかりやすく商品を説明することを重視している」(榎阪副店長)という。すべてのコーナーで、「おすすめポイント」として人気商品の売れている理由を説明したPOPを貼り出しているのに加え、例えばパソコンコーナーではキーボードとタッチの両方で操作でき、用途に合わせて形を変えるコンバーチブルパソコンを詳しく説明したPOPで、お客様にアピールしている。
スタッフによる手づくりのPOPでお客様の理解を高めているビックカメラ高崎東口店
ヤマダ電機LABI1高崎では、「最新の商品を求めているお客様の要望に対応しなければならない」(新井副店長)と、新製品に関しては全メーカー・全機種を展示。その一つとして、薄型テレビコーナーでは大画面の4Kテレビを壁一面に展示している。新井副店長は、「鮮明な映像を見たいとおっしゃっているお客様は多く、すべてのメーカー・機種を用意した」という。
ヤマダLABI1高崎は壁面に大画面の4Kテレビを設置するなど最新機種をいち早く揃える
【品揃え】改装でリピーターを確保
他店にはない商品が人気
これまで取り扱っていなかった商品を置いたことで、リピーターの確保に成功しているのは、コジマNEW高崎店だ。改装でデジタルカメラの品揃えを充実させたことで、「30代のお父さんがファミリーで来店するようになった」と、高野店長は満足げだ。こうした幼児や小学校低学年の子どもをもつファミリー向けに、ビックカメラの協力で玩具関連商品を充実させたところ、デジタルカメラを目的に来店するファミリーが、いっしょに玩具を購入するケースが増えたという。高野店長は、「玩具だけを目当てに何度も足を運んでくださるお客様もいる」と、手応えを感じている。
玩具の取り扱いを始めたことでファミリーの来店が増えたコジマNEW高崎店
独自商品が売り上げ増に貢献しているのが、ヤマダ電機LABI1高崎。人気のタブレット端末では、今年7月に発売した自社ブランドのタブレット端末「EveryPad」が売れている。「お客様は、他店で扱っていない商品として興味を示してくれる。30~40代の男性の購入が多い」(新井副店長)という。また、JR高崎駅に直結する2階のスマートフォンコーナーを訪れるお客様が多く、「スマートフォンアクセサリの品揃えを充実させたことで、平日の昼休みは会社員、夕方は学校帰りの学生などが購入していく」そうだ。
ヤマダ電機LABI1高崎では今年7月発売の「EveryPad」が好調
自社の得意分野を生かして固定客を確保しているのが、ビックカメラ高崎東口店。デジタル一眼レフやミラーレス一眼、レンズの品揃えが充実しているだけでなく、デジタルカメラに精通したベテランのスタッフを揃えている。写真撮影を趣味とする60代のお客様が、スタッフからアドバイスを受けながらデジタルカメラを購入。「その後も頻繁に来店され、スタッフと写真について語り合って、満足してお帰りになる」(榎阪副店長)と、お客様がスタッフとのコミュニケーションを楽しみに来店しているという。
デジタルカメラの品揃えは他店に負けないビックカメラ高崎東口店
→群馬県・高崎市(3)に続く(2013年9月4日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年8月12日・19日付 vol.1493より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは